昇平てくてく日記3

中学校編

昇平3行日記・8

※全然3行で収まっていない3行日記。

11月15日(月)
 今朝は割とスムーズに起き出し、出がけにちょっとだけ不安定になったが、気持ちを切り替え、がんばって自転車で登校していった。
 ところが、11時半頃に学校の公衆電話から電話。「ぼくが誤解して騒ぎを起こしてしまったから、お母さん、学校に来て話をしてちょうだい」
 何事かと話をよく聞いてみると、2校時目、昇平とL子さんが隣り合った別教室で国語の授業を受けていたときに、L子さんが作文を書けないと騒ぎだし、その声で昇平が落ち着かなくなって勉強できなくなり、「L子さんが落ち着いたのでもう大丈夫だよ」と言われて確かめに行ったところ、ちょうど別なことでまたL子さんが大声を上げたので、昇平もパニックになり、近くにいた介助の先生のせいだと誤解して椅子を投げてしまった――ということだとわかった。その後、落ち着いてから先生やL子さんに謝ったものの、3校時目の数学も授業にならず、4校時目になったところで「もう帰りたいと言っているのに聞いてもらえない。お母さん、学校に来て話をしてください」と電話をかけてきた、ということ。
 思わず……溜息。どうしてこう、毎度毎度同じパターンのトラブルに陥らせるかな。例え別教室にいても、L子さんがまた騒ぐのではと不安に思っていたら、昇平は落ち着かない。それなら静かな図書室にでも移動して、そこで授業をしてくれたほうが、お互いよっぽど落ち着いていられる。TT制で先生が二人いるのだから、そういう対応だって可能なのに。確かにこの子たちは普通では騒がないようなことに騒いでしまうけれど、そこに配慮してほしいからこそ、特別支援学級に行っているんだけどな。
 午後からは学年全体での高校入試説明会がある。普通の入試とは違う形で高校受験を考えている昇平は、それに出席する意味もわからない。それで、もう帰りたい、となっている様子。正直、説明会に参加しても、昇平にはほとんど何も聞き取れないだろう、と私も思う。受験する高校の資料や願書を目の前に並べて、実際に即した形で説明しなければ、彼には理解できないし、授業もまともにできないでいるのに入試説明会に参加するなんて、と考える昇平の気持ちもよくわかる。
 昇平が電話するそばに担任もいたので、代わってもらって、もう一度説明会の意義を本人にわかるよう説明してほしいこと、同時に、その手の集会ではL子さんが不安を感じて騒ぎやすいので、彼女にも安心して参加できるように配慮をしてほしいこと、期末テストも近いのに授業にならないのは心配なので、昇平が説明会にどうしても出たくないと言ったら、家で私が勉強を見るので早退させてほしいこと――を伝え、話し合いの結果、まず説明会に出る意義をもう一度説明する→出られなければ、担任と一緒に今日できなかった授業の内容を勉強する→それも駄目ならば、早退して母と勉強をする、という対応にすることに決まった。
 今は午後1時15分。さて、昇平は早退してくるだろうか、それとも……?

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11月15日・続き
 結局昇平は高校入試説明会には出席せずに、教室で担任と数学の勉強をして、下校時間になってから帰宅してきた。
 最後まで学校にいられたことや、勉強をがんばれたことで、少し自信を取り戻したようだったが、夜になるとまた大きく落ち込んでしまった。ことばで説得しようとすると混乱してパニックになっていくけれど、頭をなでて「いろいろとつらい気持ちはよくわかるよ」「よくがんばってるよね」と繰り返し言ってあげたら、すうっと落ち着いて、スムーズに眠りについた。
 昇平の、音に対する感覚の歪みの話、それに対して充分な対応が取れない現状の話、そのために自分の居場所がどこにもないと本人が感じているのだということ。答えは見つからないのだけれど、旦那といろいろ話し合った。

