昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

障害児を育てる喜び

昇平のような障害児を育てていると、ときどき知人から「大変だね」と言われることがある。
私はたいていニコニコと上機嫌でいるせいか(笑)、面と向かって「お気の毒に」と言われたことはないけれど、「障害児を授かってしまうなんて、気の毒なこと」と陰で考えている人はいるのかもしれない。
もちろん、皆様が善意からそう思ってくださっているのは、こちらも十分に分かっているけれど。

たしかに、障害児を育てていくのは大変なことではある。時間も手間もかかるし、生活に制約もでてくる。
今だって、小学校は越境通学だから、毎日車で送り迎えしなくちゃならないし。
でも、私は昇平を生んでからこれまでの間、一度もそんな自分たちを「気の毒だ」と思ったことはない。
それどころか、「こんなに面白い子どもを育てることができて、自分は幸せだなぁ」とさえ思っている。
いえいえ。強がりなんかじゃなく、本音でね。(笑)

   ☆★☆★☆

私には昇平の上にもうひとり、6つ年上の息子がいる。
今年中学校に入学したばかり。ことばにも発達にも問題がない、ごく普通の子だ。

昇平を育てていると、結局はお兄ちゃんの時と同じような発達過程を見ていくことになる。はって、立って、歩いて、しゃべって・・・。ただ、昇平は発達に遅れている部分があるから、お兄ちゃんが3才の頃に軽々クリアしたようなことを、6才になってもなかなか越えられないでいたりする。
その間、こちらはじっと待って待って、待ち続けている。そして、ある日突然、「できる」ようになる。その時の嬉しいことと言ったら!

お兄ちゃんがしゃべり始めたのは2歳を過ぎた頃だった。(お兄ちゃんも話し出しは遅い子だったので)
昇平が初めて「しょうへいくん、チョコパイ、だ〜いすき」と初めて三語文を話したのは、3才5ヶ月の時だった。
お兄ちゃんが話し出したときも、もちろんすごく嬉しかったけれど、昇平の時には、嬉しいなんて感情を通り越して、もう感動ものだった。
うわ〜っっっ!!! しゃべった〜〜〜っっっ!!! 昇平がちゃんと文章をしゃべれた〜〜〜!!!
「しょうへいくん、ちょこぱい、だ〜いすき」だってぇ!!! 聞いて聞いて、昇平がしゃべったんだよ〜〜〜!!!
・・・という感じ。(笑)

障害のある子どもが、自分の成長の力で障害を乗り越えたとき、親は本当に感動する。
この喜びは、普通の子どもを育てていては、おそらく味わえないものだろうと思う。
手入れに手間暇がかかる植物を、気長に気長に育てていって、ある日、とうとう開花したのを見て感動する。そんな感情に近いかもしれない。
私は、これを「障害児を持つ親の特権」だと思っている。(笑)
子ども自身だって、今までできなかったことができたときは、もしかしたら、普通に育っている子どもたちより喜びや達成感が大きいのかもしれない。

私がここにつづる日記には、しょっちゅう「○○ができた。成長したなぁ」とか「△△した。大人になったね」なんて記述が出てくるけれど、これは決して無理して気持ちを引き立てているわけではないのだ。
そんな、ちょっとした成長が目につくたびに、私は心から嬉しくなってしまうし、そんなふうに「こまめに喜べる子育て」ができて、幸せだなぁ、と思ってしまうのだ。
おめでたい性格? ははっ、それは言えているかもしれないけれど。(笑)

   ☆★☆★☆

でも、親の方が「こんな障害児が生まれてきてしまうなんて、自分はなんて不幸なんだろう」と嘆いていると、この子育ての喜びは絶対に見つからなくなってしまう。
子どもは、障害を持っていたって、日々成長しているし、少しでも前に前に進もうと一生懸命がんばっているのに、親にはそれが目に入らない。
目に映るのは、世間の他の子どもたちと比べて明らかに劣っている我が子の姿だけ。

もちろん、どんな子育てのしかたをするのも、どんな見方をするのも、その人それぞれの自由なわけだけれど、どうせ子育てするのなら・・・どうせ生きていくのなら、嘆くばかりの人生より、喜びや楽しみに満ちあふれている人生の方がいいんじゃないかなぁ、と思う。
子どもだって、親が成長を喜んでくれた方が、ぜったいに生きる張り合いが出るはずだし、きっと自分自身を好きになれるだろう。
やがて大人になったとき、自分を信じて、人生を切り開いていけるようになるんじゃないかな・・・。

[02/05/13(月) 16:24]

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