昇平てくてく日記3

中学校編

ただ今テスト勉強中

 昇平は引き続き中間テストの勉強をしている。今回の目標は「勉強時間1時間以上、休日や部活のない日は2時間以上」。テスト範囲が発表になった日に、一緒に確認してスケジュールを立てたので、それに従った内容で勉強をしている。

 そういえば、昇平は時間をよく守る。「○時△分まで」とか「□時間」という約束は、誰も見ていなくてもきちんと守れる。(もちろん、5分10分の「ずる」はあるけれど)
 たぶん、これは昇平が本来は時間感覚の弱い子だったからなんだろうと思う。自分の感覚ではどのくらいの時間がたっているのかよくわからないから、こちらも、「ちょっと」とか「もう少し」なんて曖昧なことばを使う代わりに、時計を使って指示してきた。時計の読めなかった頃にはメモ用紙に時計の絵を描いて「針がこの形になったときにね」。数字が読めるようになったら「長い針が数字の○に来るまでね」。時計が読めるようになってからは、「○時△分まで」。今は昔よりは時間感覚が発達しているはずだけれど、それでもやっぱり時計を頼りに生活している。そのほうが本人も楽なんだろう。


 とはいえ、勉強のスケジュールを立てるときは大変だった。
 教科書やワークの範囲の始めと終わりに付箋を貼っていったのだけれど、それがとても多いものだから、「こんなにたくさんある!」「絶対に終わらない!」「俺に勉強しすぎて死ねって言うのか!?」(死なないってば)
 一度に大量の課題を見せられると、それだけで興奮するのはよくある話。加えて、それを片づけていく見通しも立たないから、パニックを起こしたというわけ。
 でも、ワークブックのページ数を数えて、テストまでの日数で割って、「一日これだけだよ」と言ったら、これくらいの量なら、と納得した。もちろん、完璧に全部やらせようとすると無理なので、あちこち母の独断で間引いたけれど。完璧は要求しない。これもこの子たちとつき合っていくコツ。ゲーム機を使った学習ソフトも活用することにした。使えるものはいろいろ使う。これもコツ……かな?

 スケジュールに納得してからは、順調に勉強を進めている。昇平は基本的にコツコツ型だから、こういうやり方が合っているんだろう。毎日決められた時間を勉強して、「あと○分だよ」とか「今日はもうやったよ」と私にしょっちゅう報告している。
 決まった時間の勉強が終わると、ごほうびに「クリスタル」がもらえる。キラキラ好きの昇平に合わせた綺麗なビーズ玉で、これを昇平はガラス瓶に入れている。クリスタル1個でパソコンやゲームの時間が20分延長できることになっていて、平日は1個、休日は3個まで使える約束。最初はもらうとすぐに使っていたけれど、最近は使うのを惜しんで貯めていることが多い。目で見て「たまっている」のが嬉しいんだろう。


 テスト勉強が始まってからは「怒らずに勉強する」というのも目標になった。「たとえわからないところがあっても、怒らないで勉強すると、内容が頭によく入ってきて、わかりやすくなるんだよ」と話したら、「じゃあ、怒らないでやる」と言い出したので。学校からも、「自分を抑えようとする場面が見られる」と報告があったので、ちょうどそういう時期になってきたんだろうと思う。
 怒らないで勉強できたら、ボーナスにクリスタルもう1個、ということにしたら、昇平はがぜん張り切った。全然怒らず、黙々と勉強をする。うわ〜、なんかすごい〜、と、正直、母の方が驚いているのだけれど、とにかく間違っても怒ることなく、解答を見ながら直しをしている。
 「今日も怒らないで勉強したよ」と報告してくるときの、昇平の誇らしそうな顔。そうやって貯めたクリスタルは、ことさら大切にしていて、めったに無駄遣いしない。きっと、自分のがんばりを自分の目で確かめているんだろうね。


 まあ、やり方は人それぞれで違うから、うちでうまくいったやり方が他のお子さんに合っているかどうかはわからないけれど、参考になる部分があるかも、と思ったので書いてみた。
 これでがんばりの成果がテストに反映されれば申し分ないのだけれど……こればっかりは、うっかりミスの多いADHDっ子だけに、どうなりますやら。
 テスト範囲票に先生が書いてくれていた「努力は裏切らない」ということばを信じるしかないかな。

[08/09/24(水) 14:41] 家庭

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