科学的な興味
写真に写っているのは恐竜の化石の模型だ。家族4人がかりで、石膏ブロックから掘り出して組み立てた。完成までに丸二日かかってしまった。
そもそも、これは昇平が学校のクリスマス交流会でプレゼントにもらってきたもの。
箱を開けると、15センチ四方くらいのピンク色のかたまりがどーんと出てきた。あとは、そこに白い堅いへらと小さな細筆が1本ついているだけ。
ピンクの石膏の中に恐竜の化石が埋まっているから、それをへらと筆で掘り出して組み立てる、という、いかにもアメリカらしいおもちゃだった。
「ぼく、化石掘る!」
前にもアンモナイトの化石に夢中になって、化石を掘りたがった昇平。やる気満々で石膏に立ち向かった・・・が、すぐに音を上げる。
「できないー! ぜんぜん削れないよー!」
石膏はかなり堅い。へらがのこぎりの役目もするのだが、少しずつしか削れないのだ。もっとも、すぐに掘り出せるようでは全然面白くないだろうけれど。
そこで、母がタッチ交代。ブロックに切り目を入れていったけれど、これが本当に大変。
しかも、ブロックからピンクの石膏の粉がどんどん出てくるから、新聞紙を敷いたテーブルも私たちの服もたちまち真っ白、いや真っピンク。
いや〜、なかなか汚れるおもちゃだわ。(苦笑)
ところが、ブロックの中に化石が見え始めると、これががぜん面白くなってくる。
切ったり削ったり叩いたり筆で払ったり・・・昇平と交代しながら掘り進んでいった。
そのうち、お兄ちゃんも「やらせて」と混ざってくる。
「なんだ、それはー」と馬鹿にしたような顔をしていた旦那も、昇平に頼まれて交代したら、いつの間にか誰よりも夢中で削っていた。
発掘作業というのは、意外とはまるものらしい。
ブロックが割れて中からぽこっと化石のパーツが出てくると、安っぽい樹脂製の化石なのに、すごく価値があるものに思えてくるから面白い。
昇平も、パーツが掘り出されるたびに歓声を上げていた。
そうして、全部のパーツを掘り出したところで、組み立て。
やった! ステゴサウルスの化石の完成!!
さすがに家族全員で苦労しながら組み立てただけあって、昇平も(彼にしては)大切に扱っていた。
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さて、それから数日後。
夜、お風呂に入りながら、昇平が突然言い出した。
「お母さん、人間はサルから人間になったんでしょう? どうやってなったか、教えて」
恐竜の模型を組み立てたとき、大昔の話を少し聞かせてやったのだけれど、そのとき、人間はもとはサルだった、と言ったのを覚えていたのだった。
そこで、お風呂から上がった後、布団に画用紙と鉛筆と消しゴムを持ち込み、家にあった図鑑を傍らに進化の説明をしてやった。
地球には、昔々大昔は、今のような生き物はいませんでした。
それがあるとき、海の中に小さな生命が生まれました。それはまるでアメーバのような形をしていました。
それが集まって、だんだん形が変わってきて、くらげのような姿になり・・・やがて、それが魚に変わり・・・魚が陸に餌を探して上がっていって、カエルの仲間の両生類・・・もっと陸の奥に行こうと思って、鎧のようなウロコを持つようになって、は虫類・・・それが大型になって恐竜たち。
でも、恐竜はあるとき全部死んでしまったの。どうしてかな? 病気になってしまったとか、急に寒くなったからだとか言われているけどね。本当のところは分からないんだ。昇平くんは、火山の噴火で死んじゃったと思うの? うん、そういう可能性もあるって言われているよ。
とにかくね、地球は寒くなっていったの。
でも、寒くても平気だったのは、ほ乳類。もこもこの毛皮があったしね。
最初のほ乳類はネズミみたいだったって。そこから、いろんな形のほ乳類が生まれていったの。毛の長いゾウみたいな、マンモスも出てきたよ。
サルみたいな姿になったヤツもいた。それがだんだん毛がなくなって、しっぽもなくなって、頭が良くなって、道具を使うようになって、服を着るようになって・・・今の人間になったんだ。だからね、今でも人間のお尻の中には、しっぽの骨が残っているんだよ。
人間にしっぽの骨がある、と聞いて、昇平はびっくりした顔。一生懸命自分のお尻を見ながら「どこどこ?」と聞いてきた。
そこで、尾てい骨を上からさわってやりながら「ほら、ここの骨がそうだよ」と教えると、自分でも骨を触って確かめていた。
自分自身の先祖も大昔サルだったのだ、と実感した瞬間だったのかもしれない。(笑)
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最近、昇平は科学的なものに興味を持つことが増えてきた。
しばらく前には、学校で本を見たのか理科教材のテレビを見たのか、原子モデルの概念を理解してきて、「酸素の分子は・・・水の分子は・・・原子ってなに?」とさかんに聞いてきた時期もあった。
「ここにあるものはみーんな原子からできているの?」と言ったりもしていた。
今回の進化の話と同様、目で見て分かりやすい形で教えられたとき、という条件はあるものの、こういう分野のことも理解できるようになってきたんだなぁ、と感じている。
来年度は、協力学級で受ける学科をもうひとつ増やす計画になっていて、それが理科か社会のどちらかなのだけれど、この感じだと理科の方が良いのかなぁ、でも、まだ決めつけるには早いかなぁ・・・などと、考えながら観察している。
[03/12/23(火) 07:08] 日常 学校