昇平てくてく日記3

中学校編

昇平3行日記・13

※全然3行で収まっていない3行日記。


12月20日(月)
 いつものように朝は不調。とても落ち込んでいたのだけれど、私がネットにアップされた楽しい動画を見せると、そこから元気になった。リスペリドンは0.5mlと1mlとどちらにするか迷ったけれど、学校で不調になったときに追加で服用できた方が良いだろうと思い、0.5mlを服用させた。30分遅れで自転車で登校。8時半頃学校到着。校門のところで転んだらしいが、怪我はなく、今回は自転車も無事だった。
 1〜3校時目は図書室で過ごして、授業もそこで受け、4校時目は交流学級のクラスメートと総合情報、穏やかに落ち着いて過ごしていたらしい。 
 帰宅後は勉強を軽くすませ、その後もは落ち着いて過ごしていた。夕食前に一時不安定になりかけたが、夕食を食べ、夜の薬を飲んだら、また落ち着いた。「年賀状を書くんだ」とイラストの下書きを始めて、なかなか寝ようとしなかったが、「寝不足になると、また嫌なことを思い出しちゃうかもしれないよ」と注意すると、すぐにやめて寝た。10時半就寝。

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12月21日(火)
 今朝は比較的早く落ち込みから立ち直って、朝食もスムーズに食べられたが、その後なかなか動き出せなくなって、結局は30分遅れで家を出発。今朝も学校到着は8時半だった。
 午前中、冬休みの課題のことで電話をかけてきた。他の子どもたちは受験対策の問題集をするのだが、ぼくはそれとは別のプリント学習でいいよね、と言う。「それでいいんじゃない?」と答えると、「いやにあっさり決まっちゃったな」と拍子抜けした声。絶対に問題集をやりなさい、と母が言うとでも思っていたのかな? 正直、高校受験用の学習は昇平には難易度が高すぎる。それを冬休みの課題にされたら困るな、と思っていたので、プリント学習はとてもありがたい。
 ところが、その後、午後1時頃にまた昇平から電話があった。開口一番、「お母さん、助けてくださいー!」。嫌なことばが頭の中に突然浮かんできて、自分で抑えられなくなったのだ、と訴える。ただ、私の声を聞いて落ちつき始めていたので、「鞄のリスペリドンを飲んでおきなさい」と言うと、スムーズに承知して電話を切った。
 帰宅後に連絡帳を見たら、3校時目の授業の後半には疲れて眠ってしまっていたらしい。薬を飲む前のことだから、疲れが出て不安発作が起きてしまったということなのだろう。

 旦那が5時過ぎに帰宅。昇平のリクエストで、町中のイルミネーションを見に行くことにした。駅前や隣町の大通りの街路樹がライトアップされているので、毎年親子で見に行っているのだ。旦那の車で、ぐるりとミニドライブ。大通りを歩いて、光る木々を眺めた。小さな町のイルミネーションだから、都会のように華やかではないけれど、それでもこんなふうに親子で毎年見に来たことが、10年後くらいにはいい思い出になっているのかもね、と旦那と話した。
 歩き疲れてしまったので、私は10時前に就寝。昇平も10時半過ぎには寝たらしい。

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12月22日(水)
 高校生の頃から私の掲示板に来ている常連のKくんが、「自分はポケモンの新しいキャラクターが気に入っているよ」と書き込みしてくれた。朝目を覚ました昇平が、いつものように「ポケモンは人気だろうか」と言い出したので、その書き込みを読んでやったら、「やっぱり好きな人はいるんだね!」とたちまち元気になって、その後は落ち込むこともなく登校することができた。
 本当は、こういうことは、周囲の子どもたちの言動を見聞きすることで思いこみを修正していくものなのだろうと思う。ところが、小学校から越境通学していた昇平には近所に友だちがいない。学校でも、交流級には授業中にしか行かないから、ゲームの話ができる友だちもいない。中学3年生になってポケモンの話をする子もあまりいないだろうし。情報の入手源がネットしかないような状況だから、情報の訂正が難しいのだ。単純に、「新しいポケモンは面白いよな!」と言ってくれる友達がいたら、それで解決する悩みなのだろうと思うのだけれど。ありがとう、Kくん。助かりました。

 台風のような大荒れの天気だったので、私の車で登校。2校時まで授業を受け、終業式、学活、弁当を食べて下校、という日程。いろいろあったし、成績も全体的に下がってしまったけれど、それでも2学期は1日も欠席しなかった。本当によくがんばったと思う。
 ほっとしたのか、私は疲れが出てしまって、夕飯の後で一眠り。その間、昇平は何度か不安の発作に襲われていたが、私が寝ているのを見ると、「お母さんは今日は疲れてるんだね。今はいいや」と自分でコントロールしていた。10時過ぎには一人で就寝。

