昇平てくてく日記3
中学校編
自転車通学・3
昇平は今日初めて、行きも帰りも一人きりで学校へ行った。自分で自転車をこいで。
通学路の安全確認とコースを覚えるために一週間くらい私が一緒に自転車で走ったのだけれど、最近は、なんだか私が逆に邪魔になっているような気がしていた。だんだん走る速度が遅くなるのだ。たぶん、本当に私が後ろを走っているかどうか心配になるんだろう。自転車にバックミラーはついていないから。
私のせいで遅くなっていると確信したのは、途中まで送って、「ここからは一人で学校まで行ってね」と見送ったとき。それまで今にも止まりそうな速度で、ふらふら走っていて危なっかしかったのに、私と別れたとたんサイクリングロードをシャーッと勢いよく走っていく。スピードがあるから走りも安定している。あらら、疲れて遅くなっていたんじゃなかったのね、と思わず苦笑いした。
今朝は家から昇平を見送った。「気をつけていってね」「わかった」少し緊張した顔で走り出す。
結局、学校に到着したと思われる時間まで、何も連絡が来なかった。知らせがないのは無事の証拠。「ちゃんと学校まで一人で行ったみたいだな」とじいちゃんも安心していた。
協調運動に困難があって、体を思うように動かすことが難しかった昇平。縄跳びも、かけっこも、ラジオ体操も何もかも、およそ体を動かすこと全般が苦手だったから、自転車だってなかなか乗れるようにはならなかった。
自転車にまたがって、足をつきながらその辺を動き回って慣れるのに1年。コンビニにおやつを買いに行くのを餌に、地面を蹴りながら自転車で進む練習をして1年。コンビニから近所へ。夏休みにはもっと遠くへ。秋にはコースを次第に中学校の方へ延ばしていって、中学校までの通学路を覚える練習をして1年。最後に春休みに、自分で町中や行きたいところへ自転車でいく練習をして。
昇平と私と、そして旦那。三人で進めた自転車通学三年計画。ついに完成。よく頑張ったよねぇ。
一人で自転車で出かけられると言うことは、自分で移動する手段を手に入れたということ。きっと、昇平の将来にも役立つよね。
中学生の鞄を背に、自転車をこいで登校していく昇平の後ろ姿は、急に大人になったように見えた。
[08/04/21(月) 20:56] 学校