昇平てくてく日記2

小学校高学年編

3月(1)〜思いやりとたくましさ

3月3日(月)

 昇平は今、「まんがの達人」という雑誌を購読して、漫画を描く練習をしている。2週に一度の発売で、各号890円。父親に大きな書店で買ってきてもらうけれど、代金はちゃんと自分の小遣いから支払っている。
 毎号何かしら漫画を描く道具がついてくるのだけれど、今回は雑誌のページをバラバラにしてテーマごとにとじるための、バインダーとインデックスページ。バインダーにとじる、というのは昇平は初体験だったけれど、やり方を見ながら聞きながら、一生懸命ファイリングしていた。こんなこと、勉強のためだったら面倒がってやらないのだけれど、自分の興味のあることだと自主的に取り組む。漫画の練習だけでなく、こういうこと自体が、生活のためのいい勉強になっている気がする。
 オンラインゲームのメイプルストーリーといい、勉強のための材料は身の回りにごろごろ転がっているね。その中の何がその子どもにヒットするか、なのだわ。 

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3月4日(火)

 今日は6年生だけはお別れバイキング給食。昇平も時間割を見て「今日はバイキングだ」と楽しみにしていたので、「それって6年生の教室だけかもしれないよ。ゆめがおかの給食は違うかもよ」と釘を刺しておいた。バイキングでなかったら、がっかりすると思ったから。
 実際にはゆめがおかでは6年生以外も全員がバイキング給食だったそうで、大皿に色とりどりに盛り合わせたメニューを、子どもたちが嬉しそうに取り分けている写真も連絡帳に添えられてきた。昇平も大喜びだったらしい。よかったよかった。下級生たちにも一緒に、という配慮をしてくださった先生方に、感謝。

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3月5日(水)

(ドウ子先生の連絡帳から)
 今日は二、三校時が六年生を送る会でした。昇平くんも雛壇に並んで姿勢良くいることができました。みんなが立つときには同じく立ち……と、目立たなく同じ行動をしていて、周りの様子を見ていることがよくわかりました。在校生から色紙をもらう場面があったのですが、周りの子たちが次々にもらっていることを見て、自分もいつでももらえるように両手を定位置にしてまっていました。
 六年生の歌(卒業式の時にも歌う)もあり、どうも口が動いていないので、教室に戻ってから「歌詞、わかるの?」と聞くと、練習させられると気づいたのか、「みんなと一緒だから大丈夫だよ」と言っていました。

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3月6日(木)

 高校を卒業した兄ちゃん。家を離れるのを前にして、自分の部屋の掃除を始めたのは良いけれど、夕方には疲れてしまってご機嫌ななめ。昇平とゲームをしても昇平に負けてしまうくらいで、イライラしていた。今までなら、昇平がそんな兄ちゃんを怖がって逃げていくのがパターンだったけれど、今日は「兄さん、疲れてるんじゃない?」「疲れたら休みなよ」「これ(このゲーム)が終わったら、兄さん、寝なさい」と一生懸命言っていた。兄ちゃんの方が、「昇平に思いやられちゃったよ」とびっくり顔。で、言われたとおり、その後一眠りしたら、兄ちゃんもまた元気になった。
 家族の中だけのことなのかもしれないけれど、こんなふうに他人を思いやることもできるようになってきたらしい。

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3月7日(金)

 今日もL子ちゃんの勉強のことなどを心配して暴言を吐いたらしい。ちょうどスクールカウンセラーのA先生がいらしたので、個別に昇平と話してくださった。ホワイトボードに絵を描きながら場面を確かめ、吹き出しの絵を描いて、暴言の代わりになんてことばを入れれば良かったと思う? と尋ねたところ、ちゃんと適切なことばが書けたのだそうだ。「適切なことばを知らないというより、パニックになると適切なことばが使えなくなる」ということらしい。
 やっぱり、感情的に高ぶってしまいそうなときに、一呼吸おけるようになることが目標なんだね。

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3月8日(土)