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12月23日(木)
 冬休み開始。昇平は朝9時過ぎまで寝ていた。起きた後、「また嫌なことが浮かんできた」「ポケモンは人気だよね?」と若干不安を口にしたけれど、すぐに気持ちを切り替え、リスペリドン0.5mlを服用して、朝食を食べた。
 その後、学校でできなかった理科のプリントを、私と一緒に勉強し始めたが、とたんに不安発作が勃発。考えがどんどんネガティブになっていって、「どうせぼくはダメなんだ。生まれてこない方が良かったんだ」と言い出した。勉強がきっかけになるようだから勉強を休もうか、と言えば、学校の勉強が遅れてしまうから、それは嫌だ、と言う。あまりネガティブがひどいので、私もほとほと疲れ果てて涙が出て、「もういいよね。そんなにがんばって生きなくたっていいよね」と言ったら、昇平の方がまた我に返った。不安は止まり、その後は言動もしっかりして、プリント学習もできた。でも、正直、昇平より私のほうが危ないのかもしれない。昇平ではないけれど、嫌な考えが時々浮かんできてしまう。昇平は生きたいと言うから道連れにはできない。ならば私一人だけで、と考える瞬間がある。

 昇平はその後、一日落ち着いていた。倉から精米した米の袋を運んだりして、積極的にお手伝いもしてくれた。年賀状のイラストを完成させ、夕食後にリスペリドン0.5mlを飲み、寝る前に「ポケモンは人気があるんだよね」「子どもが言うことは口だけだから、本気にしちゃダメなんだよね」と私に確認をして、10時過ぎに一人で就寝した。

 昇平の方は落ち着くことができたけれど、私は義父からあらぬ事で叱られて再び我慢の限界。義父はすでに物忘れが始まっているから、以前のことを忘れてしまうのは仕方ないのだけれど、それを周囲の人間のせいにして攻撃する性格だから困る。夜まで抑鬱状態で、帰宅した旦那相手にぶちまけた。愚痴を言っても、旦那に謝られても、何もこの状況は変わらないのだけれど、それでもほんの少しだけ元気は戻ってくる。どこまでも続く道。あんまりいろいろありすぎて、ほとほと疲れてリタイヤしたくなるのだけれど、それでも私が抜けたら誰もが困ってしまうとわかっているから抜けられない。
 愚痴を言いながらも、耳の底で聞こえていたのは、中島美嘉の『あなたがいるから』だった。あなたがいるから もう少しだけ生きてみようかな あなたがいるから この毎日まだ終われない……このフレーズが繰り返し繰り返し聞こえていた。

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12月24日(金)
 今朝も昇平は8時半過ぎまで寝ていた。9時半頃に朝食。その後、ゲームをしたり私と勉強をしたり。昨日に引き続き、理科の天体のプリントをしたが、昨日の内容を絵に描いて確認してから取り組んだら、とてもよく理解をして、正しい答えを自分で考えることができた。
 その後、昼食の支度をしていると、昇平がやってきて「ぼく、本当はやっぱり頭いいよね?」と確認するように言った。彼が言う「頭がいい」というのは、成績表で5をとったり、テストで90点や100点をとるようなことではなく、「教えられた内容をちゃんと理解できる力がある」という意味。理科の授業中、理解できなくて寝てばかりいた昇平だけれど、こうやって対面式で、絵や図を多用しながら具体的に教えていけば、ちゃんと理解するし問題も解ける。だから、「ぼくだってできるんだ。馬鹿じゃなかったんだ」と実感できたんだろう。「そうだよ。昇平くんだって、自分に合ったやり方で教えてもらえれば、ちゃんとわかることができるんだよ」と答えると、満足したように離れていった。

 一日非常に安定していた。たまに不安になってもすぐ復活する。
 午後はなかなか良くならない唇の荒れを診てもらいに病院の皮膚科へ。口唇カンジタにかかって薬を塗っているのだが、あまり良くならないので病院を変えてみたところ、担当は医大の先生で、摩擦による「荒れ」ではないか、と言われた。昇平は唇をなめる癖はないけれど、そういえば寝るときにうつぶせ寝になる。唇が枕でこすれて荒れるのかもしれない、と思い当たり、帰りに新しい枕と枕カバーを買ってきた。これで良くなっていくかな?

