自己肯定への道
〜ひとりのADHD女性の手記〜

By くらげ


その5


ADHDを知って変わったことは、自分のことがより詳しくわかったこと、一部の人にカミングアウトをして理解してもらったことの他に、もう1つあります。
それは、発達障害について詳しくなったことです。

「片づけられない女たち」の訳者ニキリンコさんのプロフィールに、「高機能自閉症=アスペルガー症候群」と書かれていたことがきっかけでした。
私が働いている知的障害者施設の利用者にも自閉さんが何人もいます。当時、高機能自閉の存在も知らなかったので、その利用者さんたちと、翻訳業をされているような方が同じ障害だなんてどういうことだ?と興味がわいたのです。
リンコさんのHPは隅々まで読みましたね〜。当時の日記は自閉エピソード満載で「なるほど〜」ということも多かったし。それを読んで、自分では説明できない利用者さんたちの感覚がわかってきたんですよね。
そして、そこから発達障害関係HP巡りが始まったのでした。(このアサクラタウンに出会ったのもその頃。2001年4月でした) 特に、お子さん(当事者)のちょっとしたエピソードが載っている日記を好んで読んでいて、「勉強」というのではなく、自然に発達障害について詳しくなっていった感じです。
ま、関連書籍もそれなりに読みましたけどね。ADHD関係は自分の為にですが。

詳しくなったことで、利用者対応での「これでいいのかな・・・」という不安が減りました。それまで本当によくわからずに人の様子を見て動いていたという感じでしたから。(しかも人によって考え方が違うから混乱してました)
でも、発達障害の知識という核になるものができ、自己判断が前よりは楽になりました。(優先順位をつけるのが苦手という特性の為、あくまでも「前よりは」です^^;)

それに、自分のADHDを自覚したことで、利用者の気持ちがよりわかるようになりました。
「なんでそんなことでパニくるの?」というようなちょっとしたことで躓いている人もいます。私は特性がそれほど重くなかったり、知的障害がないことで理性で表に感情を見せないでいるから、それほど目立たないだけ。他の職員にはピンと来ないようなことも、実感としてわかるんです。

私はそれまで職場での存在意義について悩んでいました。
これだけは人に負けないぞというような取り柄もなく、足を引っ張っていることも多い。元々対人関係に問題を抱えていた人間なので、明るく話し上手でしかも対応も上手い職員のような人気もありません。
「生きているだけで意味がある存在」という持論があるので、この世における存在意義について今更悩んだりはしませんが、仕事ではそうはいきません。自分の役割を果たすことで給料をもらっているわけですから。
経験年数で多少給料も上がっているのに、それに見合った仕事ができていないという罪悪感のようなものもあったし、同僚たちに本当は必要とされたいのに・・・という願望もありました。
こんな私でもここにいる意味を見つけることで安心したかったんです。

でも、利用者のことがわかるようになって、「自分にもできることがある」ということに気付いたのは、自信になりました。しかも、それは私がADHDだからなんですよね。
他の職業の人には直接参考にならないかもしれないけど、私にとってADHDは単なる悪者ではなく、長所の1つでもあると実感しています。


この原稿は療育掲示板に投稿された記事を、筆者の了承を得て再掲したものです。
問い合わせ等は 朝倉玲 ley@nifty.comまで

(掲示板投稿日:2007年9月5日)





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