昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

小さなエピソード・4

今朝の登校時の話。
学校に到着したとき、昇降口は一番のラッシュ状態だった。
大勢の子どもたちが集団登校で続々と到着しては、それぞれの下駄箱に向かっている。押し合いへし合い、満員状態。
1年生の頃の昇平は、この混雑が苦手で、まわりからの刺激を少しでも減らそうと学生帽を目深にかぶったり、ひとりごとや歌を歌って騒音を消そうとしていた。
今はもう、そんなこともなく、適当に人の少ないところを通り抜けて自分の下駄箱まで到着すると、靴をはきかえている。
すっかり慣れて落ち着いたね。

と、昇平が前を行く6年生くらいの女の子のランドセルに注目した。赤いランドセルに白いフェルトのネコのマスコットが下がっている。昇平は、ちょっと体を斜めにして、そのマスコットをのぞき込んでいた。
その子は全然知らない上級生。昇平に気がついたら気分を悪くするかな、と一瞬はらはらしたが、昇平はすぐに体を立て直すと、いつものようにぱたぱたと教室へ歩き出した。

母が人混みを抜けてそれに追いつくと、昇平が突然こう言った。
「お菓子の間にはさまれたネコはなんて言う?」
・・・はぁ?
「クイズなの?」
と聞くと、昇平は、そうじゃないよ、という顔をしてもう一度同じことを繰り返して言った。
「えー、お菓子の間のネコ? なにそれ、わからないよ」
と答えると、さらにもう一度、昇平は繰り返して言った。
「いろんなお菓子の間にネコがいるんだよ。エクレアとかケーキとか・・・」

はっとひらめいた。
私が家計簿に使っているノートの表紙に描いてある、キャラクターのネコだ!
タルトやエクレア、ケーキなんかのデザートの間に、かわいい仔猫がはさまっているというもの。しばらく前に、昇平が面白がって眺めていたことがある。
あれは確か・・・
「にゃんこカフェのこと?」
「そう! にゃんこカフェだった」
にっこりと嬉しそうに、昇平が言った。
わかったわかった。さっきの上級生のランドセルに下がっていたのは、にゃんこカフェのマスコットだったんだね。
だから、思わず目をひかれて、しっかり確かめて見ていたんだね。
そうたずねると、昇平は「うん」と答えて、また先に立ってどんどん歩き出した。

母はちょっと嬉しかった。
今までまわりが全然見えなかった昇平が、そういうちょっとしたものに気がついて注目するようになったから。
さらに、相手に失礼にならない態度で観察することができたから。
そして何より、そんな昇平の発見を、自分が受け止めることができたから。
・・・なかなか通じなくても、あきらめずに話しかけ続けてくれた昇平のおかげは大きいけれど。

朝の、小さな小さなエピソード。
ちょっぴり心が温かくなった。

[04/04/14(水) 11:57] 学校 日常

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