昇平てくてく日記2

小学校高学年編

2月(4)〜兄ちゃんの卒業・スクールカウンセリング

2月25日(月)

 国立大学二次試験、前期日程の日。でも、兄ちゃんはこの試験を受けに行かなかった。受験料も払い込んだし、宿も申し込んだのだけれど、受けに行くことができなかったのだ。理由は「爆弾低気圧」と呼ばれた昨日の悪天候。東北地方の学校を受験に行く予定だったのだけれど、そこまでの新幹線、在来線、高速道路までが強風のためにすべて不通になっってしまったのだ。
 兄ちゃんは旦那と福島駅まで行って新幹線の復旧を待っていたのだけれど、昼過ぎになっても動かず、動いてもすぐまた止まってしまった。旦那は明日の仕事に間に合うように、今日中に戻ってこなくてはならなかった。それより遅い新幹線では、例えたどり着いても旦那が帰ってこられない。かといって、兄ちゃんひとりで現地へ送り込み、宿の手続きから受験会場になる大学の確認まですることは不可能。ただでさえ、ダイヤは乱れきっているし。兄ちゃん自身は、国立大よりも、すでに受かっている私大の方が本命だったので、「これは無理だから国立は受験をあきらめよう」という結論になった。

 だけど……と思う。旦那の代わりに私が付き添えば、兄ちゃんも受験できただろう。私はその日、郡山にいたけれど、車を飛ばせば昼過ぎには帰れたと思うから。夕方には新幹線も復旧していたし。
 ただ、私が現地に一泊するのは避けられない。そうなったときに、「昇平の面倒を誰がみるか」? 旦那は翌日仕事だし、じーちゃん、ばーちゃんにも一日昇平をケアするのは無理。ショートステイを頼めるような場所もない。やっぱり、私が付き添うことはできなかった。
 別にこれが我が家の現状だから、それを嘆く気はないけれど、実はこんなところにも障害児を抱える困難というのは発生する。本当に、多かれ少なかれ家族に影響を及ぼすのだ。そのリスクも抱え込んでの子育てだから、誰を責める気持ちもないけれど、よく障害児の親としての話を求められるとき、「どんなことに困りますか?」と聞かれるので、具体例の一つとして、この件も記録しておく。

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2月26日(火)

 昨日、昇平は一年生やL子さんたちのことを気にして不安定だったという。ところが、今日はクラスメートたちの行動や様子は同じないのに、昇平は気にすることなく落ちついていたという。どちらかというと、昨日の方が「友だちの言動に目が行く日」で、今日は「自分のことだけで、周りに目が向かない日」だったらしい。
 気がつくから気になってしまう。今まで見えなかったことが見えてきて、それをどう処理していいかわからないから混乱して(パニックを起こして)しまうのかな。少しずつ少しずつ、経験しながらキャパシティを広げていくしかないんだろうね。

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2月27日(水)

 今日も学校ではクラスメートの言動を気にする、不安定な日だったらしい。でも、家に帰ってきてからは非常に落ちついていて、まったく問題なし。学校では毎日いろいろなことが起きるけれど、家の中で起きることは決まっている。だから、周りが見えようが見えまいが、家の中では変化があまりないのかもしれない。
 今週、兄ちゃんは自宅学習期間で家にいる。連日兄ちゃんとゲームをしたり、一緒にテレビを見て会話をしたり。遅まきながら、とても兄弟らしい関わりをしている。でも、兄ちゃんも来月下旬には大学に行くのに家を離れてしまう。束の間の貴重な経験だね。

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2月28日(木)

 学校では相変わらず特定の場面で特定の子へのこだわり行動(暴言等)を起こしているけれど、家では本当に落ちついている昇平。何日かぶりで「メイプルストーリー」のゲームをして、「また新しいお友だちができた」と喜んでいた。14才と13才の男の子だったという。どうやら本当にこのゲームは同じくらいの年代の子どもたちが多く利用している様子。ちょうどいいかもしれない。夜は兄ちゃんと仲よくゲームをしていた。

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2月29日(金)

 小学校のスクールカウンセリングへ。早急の相談ではなく、中学入学へ向けての準備の話と、小学校での昇平の様子などについて話してきた。スクールカウンセラーの先生からは「現在の昇平くんは非常に順調に育っていますよ」と太鼓判を押していただいた。

 今、一番問題になっているL子ちゃんや一年生たちへの態度についても、「他人に関心を持って関わろうという気持ちが芽生えて育ってきているということで、それは素晴らしいこと。今の状態も、周囲の人たちに対して昇平くんなりの関わり方をしている段階。それを適切な形で関わっていけるようになっていくのがこれからの段階ですね」と言われた。
 6年生として、そしてゆめがおかの最古参として、他の子たちに「教えよう」という気持ちも芽生えていて、それも素晴らしい成長なのだと言われた。確かに、そう言われればその通りだなぁ。最上級生としての自覚が芽生えていたからこそ、下級生たちの言動が気になって注意したりしていたんだものね。

 中学に入学するに当たっては、まず、落ちついた学校生活を送ることが最優先。そのための環境を整えていくことが何より大事になる、と言われた。中学校になってからも、困ったことがあったらいつでも相談に乗りますから、とも言ってもらえて、本当に心強かった。

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3月1日(土)

 兄ちゃんの卒業式。勉強がとても厳しい高校だったけれど、三年間本当によく頑張ったと思う。
 最後のホームルームではクラスの子たちが一人一言ずつ発表した。「このクラスのみんなはすごく良い人たちだった」「友だちと会えるのが嬉しかったから頑張れた」と言っていた子たちが多かったし、実際、とても和やかな雰囲気のクラスだった。どんな状況にあっても、子どもっていうのは自分らしく生きようとするんだな、と思った。子どもたちは本当にたくましい。
 とはいえ、昇平をこの学校に入れようとは絶対に思わないけれど。
 卒業式の間、昇平は祖父母と留守番だったけれど、ちゃんと落ちついて待っていた。

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3月2日(日)

 兄ちゃんが入学する私大のそばにアパートを探しに、旦那と兄ちゃんと三人で行く。関東の学校で、車で片道3時間半以上かかるので、昇平は「留守番がいい」と言って、今日も祖父母と家に残った。
 私たちは朝7時に出発して、帰宅したのが夜6時半。その間、昇平は3回私の携帯に電話をかけてきて、自分のやったことなどを報告した。「眼鏡のレンズが外れちゃったから、自分で眼鏡ドライバー出して直したよ」とか(いつもは母に直してもらっていて、自分でやったのは初めて)、「コンビニに買い物に行ったら途中にペットボトルやゴミが落ちてたから、拾って自転車の籠に入れて持って帰ってきたよ」とか。これだけ長時間、両親たちと遠い場所に離れていたのは初めてなのだけれど、そのことでもまた少し大人になるんだな、と思った。
 昇平が落ちついて待っていてくれたおかげで、こちらもしっかり見て回ることができて、安くて良い物件を見つけることができた。兄ちゃんが引っ越すときには、一泊で引っ越し作業に行く予定だけれど、その時には昇平も連れていって、一緒に手伝ってもらおうと思っている。


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[08/03/03(月) 13:02] 学校 日常 発達障害

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