昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

学習会で得たもの

昨日は福島市でペアレント・トレーニングの学習会があった。
私が自分のホームページで紹介している「ペアレント・トレーニング」のページは、この学習会から得たものを自分なりにまとめたものなのだけれど、受講3年目になった今でも、まだ私は新しい発見を続けている。
昨日の学習会でもそうだった。

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昨日の学習会のタイトルは「無視と誉めるの組み合わせを学ぶ」というもの。
ひとりの会員さんが、こんなお子さんの様子を話してくれた。
「おもちゃなどを買ってもらいたがって、その要求が通らないと、あっという間に機嫌が悪くなって、クソばばあ、バカ、殺すぞ、などと乱暴な言葉を連発して、それを無視しようとすると、さらには他人に迷惑をかけるような行動に衝動的に走るんです」と。
でも、そんな激しい性格のその子も、母が耐えきれなくなって涙をこぼすと、たちまち我に返ったようになって、謝ったり素直になったりするのだという。
その話を聞いたとたん、会員の間からいっせいに「優しいー!」と声が上がった。
ところが、インストラクターの中田先生は、まじめな顔で「我々専門家は見方が親とは違うから、そういう話を聞くと『優しい子』とは受け取らないんです。『状況の読みとりがよくできていないので、母が涙をこぼす場面を見るまで、自分の行動が悪いことだということに気がつけないでいる』と考えるんです」と言われた。

はっ、とした。
昇平も、まさしくそのとおりじゃないだろうか?

昇平は乱暴な言動はあまりしない子で、ひどい悪口を言ったの相手を殴ったのというトラブルは少ない。
でも、先生が悪いことをした別の子に注意していると、飛んでいって、先生に「怒るな」と文句を言ったり、それ以上注意できないように、先生の口をふさいだりするのだという。
これはもっぱら児童館で起こることが多くて、いくら言い聞かせても、いっこうに改善されないので、児童館の先生方も手を焼いている行動のひとつだった。

注意されている子がかわいそうだから、それで先生を止めに行く。
そのこと自体は優しい感情と言えるかもしれない。
でも、「昇平くんは優しいね」と人から言われるたびに、私は、そんな美しいことばではおさまらないものを感じて、考え込んでしまっていた。
違うのだ。単なる優しさではないのだ。そうではなくて・・・・・・
でも、その正体がどうしてもきちんと捕まえられないでいた。

学習会で、中田先生が「そういうのは『優しい』のではなく『場面の読みとりができない』と解釈するべきなのだ」と言われるのを聞いて、そうか、そうなのか! と思った。
昇平が場面の読みとり(場面認知)やさまざまな認知面に困難を抱えていることは充分承知していたのだが、実感で、そのことと子どもを注意する先生を止めに行くことを、結びつけられないでいたのだ。

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背景にあるものをしっかり把握さえすれば、適切な対応を考えられる。
場面認知が悪いから、先生を止めに行くのだから、それなら、どうしてその子が叱られているのか、なんのために先生がその子を叱っているのかを、昇平に理解できるように説明すれば良いことになる。

と考えて、また、はっと気がついた。
これ・・・ここ半年間くらい、病院に診察に行くたびに主治医から言われ続けていたことだ。
「どうして叱られているのか、どうしてそんなことになったのか、きちんとことばで説明してあげるといいですよ」
そんな対応はやってあたりまえだと思って、特には意識して実践してこなかった。
叱られるのは、その子が悪いことをしたから。だから、先生は注意しているんだよ・・・そんなことばで、昇平に説明してきているつもりになっていた。だが、違うのだ。昇平には、それだけの説明では不十分だったのだ。

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学習会の後、昇平を児童館に迎えに行ったら、この日もやっぱり昇平は、注意している先生とされている子の間に割って入っていったのだという。
絶好のタイミングなので、叱られることの大事さをこんこんと説明して聞かせた。噛み癖のある子なので、そのうち、その子にはお友だちがいなくなるかもしれないんだよ。だから、先生はそうならないように、その子を注意してあげているんだよ。人を噛んではダメよ、と教えてくれているんだよ、と。
昇平、それを聞くうちに、初めて「そうなのかも」という表情になった。
今度からは先生が叱っていても邪魔をしないで、その場から離れる、とも約束してくれた。
もちろん、その場になってしまえば忘れて、また割り込んでしまったりするかもしれないけれど・・・
でも、時間をかけて教え続ければ、きっと、その場面もきちんと理解できるようになるだろうと思っている。

先はまだまだ長い。
でも、光は見えてきた。
そんな成果があった、昨日の学習会だった。

[03/05/09(金) 08:51]

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