 病院でかなり長い時間待たされたので疲れたのだろう。夜になって不安定開始。ネガティブの永遠ループが始まりそうだったので、リスペリドン0.5mlを追加で飲ませ、話をするうちに、気分が切り替わって元気になった。薬も効いて、夜は10時過ぎに自分一人で寝た。

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12月25日(土)
 今日は朝の落ち込みからもスムーズに回復して、リスペリドンを飲まずに昼過ぎまで過ごせた。その間、私と理科の天体を学習して、その後、小雪の降る中を自転車で床屋に行った。全体的に積極的で、明るい顔。午後からL子さんが遊びに来るので、それを楽しみに待っていた。
 午後1時にL子さんが訪問。いつものことだけれど、遊んでいるときには二人はとても仲がよい。ただ、さすがに昇平が不調なときなので、1時間半ほどしたあたりで、何のゲームをするかで揉め始めた。昇平は一人で遊ぶタイプのゲームをしたがる。L子さんはそれではつまらないという。一緒に遊べるゲームにしたら? と私がアドバイスしても、昇平が承知しない。だんだん不安定がひどくなってきたので、リスペリドン1mlを服用。それでもまだ落ち着かないので、私も一緒に混ざってゲームをすることにしたら、昇平もやっと機嫌が直った。3人で遊ぶときには、いつも「Wiiパーティ」。ようするに双六ゲームだけれど、子どもたちのほうがゲームは強いので、私に勝って優越感に浸れるらしい。でも、勝負は時の運なので、今日は私が一番に上がってしまった。勝っても負けても笑って終われる、楽しい時間だった。

 その後、予想通り、夜になって昇平はまた不安定に。疲れが出てきたのだ。またネガティブな話の無限ループが始まったが、それを整理しながら、「今日は疲れたから嫌なことが浮かんでくるんだよ」「今日は早く休もうね」と話しかけていたら、次第に落ち着いてきた。
 昇平の不安の本当の原因は、自分自身への不安。話し下手で人付き合いが苦手なことを自覚しているので、日々、一生懸命話す内容を考え、できるだけ丁寧なことばで話そうと努力をしているのだけれど、ネットでは、そういうまともな発言をした人が、心ない相手から攻撃されることがしばしば起きる。そんなやりとりを目にしてしまって、「ぼくもあんなふうに、周囲の人たちから集中攻撃されるに違いない」と考えるようになってしまったのだ。
 そんなことはないよ。礼儀正しくふるまう人が現実世界で周りから攻撃されるなんてことは起きないよ。そう言い聞かせながら、心の片隅では私自身も漠然と不安を感じている。ネットでも現実でも、いわれのないことから「いじめ」は起きる。そんな今の日本社会に恐怖を感じる昇平の方が、本当は、感覚として正しいのかもしれない……。

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12月26日(日)
 8時に起床して、9時からポケモンのアニメを楽しく観て、10時から家庭教師と数学の勉強。勉強中はどうしても落ち込む感じが多かったらしいが、終わりの頃になって、「全然わからなくなった!」と騒ぎ出したので、先生と私と二人がかりで何がどうわからなくなったのかを確認した。その結果、幾通りかの解き方のある問題で、昇平がやろうとしていたやり方と、先生の教えたやり方が違っていたことが判明。昇平の方のやり方に立って、その上でどこでつまづいているかを探したら、スムーズに解けた。「ぼくは本当はやればできるんだよ」と問題を解きながらつぶやくいた昇平のことばに、ああ、やっぱり勉強が理解できることが、本人のセルフエスティーム向上に直結していたんだ、と改めて感じた。だから、学校の勉強がわからなくなってしまったときに、がたがたと自信を失っていってしまったんだね。

 午後はのんびりと過ごし、明日のフリースクールをとても楽しみにして準備をしていたのだが、夜寝る頃になって急に不安定になった。どうしたのかと思ったら、明日、フリースクールで友だちに会ったときに「ポケモンなんて面白くない」と言われたらどうしよう、と心配になったのだという。フリースクールに集まる子たちはみんな優しいこと、先生もちゃんとみんなの言動に目配りしてくれていること、さらに明日の買い物や夕食のメニュー……楽しいことを次々話して聞かせるうちに、やっと落ち着いて寝てくれた。(ちなみに、翌朝はすっきり目覚めて、「今日は気持ちいいなー!」と言っていた。12月27日)

 年末を迎えて、私はいろいろと忙しいが、それでも以前よりは元気になった。冬休みに入って、昇平の状態が良くなってきていることが大きい。まだ不安定な状態は起きるが、それでも、前の日に比べたらずっと軽いし、立ち直りも早い。冬休みの間のんびり過ごして、楽しいことをたくさんして、もっともっと元気になってほしいと思う。

[10/12/27(月) 14:06] 3行日記

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