昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

普通学級での昇平を見る

日曜日、昇平の小学校の授業参観があった。
今年の日曜参観は講演会もあったので、2〜4校時目までどの時間を見に行っても良い、という一種のフリー参観形式。
はい。参観大好きな私は、すべてしっかり見学しておりました。(笑)

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2校時目はなんと3−3での理科。
入学して3年目。とうとう協力学級での授業の様子を見ることができた。

昇平は一番前の席。セオリー通り、クラスの担任から一番近い場所に座っている。ノートと教科書と筆入れを持って、慣れた様子で席に着いたけれど・・・。
後ろにはいつもと違ってお父さん、お母さんたちが勢揃い。
昇平は急に不安になってきたらしい。授業が始まるというのに、母のところへやってきて、「お母さん、ぼくのそばにいてちょうだい」と言い出した。
「授業はひとりで受けるんだよ。お母さんは後ろで見ているからね」と言って席に戻したものの、その後も、ことあるごとに母の元へやってくる昇平。そのたび、ことばや手で制して、席に戻らせるうち、ようやく後ろには来なくなった。

そのころから、授業の内容も本番になり、先生力作のチョウやトンボの図が、成長の過程に従って何枚も登場してきた。
すると、昇平、その絵がもっとよく見たくなって、席を立って先生のもとへ。それも、一度ならず、二度三度。
手を挙げて発表することもできたけれど、自分が指名されていないのに、黒板に貼った絵に「たまご」とか「よう虫」「さなぎ」といった名称を貼る役がやりたくて、「昇平くんはさっき発表したから、○○くんにやらせてあげてね」と先生に言われると、プンプン腹を立てていた場面も。
まったく、ADHDのテキストに出てくる子どもの授業風景そのままの姿を見せてくれたので、ただただ感心するというか、内心「おやまぁ」という気分で眺めてしまった。

でも、担任のみのり先生もただ者ではない。
昇平が上の空でぼーっとしていると、すかさず「昇平くん、○○してね」と声をかけていたし、昇平が前に出てきてチャート(図)をつかんでしまうと、教室全体に向かって「みんなはどっちだと思う? こっちの絵が正しいと思う? それとも、昇平くんが持っている方のが正しいと思う?」と質問して、昇平の逸脱した行為をじょうずに授業に取り込んでしまっていた。う〜む、うまい・・・・・・。

後ろで見ているだけでも、昇平の授業態度には不適切なものがたくさんあったのだけれど、みのり先生は細かい部分にはこだわらないで、さらっと流していた。
たとえば、ヤゴの餌について教科書を見ないで予想するという場面で、昇平は教科書をのぞき見て「アカムシ!」と正解を答えた。でも、みのり先生はそれを聞くと、「ああ、教科書に載っていたわね」ですませてくれていた。
その一方で、昇平がやることをやらずにぼーっとしていると、「昇平くん、○○はできてる?」と、ポイントを押さえた形で確認してくれる。
細かいことにはこだわらないで、大事なことだけポイントを押さえて指導。
ADHD児の指導の基本ではあるけれど・・・。

家に帰ってから、昇平と理科の宿題のプリントをやってみたら、その日授業で教わった内容は、ほとんどすべて理解できていた。「ヤゴの餌は?」という問題にも、昇平はニコニコしながら「アカムシだ!」・・・。
あの場面で、昇平のカンニングをさらっと流してくれたみのり先生に、心から感謝したくなった。

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次の時間は講演会。「移動博物館」という題名で、去年も来てくださったG先生が、珍しい生き物の標本をいろいろ子どもたちに見せてくださった。
昇平はここでも、標本が見たくて、離席離席・・・。
でも、講演会はそれもOKというおおらかな雰囲気の中で行われていたので、昇平の態度はあまり目立たなかった。
好奇心を存分に満足させてもらって、昇平もとても楽しかったらしい。

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さて、4校時目はゆめがおかでの算数。
「表とグラフ」の内容だったのだけれど・・・。

おやおや、これがあれほど離席していたのと同じ子ども? と思いたくなるほど、昇平は自分の席で熱心に学習に取り組んでいた。私語はなし。顔つきも真剣そのもの。
その時間、上級生の2人は協力学級での授業だったので、算数を受けていたのは昇平と4年生のDくんの2人だけだったのだが、森村先生にど真ん前ついてもらって、マンツーマンならぬマンツーツー状態で、どんどん内容を進めていた。

その様子を見て、やっぱり、昇平にはこちらを基本スタイルにしてやる必要があるのだな、とつくづく思った。
もちろん、大勢のお友達と一緒に学ぶということもとても大事だし、その中でしか身につけられないこと、学べないこともあるのだけれど、それも、ゆめがおかという小規模の母学級があるからこそ、安心して出て行けるものなのだろう。
みのり先生もほんとうに一生懸命昇平を指導してくださっていたけれど、クラスの子どもたちは三十数人。昇平一人にばかり関わってはいられない。
というか、昇平も集団の中の一人として扱う形でしか、指導ができない。それが普通学級での指導の原則だから。
その原則を超えた指導を求めるときには、やっぱり特殊学級とか通級といった体制を考えなくちゃいけないんだろう。
それを選択するのは、その子どもの「親」になるわけなのだけれど・・・。

一日の授業参観で普通学級と特殊学級の両方の授業を見比べて、そんなことを考えながら家路についたのだった。

[04/06/29(火) 16:05] 学校

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