昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

「整理したよ!」

昨日、台所で夕食の支度をしていたら、2階から昇平が呼ぶ声が聞こえた。
「おかあさーん、ちょっと来てー!」
さっきから部屋にこもって静かにしていたけれど、はて、どうしたのかな? と階段を上がっていくと、昇平がニコニコしながら階段の上に立っていた。
「ぼく、左の部屋を整理したよ!」
「あら、お部屋の片付けをしていたの? えらいね。どれどれ」
と見てみると・・・

部屋の中が綺麗さっぱり片づいていた!
さっきまで、昇平のおもちゃやら本やらおはじきやらコインやら、大小さまざまなものが散乱していた部屋だったのに。
畳には物がひとつも出ていなくて、全部、押入や部屋のわきの方に「きちんと」片づけられている。
漫画で描いたら、さしずめ「キラキラ」と光り輝く部屋になるだろう。
「えーーっ、すごいねーーーっ! よくここまで自分一人で片づけたねー! すごーい!!」
びっくりして誉めると、昇平はもう得意満面で、ぴょんぴょん飛び跳ねて喜んでいた。

昇平がさらに、どんなふうに片づけたかを見せてくれた。
「この引き出しはいっぱいなんだよ」
ほら、とあけて見せてくれた引き出しには、鉛筆やらサイコロやらチョロQやら、細々したものがぎっしりと詰まっている。
部屋の中をよく見ると、押入の中の箱や籠には、おもちゃが分類されて入っていた。ミニカー用のレールはカゴに、コインは別のカゴに、ぬいぐるみは段ボール箱に・・・
完全ではないものの、かなりきちんと分類されている。
分類しきれなかった細かい物は、全部引き出しに入れたらしい。
「ここには、いらないものが入ってる」
と見せてくれた段ボール箱は、ちゃんと蓋を閉めて、ご丁寧にガムテープで封までしてあった。持ち手の穴から覗いてみると、なるほど、最近あまり使っていないような細々したものがいっぱい入っていた。
そういえば、さっき台所に来て、「ガムテープを使っていい?」と聞いていたっけ。こういうことだったのか・・・。

すごいでしょう? という顔で「ぼく、自力でやったよ! がんばったごほうびは?」と昇平が言った。
抜かりのないヤツ。(笑)
「それじゃ、がんばりカードのお片づけのところに、2枚分のシールを貼ってあげるね」
と答えると、「やったー!!!」と飛び上がって喜んでいた。
この辺はかわいいヤツ。(笑)

   ☆★☆★☆

昇平は、自分で完璧に部屋を整理した、というのがよほど得意で嬉しかったらしい。
その後も、家人に次々とそれを報告し、夜、帰宅した父に報告して誉められると、また「がんばったごほうびをちょうだい」と言った。(笑)
おい、報告した人全員からごほうびというのは虫が良すぎるゾ。さっきシールをもらったでしょう。
即座にわきで聞いていた母が却下したのだが、本人は「えへへ」という感じでいた。
分かってはいるのよね。

今朝、学校に行くときにも、思い出してまた「ぼく、自分で整理したよ」と言っていた。
登校すると、すぐに森村先生にも報告していた。いきなり「整理したよ!」と言うので、先生にはなんのことかよく分からないでいたけれど。
安心しなさい。そんなことだろうと思って、連絡帳にはちゃんと詳しく書いておいたからね。(笑)

   ☆★☆★☆

ADHDっ子は基本的に、片付けや整理がとても苦手だ。
脳がそんなふうにできている。

それが分かっていたから、私は部屋の片付けをするのに、種類ごとに箱やカゴに入れることを心がけてきた。どこにあるか分かりやすいように。どこに入れればよいか分かりやすいように。
毎回ではないけれど、昇平にも分類を手伝わせてきた。
ある程度大きくなって、持続力が出てきてからは、片付けするのは昇平で母はそのお手伝い、ということにした。
片付けがしやすいように、昇平が片づけるときには、スーパーから手頃な段ボール箱をいくつももらってきて、とりあえずそれに入れればOKということにしていた。(それは後で母が分類して片付けなおす)
でも、学校では、休み時間の終わりには遊んだおもちゃを種類ごとに片づけるよう指導されている。どうやら、それを家でも実践しようと思ったらしい。

もちろん、今回片付けができたからといって、毎回彼がこんなふうに整理できるわけはない。
片づかない日の方が圧倒的に多いに違いない。
でも、その気になれば自分だってきちんと整理ができるんだ、自分一人の力でやり遂げることができるんだ、という自信は、きっと、いざというときのための力になって行くんだろうと思う。

[03/05/14(水) 15:54]

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