昇平てくてく日記
幼児〜小学校低学年編
リタリンの話・3
リタリンがADHDによく効いて、副作用もそれほど重大なものはなく、対応法も分かっているとなれば、「うちの子にもぜひリタリンを・・・」と考える親御さんは、絶対に出てくることでしょう。
そういう親御さんにお願いしておきたいことがあります。
「リタリンは、必ず医者の指示に従って使用してください」
たとえば、知人にリタリンを飲んでいる人がいて「2,3回分わけてあげましょうか?」なんて言われても、絶対にもらって飲んではいけません。前回も書いたとおり、一人一人で適量がまったく違うお薬だからです。
必ず医者の診察を受け、医者に処方してもらった薬を飲むようにしてください。
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それから、よく聞くのが、病院に行ってリタリンを処方してもらおうとしたら「あなたのお子さんには必要はないでしょう」と言われてしまった、というケース。
この場合も、「何が何でもリタリンを!」なんてお医者様に迫ったりしないでくださいね。(^_^;)
そのお子さんの症状があまり深刻でなくて、お薬の助けを借りなくても大丈夫と思われるときには、お医者様はお薬を出さずに、「家庭や学校でのやり方を工夫していきましょう。大きくなるにつれて、きっと落ちついてきますよ」と言うのです。
その言葉を信じてください。
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お子さんがADHDでなかった場合にもリタリンは処方されません。
なんてことを書くと「そんなの当たり前だろう!」と言われそうですが、実はそう簡単なことでもないのです。
不注意や多動、衝動性は、自閉症、知的障害、その他の精神的な障害でも起こることがありますし、なにか大きな精神的ショックを受けた後にも起こることがあります(親の離婚、転校etc.)。個性と呼べる程度のものを親が心配しすぎているケースもあるようです。
ADHDの診断というのは、実はかなり難しいので、「ADHDかな?」と思ったときには、専門家を訪ねて、きちんとした診断を仰ぐ必要があります。
ADHDの判定をするのは、精神科の医者や臨床心理士などですが、リタリンを処方できるのは医者だけです。
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では、逆にどういうときにリタリンが処方されるか。
まず、うちの昇平のように、ADHDから来る障害の程度が大きく、薬の助けなしではあまり改善が望めない場合。
昇平は、多動もさることながら、不注意がとてもひどい子で、まわりをよく観察することも、自分に話しかけられている内容を理解することも十分にできませんでした。その結果、話が通じない、自分自身もしゃべれない、遊びや興味に幅がなくてこだわりが強い、人とうまく関われない・・・といった、ことばや社会性の問題が生じていました。
こういうケースは、放っておくと後々の発達にまで大きな遅れが出てきてしまうので、早くからリタリンを使うことがあります。昇平がリタリンを飲み始めたのは4才4ヶ月のときです。
ここまで深刻ではない場合には、小学校に上がる頃から処方されることが多いようですが、これはお医者様の考え方によって違います。
多動が激しすぎて、落ちついて勉強することもできない、教室にいることさえできない子どもにも、薬が必要なことがあります。
もちろん、教室や先生の教え方を工夫することで、ある程度の改善は可能です。
でも、どんなに学校側が努力しても、子どもの多動をカバーしきれないこともあります。そういう場合は、お薬を使った方が、子どもも先生も楽に学習に向かえるようになりますし、お互いの人間関係も良好になっていきます。
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もうひとつは、ADHDの症状が原因で、家族や先生、友だちとの人間関係が悪化してる場合。
ADHDを持つ子はいくら注意しても全然改まらないし、友だちと遊ぶときにもルールが守れなくてケンカになることがよくあります。
こんな子どもたちと毎日接していると、どんな親や先生でもうんざりしてきてしまいます。友だちは「あの子とは遊ばない」と言い出すかもしれません。
それが行きすぎて、虐待やいじめの対象にされてしまうこともあるのです。
第1回目にも書いたように、ADHDの症状は成長するにつれて自然と改善していくことも多いのですが、そのときがやっと来たら、まわりの人たちから受けた悪いしうちのせいで、子どもの心がすっかり歪んでしまっていた、などということもありえます。(これを二次障害と呼びます)
周囲の人たちがADHDを正しく理解し、適切なサポートのしかたを知っていくことは大事です。でも、それだけでは間に合わないときには、やはりお薬の助けが必要になってくると思います。
次回はリタリンの話の最終回。リタリンに関してよく聞かれる疑問などについて書いてみたいと思います。
[02/05/17(金) 13:02]