昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

リタリンの効果

◎2月29日の記録

 リタリン  1回目 8:15   2回目 12:30

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朝起きたら、すごい雪! これは、病院へ行くのは無理かと思ったのだが、やがて雪が止み、日がさしてきて、道路の雪が溶け始めた。旦那が休日で家にいたので、車を運転してもらって、M病院へ行って来た。

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最近、「家」と「外」の区別がつくようになってきた昇平。やはり、病院の待合室でも、私たちのそばから離れなかった。
病院へは2週間に1度薬をもらいに行くのだが、今までは必ず待合いロビーをうろうろと歩き回り、別棟に続く階段を下りたがったり、自動販売機でジュースを買ってもらいたがったりしていたのだ。それが、どこかへ行ったときの昇平の行動パターンだったのだが、それが、今回は、ソファのところで、家から持ってきた漫画をずっと読んでいるだけだった。だから、私たちもずっと待合室のソファに座っていられた。
・・・う〜ん、こんな日が来るようになるとは。(^_^;)

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旦那にも一緒に診察室に入って、先生の話を聞いてもらった。
初め、旦那は診察室までは入らない、と言っていたのだが、ぜひに、と先生にも言われて、一緒に入ってもらったのだ。本人は「実は今朝ひげを剃らなかったから、顔を合わせるのはちょっと、と思った」のだそうだけど・・・。(笑)
お父さんも一緒に来たので、昇平も安心した様子。行儀悪くソファに寝ころんで漫画を読み続けていたが、ここでも、とうとう放浪の旅にでることはなかった。

旦那がいたので、先生の方も、いつもとはちょっと違ったことを話してくれた。
例えば、リタリンの効果は急に出るものではなく、少しずつ本人を成長させていくものだ、とか、そういった手だてをまるで講じなかった子ども(といっても、高校生)が現在入院している話とか。この高校生は、他人との人間関係がうまくはかれないのだが、それが何故なのか、自分でどうしても理解できないのだそうだ。その結果、社会不適応になって、心身に障害が出たのかもしれない。

昇平は薬を飲み始めてから良い変化が次々出ているわけだが、それを「良かったですね」と喜んでもらったものの、「ホントはもっと早く(薬を)使いたかったんですけどね」とも、ちらりと言われた。
リタリンに関しては、去年の1月、初めて発達相談会に行った時点から先生に勧められていたのだ。
でも、私としては、それ以外の方法、例えば、子育てサークルのようなところで集団生活を経験させるとか、周囲の大人のアプローチの工夫をする、などをすれば、同じような効果が上がるんじゃないかと思って、その時には薬の使用には踏み切れなかった。・・・結局、1年間昇平の観察を続けていて、どうしても社会性の発達が思わしくないので、リタリンの使用を決心したのだ。
今にして思えば、1年前の時からリタリンを始めた方が良かったのだが、それは結果論だし、今からだって決して遅すぎはしないはずなので、この際、これはこれで良かったことにしておこうと思う。(^_^;)

リタリンは、子どもが小さいうちから使用した方が効果が上がるのだという。
それは、幼い子どもの方が薬が効きやすいからではなく、薬によって周囲への注意力が増すようになるために、「こういうことをしたら相手が怒って喧嘩になる」とか「こんなことをするとみんなから嫌がられる」とか「こういう風にすると、みんなと仲直りできる」とかいう経験を幼いうちから積めるようになり、その結果が、将来的には、成長の差に結びつくからなのだそうだ。

よく、「ADHDは成長とともに自然と改善していくことが多く、成人する頃にはほとんど目立たなくなる」と言われる。それはその通りなのだろうと思う。
だが、特に昇平のように、社会との適応がうまく行かない子どもの場合は、早くからそこを補う手だてをしていく必要があるのだ。確かに、大人になる頃には、普通人に近づいているかもしれない。だが、それまでの過程で、うまく人間関係が結べなかったり、他人と関わり合う経験が積めなかったりしたら、やはり、それは大きな遅れになってしまうから。

帰りの車の中で、旦那と「リタリンを途中でやめてしまう人たち」について話した。
先生は、そういう子どもたちのことを、とても心配しているようだったが、結局、薬の服用は親が決めることなので、先生の方でもどうすることもできないのだ。
「何故、薬を途中でやめるのかな?」と聞いたら、「思ったような効果が出なかったからだろう」と旦那が答えた。
確かに、そうなのだろう。リタリンを飲むことで、数々の問題行動がすぐにぴたりとおさまっていく、と考えていたら、実際の薬の効果はあまりに微々たるもので、なにも変わっていないようにさえ見えるだろう。半月単位、1ヶ月単位、あるいは半年単位で観察するうちに、いつの間にか、少しずつなにかが良くなっていく、そんな感じの変化なのだから。
私たちはむしろ、劇的な薬の効果というのに警戒していたから(だって、強い効き目の薬ほど、副作用も強いものだから)、こういう穏やかな効き目にむしろ安心しているのだが、その親によっては、やはり、それではもの足りなかったりするだろう。それも分からないではない。
でも、分からないではないけれど、本来の子どもの成長というのは、そういうものなのだから、焦らないでじっくり付き合っていく姿勢が大事なんじゃないかな、と思ったりした。

[00/03/01(水) 07:49]

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