 | 自己肯定への道 ~ひとりのADHD女性の手記~
By くらげ |
その9
前回書いたように、同僚たちから文句を言われたことはなかったのですが、問題は利用者の方でした。
介護される側にとっては、頼りない職員、きちんと動けない職員では不安なのは当然です。
それでも大抵の利用者さんは、初めのうちは慣れないんだから仕方ないと思ってくれています。
ただ、人一倍覚えが悪く、動きも悪い私・・・。
何ヶ月経ってもできていないことに我慢の限界がきたようで、「いい加減にしろ」とこっぴどく怒られたこともありました。
普通だったら当たり前に気付いていることでも、私の場合言われなくてはわからないことがあるので、かなりショックで落ち込んだけど、言ってくれてよかったとも思いました。その後は私なりには気をつけるようになりましたから。
そんなふうに、単発で怒られることも何度かありました。
でも、それだけではなかったんですよね。
「その1」で「私はあまり人に非難された経験がない」と書きましたが、実はこの身障施設にいる間だけは例外で、ずっと特定の利用者に非難され続けていたのでした。
てきぱきと効率よく動くことを第一と考えているので、動きがモタモタしている上に「あ、あれ持ってくるの忘れた」なんてことが年中の私は、どうしようもない職員だと思っていたのでしょう。その利用者の介護に入った日は、怒られなかったことの方が断然少なかったです。
また、介護が特殊な上に、やり方も順番もその利用者が決めた通りにしなくてはならないのですが、「次は何をするんだっけ?」と動きが止まることも、「これでいいんですよね」と当人に確認することさえも嫌います(覚えているのが当然だから)
頭が真っ白になって次に何をしたらいいかわからなくなったり、動きを間違えた時は、罵声を浴びせられました。
ただ、非難され続けても、自分のことを全否定することはありませんでした。
この利用者が職員に一番に求めているのが、私が最も苦手とする部分だとわかっていたからです。
利用者によって職員に求めるものは違います。テキパキ動く職員には、思っていることを言い出しにくいという方もいるし。なかには「くらげさんが夜勤なら安心だわ」とありがたいことを言ってくださった方もいました。
だから、何かをやり忘れて怒られても、「『ついでに何かをする』というのはADHDには難しいんだぞ」と内心開き直っていたし、「もっと仕事に集中しろよ!」と言われても、「集中ときたか~。それができないのが障害なんだよ」と頭の中ではつっこみを入れてました。
もちろん行く度に怒られるのは嫌ですから、できる限り集中して失敗のないようにと努力はしてましたけど。それでも、その利用者の満足のいく動きができるわけではないから、その方の介護に入るのは本当に気が重かったし、時によっては情緒不安定になりました。
自分を全否定せずに済んだもう1つの理由は、異動前にある程度の実績を残せたということです。「何もできないわけじゃない」と実感できていたし、他者にも(少なくともある程度は)認めてもらえていたから。
だから、もしも私が新人の時にこの施設に配属されていたら、今のように仕事を続けていられたんだろうかと思います。ADHDも知らず、経験もなく、「私なんてダメな奴だ」と思ってしまっていたことでしょう。
二次障害になっていても不思議じゃないですね。
自分の特性を自覚して、経験を積んで自分を認められるようになってからだったのは、本当に運が良かったんだなぁと思っています。
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