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11月16日(火)
 心配したが、朝はとてもスムーズに起きてきて、自転車で登校していった。
 担任も昇平に配慮してくださったようで、安心させるようなことばや、いいところを誉めることばをたくさん言ってもらって、トラブルもなく一日学校で過ごし、授業にもしっかり取り組んで、にこにこと元気に帰宅してきた。
 安心と自信は、本当に力になっていくね。

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11月17日(水)
 昨日は一日元気に過ごしていたが、夜寝る間際から不安定になって、今朝も起きたときから落ち込んでいた。いよいよ明日から期末テストなので、とても不安になってきたらしい。送ってほしい、というので車で学校まで送ったが、着いてもなかなか車から降りようとしなかった。「歩き出すことは自分にしかできないんだよ」と話しかけると、「自分でやるしかないのかぁ」と言って、やっと自分の足で学校へ歩き出した。
 学校では朝のうち、表情の硬くて沈んでいたらしいが、担任が授業のあまった時間にゲームなどを取り入れてくださったら、そこから表情も明るくなり、その後の授業は順調に受けられたらしい。
 4校時目はスクールカウンセラーのA先生との面談。本来は面接練習の時間だったのだが、先週同様、昇平の不安な気持ちを聞いて受け止めることに終始してくださったらしい。気持ちを落ち着かせることのほうが、より大切な対応だから、それで良かったと思う。
 夕方から家庭教師とテスト勉強。相似条件を暗記し、図形問題もがんばって取り組んだらしい。自信がついたのか、夜は元気で、10時半頃スムーズに就寝した。

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11月18日(木)
 いよいよ期末テストの1日目。目覚めは悪くなかったが、案の定、テストへの不安からとても不安定になり、ネットのひどい書き込みのことをしきりに口にし始めた。説得してもパニックになっていくばかりなので、肩を揉んでやりながら、これだけずっとテスト勉強をがんばってきて、ちゃんと身についているのだから大丈夫。応用は飛ばしたからできないだろうけれど、基本問題はしっかり勉強したのだから、きっとできるよ、と話すと、(ネットについてはまったく話さなかったのに)不安定がおさまっていって、動き出せるようになった。
 その後、朝食の席でもまた「ネットはひどい」「人はどうしてすぐ他人を殺したがるんだ」と不安定が始まったけれど、私が「日本を守りに九州へ行った人が故郷を思って歌った和歌は?」とか「三権分立は何権と何権と何権?」などと、すでに暗記済みのテスト範囲の内容を問題に出してやり、それに答えることができると、嘘のようにすっと不安定がおさまっていった。不安定の原因は、ネットではなくテストへの不安。ちゃんと覚えている、答えられる、と確認することで、自信が湧いてきて安心できたのだと思う。
 このためにずっと取り組んできたテスト勉強。目標は、前回よりも1点でも多い点数を取ること。目標を達成して、自信を挽回していけますように。
 結局20分遅れで家を出発。遅刻だけれど、1校時目の実技は昇平たちには試験がないので大丈夫のはず。遅れたいきさつや、それでもがんばって自力で登校していったことを、学校に連絡しておいた。

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11月18日・つづき
 昇平はがんばってテストを受けてきた。1日目は国語、社会、数学。帰ってくるなり「方程式を覚えていれば、もっと点数が取れたのに!」と言った。全然わからなかった、と連絡帳の反省欄には書いてあった。
 私もテストの問題用紙を見たけれど、昇平が覚えたことの上を行く問題や応用問題が多かった。時間が足りなくて家庭学習の手が回らなかった項目も多い。方程式は解の公式を忘れてしまっていた。長期記憶に困難を抱えているから、時間がたつと忘れていくんだよね……。
 これがどういう結果になって出てくるか、答案が返ってくるまではわからないな。少しでも努力の成果が出てくれるといいのだけれど。
 今日は、私と明日の理科のテスト勉強を一生懸命やった。