 小学6年生は、社会や国語の授業で環境問題について学んでくる。ゴミ問題、自然破壊問題、地球温暖化……自分たち自身の生活がその原因だと知り、身近なところから環境保全に取り組むことを学習する。
 昇平はそれがしっかり理解できたので、自転車で買い物や散歩に行くたびに、道ばたに捨てられた空き缶やペットボトルを拾ってくるようになった。「環境のために拾ってきたんだよ!」と得意そうに報告してくれる昇平。
 ところが、それをばーちゃんが心配するようになった。「こんな汚いゴミを拾ってきたのよ」「ばい菌がついているから病気になるのが心配だし」。ばーちゃんは元看護婦さん。環境のためにやっているとわかっても、どうしても衛生面の方が気になるらしい。「でも、私からやっちゃいけないっては言えないから、お母さんからうまく言ってもらえる?」 う〜ん、それくらい、直接言ってもらっていいんだけどなぁ。
 結局、昇平にはそのまま話した。「環境のためにゴミ拾いするのはいいことなんだけど、おばあちゃんはそういうの嫌なんだって。昇平くんが病気になるかもしれないって心配なんだよ。確かにああいうゴミは自然にはなくならないけれど、時々みんなでゴミを拾うボランティア活動をやっているから、そういうのに任せようね。昇平くんも、そういう時にゴミ拾いすることにしよう」。昇平、あっさりと「わかった」。ほらね、話せばわかるんだけど。
 昇平の行動に本気で心配顔になっているばーちゃんの方に、どうしたら安心してもらえるやら、と考えてしまった。(苦笑)

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(追記)
 この日、昇平はオンラインゲーム「メイプルストーリー」もする。
 ゲームの中で友だちになった人とチャットしながらやっていたのは良いけれど、相手がどこにいるのかわからなくなり、そこへ行く道が見つけられなくなり、「教えてよ」と言っても、「わからないよ」と言われてかんしゃくを起こした。相手もうんざりしたようで「また今度ね」と言ってきたものだから、昇平が怒り任せの書き込みしようとするので、あわてて介入。向こうだって昇平くんがどこにいるかわからないんだし、教えようがないんだよ。まず、がんばって自分で道を探すの。向こうのせいだなんて言って怒ったら、誰からも嫌われちゃうよ。
 昇平、怒りながらも一人で道を探し、ようやくそれらしい分かれ道を発見。そこまで来たと相手に知らせたら、「待ってて」と迎えに来てくれて、無事にまた出会えてめでたしめでたし。
 はー、やれやれ。リアルタイムでSSTのコーチをするのは疲れますなぁ。(苦笑)

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3月9日(日)

 先週末は長男の卒業式やアパート探しで留守番ばかりさせたので、今回の週末は昇平を遊びに連れ出した。と言っても、本人のご希望はいつもの通り、駅ビルのゲーセンだったけれど。昼食はハンバーガーがいい、と言うので、「もうちょっとおいしいのを食べようよ〜」と言ってファミレスにしてもらった。遠慮もなくステーキ200gとパン一皿をぺろりと平らげ、サラダもスープもドリンクもお代わりをする昇平。本当に食べるようになったなぁ。やっぱりハンバーガーショップの方が良かったかも?(苦笑)
 今、昇平の身長はぐんぐん伸びていて、次第に私に追いついてきている。私は162センチ。中学1年生のうちに追い越されるかもしれない。

 昼食後、ホームセンターで長男のアパートに入れる本棚などを買う。その間、昇平は同じ敷地内の本屋で立ち読みしていたけれど、途中、旦那が荷物を運ぶのに車を無断で移動したものだから、「車がない!」と気づいて、書店の店員さんに頼んで私の携帯に連絡を入れてきた。私の携帯の番号はもう暗記していたらしい。あわてて書店に行ったら、昇平は怒っていたけれど、泣いてはいなかった。
 昨日は自分だけで中学校のすぐ近くまで自転車で行ってきたし、いろいろな意味で自分で判断、行動しはじめたのを改めて感じた。体だけでなく、中身の方もだんだんたくましくなってきた気がする。


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[08/03/10(月) 10:07] 学校 日常 発達障害

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