昇平てくてく日記
幼児〜小学校低学年編
怒りをコントロールするSST
先週の土曜日、行きつけの病院で3回目のSSTがあった。
(余談だけれど、子どものためのSSTは、本当はCSSTというのが正しいらしい。でも、分かりやすいように、この日記ではSSTという呼び方をしている。)
前回のセッションのテーマは「お話の極意をおぼえよう」だった。今回のテーマは「信号機をおぼえて使おう」。
・・・信号機?
部屋の前のテーブルには、確かに信号の絵カードがある。赤信号のカード、黄色信号のカード、青信号のカード。
でも、交通安全教室じゃあるまいし、それをおぼえて使うというのは・・・??
実は、これは怒りの衝動性をコントロールするための訓練。
ADHDを持つ子どもたちの中には、ついかっとなって、まわりの人をぶってしまったり悪口を言ってしまったりする子が多く、それが学校や家庭での大きなトラブルのもとになっている。
これはADHDの特徴の一つである衝動性からくるもので、刺激に対する感情や体の反応があまりに早すぎて、それを押さえたり適切な形で外に出したりするための心の機能(コントロール)が間に合わないことから起こっている。
ぶったり悪口を言ったりするのは良くないと、冷静なときに考えれば本人にだってちゃんと分かるのだが、いざそういう場面になると、かっと頭に血が上ってしまうことの方が多くて、とても考えが間に合わなくなるのだ。
☆★☆★☆☆★☆
SSTでは、これをまず劇でやってみせたらしい。
A子ちゃんがボールで遊んでいたら、間違ってボールをB子ちゃんにぶつけてしまった。むっとしたB子ちゃんは「へたくそ、やめなさいよ」と言う。そのことばに怒ったA子ちゃんは、B子ちゃんを叩いてしまう・・・というようなストーリィ。
こういう態度が良いものかどうかをまず確認した上で、「信号機」の使い方をおぼえていく。
赤信号:まず深呼吸。
黄信号:よく考えて、
青信号:ことばで気持ちを話しましょう。
最初は絵カードで練習していたようだけれど、実生活では心の中に信号機のイメージを思い浮かべることになるから、たぶん、後半はカードを使わず、ことばだけで練習したのだろうと思う。このあたりは、実際にSSTの様子を見学しているわけではないから、私の想像なのだけれど。
子ども同士でA子ちゃんとB子ちゃんに分かれて、ロールプレイングもやったらしい。
宿題は、実際の生活の中で信号機を使うこと。
家庭だけでなく、学校の先生にもSSTの内容をお話しして、学校でも信号機を使えるよう励ましてもらってください、とスタッフから指導があった。
実際、こういうトラブルは学校でこそ多く発生するのだから、担任がSSTを知っていて、「○○くん、信号機だよ」とか「赤信号だよね」とか一声かけてくれただけで、はっと気がついて、暴走しかけた感情にブレーキをかけられることは多いだろうと思う。
☆★☆★☆☆★☆
とはいえ。
実を言えば、昇平にはこういう衝動的な行動が非常に少ない。
いや、衝動性がないわけではない。
特に、目で見たものに即座に反応して、それに手を出してしまったり、手にとって眺めてしまいたくなってしまうという形の衝動性は非常に強い。衝動性にもいろいろな現れ方があるのだ。
実際のSSTでは、昇平は逆にB子ちゃんの心情に共鳴してしまったらしい。ロールプレイングでは、絶対にB子ちゃんは嫌だ、怒る子の役の方がいい、と言い張ったのだという。その声は、別室で勉強会を開いていた私たちのところまで聞こえてきた。
たぶん、普段の生活の中でも、B子ちゃんのように知らずに他の人を怒らせていることがとても多いから、劇ごっことはいえ、それを再現されるのが嫌だったんだろうと思う。
でも、結局は、がんばってA子ちゃんの役もB子ちゃんの役も演じたのだそうだ。
後で昇平に聞いてみた。
「今日はSSTでどういうことを勉強してきたの?」
「えーとね・・・悪いことをしちゃったら『ごめんなさい』って言う」
う〜ん、まぁ、それは確かにそうなのだけれど・・・そこまでの過程を練習するセッションだったんだけどね。(^_^;)
それでも、「信号機はどうやるの?」と聞いたら、ちゃんと、赤・黄・青のステップは分かっていて、実際にやって見せてもくれた。
誰かに対してかっとなって怒る、ということはあまりない子なので、宿題を達成できるチャンスがあるかどうかはわからないけれど、もちろん、あればすかさず「信号機だよ」と声かけしてやろうと思っている。
☆★☆★☆☆★☆
今朝、昇平を学校に送っていったとき、森村先生にも話をして、宿題への協力をお願いしてきた。
「学期末で子どもたちも落ち着かない時期で、なにかとトラブルも起こりやすい時期なので、昇平くんだけでなく、他の子たちにも同じように声かけしていきたいと思います」と言ってくださった。
SSTというのは、こんなふうに、本人だけでなく、まわりの子どもたちにも広がっていくものなのかもしれないなぁ・・・と考えている。
[03/12/15(月) 13:21]