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11月19日(金)
 期末テスト2日目。昨日テスト勉強した山が大きく外れ、思うようには答えられずに帰ってきた。う〜ん、問題が難しいな。特に一分野はすべて先行実施対応の内容だった。いや、それが受験生には当然のレベルなんだろうけれど、いくら勉強しても思うように点数につながらないのは、やっぱりつらいよね。「前回より1点でも多く」が目標だったけれど、それも達成が難しいかも。とはいえ、勉強しなかったら、限りなく零点に近かっただろうから、やっただけのことはあるのだけれど。そのあたりのことを昇平に話したら、「(定期)テストで入試の練習をしてるんだね」と言って、比較的落ち着いて受け止めたように見えた。
 私自身は、午前中、市の社会福祉協議会の交流会に出席。終わってから、一緒に参加した親の会のTさんとランチに行った。向こうも不登校気味だった中学生のお兄ちゃんがいるので、共通の話題で盛り上がった。久々にストレス解消。
 今日はテスト明けということで、家庭学習は休みにして、夜、昇平とコーラや発泡酒で乾杯して打ち上げをした。

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11月20日(土)
 朝、同居の義母が家の中でつまづいて転び、右腕の付け根を骨折してしまった。右腕を三角巾とバンドで固定して、2週間の絶対安静。病院に送迎したり、ばたばたしてしまった。腕以外に怪我をしなかったのは不幸中の幸い。
 午後からはL子さんが遊びに来て、午後中、昇平と遊んでいった。私は今は隣の部屋にいて、彼らの遊びには口を出さないようにしている。二人でいろいろゲームをしていたようで、たまに言い合いは聞こえるけれど、すぐにおさまって、仲よく遊んでいた。
 夜は旦那が早く帰ってきたので、ボジョレーのハーフボトルを開け、昇平にはグレープジュースで、ミニ宴会。昇平は嬉しくてずっとハイテンション。そこに義母の怪我のショックや遊び疲れが重なって、夜10時頃からパニックが始まり、私の対応もまずかったので、久々の大パニックになってしまった。見かねた旦那が昇平の手を取って落ち着かせてくれたが、その後、昇平自身が「話をして落ち着かせてもらおうとすると、必ず『人間はみんな人を殺したがっている』って考えになってしまうから、別のことをやってもらったほうがいいみたいだ」と言ってきた。具体的にどうするのがいいかな? と聞いたら、抱きしめたり頭をなでたりされるのは年齢不相応だから恥ずかしい、などといろいろ考えて、「手を握るか、肩をたたいてもらうのがいい」と言ってきた。これからも迷惑をかけるだろうけれど、自分を見捨てないでほしい、お父さんとお母さんにいてほしい、と繰り返す昇平。「大丈夫、いてあげるよ」と旦那と私で答えた。11時20分頃就寝。

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11月21日(日)
 今朝になって薬袋を確かめたら、昇平は昨夜の薬を飲み忘れていた。抗てんかん薬と抗鬱剤。なるほど、それであのパニックだったのかと納得。急ぎ、忘れた薬を飲ませたら、家庭教師と勉強している間に落ち着いていって、終わってからは、久しぶりに自転車で本屋まで出かけ、新しいポケモンの攻略本を手に入れて、ご機嫌で帰ってきた。
 午後は私と勉強。テストで忘れていた因数分解と二次方程式をやり直した。もうテストは終わってしまったけれど、高校に入ってから必ずまた使うから、今のうちにしっかり覚えておこうね、と話した。
 その後、精米に行くのに、30Kgの米袋を運ぶのを手伝ってもらった。旦那がほとんど家にいないので、家族の中で重い米袋を持てるのは昇平だけ。本当に助かった。夜にまた抗鬱剤を飲んだら、今までにないくらい、しっかり安定して、嫌なこともほとんど思い出さなくなった。薬の量をもう少し増やしてもらう必要があるのかもしれない。月曜日の夕方が受診日だから、そこで主治医と相談してみよう。  

[10/11/22(月) 08:48] 3行日記

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