昇平てくてく日記
幼児〜小学校低学年編
トラブル続出・8〜現実〜
最後の最後になって、一番大事なことを言い忘れていたことに気がついた。
「ごめん。もうひとつあったよ。とってもとっても大事なこと」
と私が言うと、昇平が、はっとまた居ずまいを改めた。なんだろう? と緊張した顔。
「あのね・・・お母さんは昇平くんが大好きなの。とてもとても大好きなの。だから、その昇平くんが、他の人から『怖い悪い子だ』って思われるのは嫌だし、昇平くんが誰かから殺されちゃうのも、絶対に嫌なのよ。だからね、大変かもしれないけれど、『殺してやる』や『殺してください』は使わないように、がんばろうね」
「うん」 うなずいた昇平に、やっと笑顔が戻ってきた。
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これだけの話し合いをして約束をしても、きっと、腹をたてて興奮する場面になれば、また「ぶっ殺してやる」が出てくるんだろう、とは思う。自分に落ち度があったと強く感じたときには、「ぼくを殺してください」とまた言うかもしれない。
これは、衝動性の特徴とも強く結びついている行動だから、そう簡単に改まるはずはないのだ。頭では分かっていても、先に口が出る・・・という感じだから。
だけど、周囲の大人たちがあきらめることなく指導を続ければ、きっといつかは、「殺してやる」も「殺してください」も改まっていくんじゃないか、と考えている。そして、そのことが他の子に乱暴をするといった行動を抑える力にもなっていくんじゃないか、と期待している。
そんなことを考えながら、家族で囲んだ夕食の席。
高校1年のお兄ちゃんが、学校の集会で一部の女子がうるさかったということを話していた。
「ったく、うざいんだよな。こっちは勉強で疲れているのにさ、騒いでばっかりで。むかつく。死ね」
はっとした。
お兄ちゃんは決して過激な性格ではない。ちょっぴり衝動的な面もなくはないけれど、非常にバランスの取れた、安定した言動の、ごく普通の男の子だ。その彼からして、こういうことを口にする。それだけ今の子どもたちの間では、「死ぬ」「死ね」と言ったことばは当たり前に使われてしまっているのだ。
「その言い方はちょっとあんまりだと思うよ。気持ちは分かるし、みんなそういう言い方をしているのも分かるけど、死ねっていうのは、やっぱり言っちゃいけないことばなんだよ・・・」
そうお兄ちゃんに注意しながら、この問題は社会的な根が非常に深いなぁ・・・と改めてため息が出てきてしまった。
[05/06/05(日) 10:26] 学校 日常