昇平てくてく日記
幼児〜小学校低学年編
トラブル続出・6〜連携〜
今回の下校時のトラブルが発覚してから、先生方は素早く行動してくれた。
最初に気づいたのは協力学級のヒロミ先生だったが、そこからすぐにドウ子先生に連絡が行き、昇平と一緒に下校する男の子たちから話を聞き、「一緒に帰ってあげる」と言ってくれた女の子たちから話を聞き、さらに協力学級での授業の様子を確認し、下校についていって子どもたちの様子を観察し・・・。
ドウ子先生は昇平と話し合い、昇平がお友だちの気持ちを傷つけるような言動をしたのだということを教えてくれた。「今すぐ謝りに行く!」と興奮して言う昇平に、協力学級の帰りの会まで待つように言い聞かせ、実際に帰りの会に付き添って昇平が自分の口で反省のことばを言うのを見届けた。さらに、遠慮して自分たちの気持ちを言おうとしない子どもたちには、「言っていいんだよ。言ってもらわないと昇平くんだって分からないからね」と言ってくれた。
その後も下校する子どもたちに途中までついていって、様子と会話を観察し、「こんな昇平くんだったらどうかな?」と子どもたちに聞き、「大声を出さないなら大丈夫だよ」と子どもたちに返事をしてもらうことで、昇平に、何が問題だったか、自分はどうするべきだったかを再確認させてくれた。
そしてまた、そんなふうに先生方が関わることで、子どもたちも、「自分たちの後ろにはヒロミ先生やドウ子先生がついているんだ。何か困ったことが起こったら、自分たちだけで『どうしよう』なんて悩まなくても、先生たちに相談すればいいんだ」と気がついたのではないだろうか・・・。
ドウ子先生は、事件以来毎日、子どもたちの下校に途中までつきあってくれた。
あれ以来、昇平が無理な要求をお友だちに言ったり、暴言を浴びせたりというトラブルも起こっていないという。お互いに楽しめるクイズを出し合ったり、自分たちだけで共通するようなゲームの話をしながら、楽しそうに帰っているらしい。「1人ずつ昔話をしろ、って昇平くんが言ったのが、他の子たちには負担だったんでしょうね」とドウ子先生が言った。それはそうだ。普通、いくらいろいろな昔話を聞いていたって、自分でそれを思い出して語るというのは、大人だってそうできることではない。そして、大声で騒ぐことさえやらないでくれたら、お友だちだって本当に「昇平くんと一緒に帰るのはOK」だったのだ。
結局、お友だちも、昇平自身を嫌っていたわけではなかった。そこまでまだ事態はこじれていなかったのだと分かって、私はとてもほっとした。早めにトラブルに気づいて、素早く手を打ってくれた先生方の対応が、本当にありがたかった。
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また、日記に載せた今回の話を読んで、学童の鴨原先生からも言われた。
「昇平くんと一緒に下校している子どもたちの多くは、この春まで学童に来ていた子たちです。私が、知らず知らずのうちに、『(昇平くんには障害があるんだから)みんなのほうが我慢しなくちゃいけないんだよ』という感じで、子どもたちに我慢を強いていたんじゃないかと、すごく反省させられました」
今回のトラブルが学童の指導の責任だろうとは思わなかったし、子どもたち自身が、自分たちでなんとか昇平を受け入れよう、昇平と合わせようとしてくれた結果が、「我慢して昇平の要求をのむ」という行動につながったのだろうと思うけれど、でも、鴨原先生にもそんなふうに考えてもらえたことが、すごく嬉しかった。
障害児・者を受容する、とはよく言われることばだけれど、それは大抵「障害児・者を優遇して、健常児・者は障害ある人のために我慢をしなくてはいけない」というように解釈されることが多いように思う。そうではなく、障害のためにできないことがあることは配慮した上で、「では、その条件で対等な存在として生きていくためには、お互いにどうしていったらいいか」と考えていくことが、本当の障害児・者の受容であり、本当の意味でのバリアフリーなんじゃないかと考えている。
とても難しいことだし高度なことではあるのだけれど、その必要性を感じてもらえたことが、とても嬉しかった。
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そして・・・こんなふうに、昇平に関わる先生たちが実際に動いたり考えたりしてくれたことが、母親である私に驚くくらいの力を与えてくれた。
一気に元気がわいてきたのだ。
あれほどどん底まで落ち込んだ気分でいたのに、「よし、先生方ばかりにお任せしていちゃいけない。家庭でもできることを考えなくちゃ」と前向きな気持ちに切り替わったのだ。
我ながら単純というか、立ち直りが早いというか。ちょっと自分でもあきれているけれど、でも、自分1人ではないんだという思いは、本当に私に勇気を与えてくれた。木曜日に親の会の集まりがあって、そこで同じような悩みを持つお母さんたちと語り合い、「大変だけどがんばろうね」とお互い励まし合ったのも、合わせて元気の元になったかもしれない。
「私には何ができるだろうか」と私は考え始めた。
[05/06/05(日) 10:13]