昇平、専門家を感動させる
金曜日、病院に行って診察を受けてきた。主治医のY先生はお休みだったので、ときどき診てもらっていたK先生が担当。この先生も、いつもニコニコしていて話しやすい、良い先生なのだ。
最近の昇平と言えば、とにかく犬に夢中なので、今回は昇平が描いた犬の絵や犬の絵本を持って行ってみた。
ひとつは「犬のアルバム」というタイトルの絵で、たくさんの犬が「ほね」とか「ボールください」とか、いろいろなことを考えている。(絵はこちら→
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「犬の気持ちを自分で想像しながら描いている」とK先生はとても感心してくださった。
もう一つは、初期に彼が作った犬の絵本。
絵本と言っても、紙を折ってホチキスで留めただけの本に、鉛筆で描いたもの。昇平が犬好きになるきっかけになった「ボスがきた」という絵本を、かなり忠実に再現している。
「ボスがきた」という本は、重度知的障害児施設にボスという子犬がもらわれてきて、子どもたちと仲良くなるが、突然死んでしまい、子どもたちが「でも、ボスの声が聞きたい」と寂しがる様子を、施設の子どもの描いた絵でつづられている。絵は原色を豊かに使っていて、シンプルだが、とても印象的。昇平はまず、この絵のとりこになって、犬に興味を持ち始めたのだ。(「ボスがきた」の絵本はこちら。→
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昇平が再現した絵本は、もとの本が家になかったので(児童館の蔵書だった)うろ覚えの部分もだいぶあるが、それでも、実物と対応してみると、どこのページを描いたのかはよく分かる。それだけ本当に一生懸命読み込んだ本だということなのだ。
ところで、昇平の絵本には、もとの本にはないページが付け足してあった。
その少し前の部分(つまり、本を真似して描いた部分)から引用してみる。
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「死」 ほしになったこと いまおはかにいました。
↓
(ワン!)とこたえてくれません。はしってきません。
どうしたかな? ひとりでないているのかな?
↓
ぼく ひとりじゃ さびしい。
↓
ぼく(ワーン)とげんきに なきたい。
※最後のコマは、犬のボスがいっぱいに描いてあって、目から涙を流して泣いている。
実際の絵本の場面はこちら。(→
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ところが、その次のページをめくると
「ホントウハネ」と書いてあって、ゲーム機の中で犬のボスと男の子がボールで元気に遊んでいる場面になる。
その次のページには、ゲームのキャラクターを説明しているような感じの、ボスの解説図。(→
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つまり、ボスは本当は死んだのではなく、ゲームの中の犬だったので、また元気に復活してきたのだ、という話のオチにしてしまったのだ。
これを見たとき、K先生は「う〜ん」と唸って、「すごい。キミはすごいなぁ、昇平くん!」と感嘆の声を上げた。
これまで、お絵かきといったら迷路やレースのコースや星のカービィばかりだったのに、犬に急に興味を持ち始めたのは、きっと、障害児の描いたボスの絵が、なにか彼の心の琴線に触れたから。
そうして、昇平は犬への関心を媒体にして、自分の想いを外へ広げ始め、それを絵本の形で表現し始めたのだ。
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もう1冊持っていったのは、ごく最近昇平が描いた「ポチのともだち」という絵本。
これは、完全に昇平のオリジナル作品。K先生がそれを見ながら読み上げ始めたら、「読んじゃダメ!」と昇平が飛んでいった。・・・恥ずかしかったらしい。(笑)
こちらでは、昇平がポチという犬を飼っていて、学校で勉強してから家に帰るとポチがいるので、お手をして遊んだところなどが描かれている。昇平は本物の犬を飼いたくて仕方がないので、その想いを本にしたのだろう。
その中に描かれている生活の様子がリアルなのが興味深い。犬を通じて、昇平が自分の生活をよりいっそう深く広く理解しつつある・・・そんな気がするから。(「ポチのともだち」はこちら→
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昇平は、どうぶつ王国で買ってきた犬のぬいぐるみも、ポチと名付けてかわいがっている。「いいことです」とK先生が笑顔で言った。
そして、「今日は私もちょっと感動しちゃったなー」と言いながら、昇平に向かって「昇平くんは将来小説家になるかな? いや、絵本作家かな?」と言った。
私の背中におんぶする真似をしながら、多いに照れていた昇平だった。(笑)
[02/09/22(日) 05:52]