昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

ADHDのビデオについて

◎4月26日の記録

 リタリン  1回目 8:00  2回目 12:00頃

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夜、子どもたちが寝てしまってから、昨日このコーナーで紹介したADHDのビデオ(発行/アートデイズ)を、旦那と二人で見た。全50分、お互いほとんど何も言わずに眺め、そこで語られる言葉に耳を傾けていた。

内容は、ADHDの基本的な説明やその診断方法を交えながら、2人のADHDの男児の母親、担当の医師(=司馬理英子氏)、学級担任がその子どもについて語り、さらにコミュニケーション・セラピストであるカニングハム・久子氏の講演会から、親がADHDの子どもたちにとるべき態度の部分を抜粋して紹介している。
ひとりの人に長く語ってもらうのではなく、ADHDの子どもたちが抱える問題ひとつひとつのテーマに対して、複数の人間のコメントを次々に紹介する、という編集の仕方。これは、なかなか分かりやすかったような気がする。

だが、実際のところ、ビデオの中では、「ADHDの子どもにはこうしなさい、ああしなさい」という明確な指導法を述べているわけではない。ただ、彼らの理解の仕方、アプローチのヒント、正しい受容の仕方について、示唆するようなコメントが述べられるので、こちらはそこから、我が子への対応を自分で考えることになる。
それは、ある意味で、とても現実的なような気がする。
なぜなら、彼らは100人いればその状態像も100通り。基本的な対処の仕方はあるものの、個々のアプローチの仕方は、その子によってまったく違ってくるのだから。ある子にはこの方法が合っているが、別な子には別な方法が必要・・・となってくるのだ。親は、我が子の状態を見て、わが子に合わせたアプローチを考えなくてはならない。

ちなみに、このビデオでは、ひとりの子どもの担任の話も、ずいぶん紹介されている。
見ていると、我が家のお兄ちゃんが通っているような、1学年のクラス数の少ない、しかも人数の少ない学級のようだが、担任がその子の母と連絡帳で情報を交換しあい、その子の特性を理解しながら、どうやったら学習が出来るようになるか、さまざまな工夫をしてきて、大きな成果を生んでいる。
その子は薬も飲んでいるので、その効果も大きく出ているようだが、とても理想的に成長してきた例だと思う。参考になるところは多い。

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ところで、一緒に見ていた旦那が、見終わってから言った。
「ここに出てきた子どもは、言ってみたら、(障害が)軽い方なわけだよな」
確かに、今はもう多動があまり強くない子どもたちのようで、先日放映された『にんげんゆうゆう』で紹介されたLDの子どもたち(しかし、ADHDも併せ持っていることが多かった)のほうが、症状としては重かったように見えた。うちの昇平だって、言葉と社会性が大きく遅れている、という点で、ビデオの中の子どもたちより症状が重いと言える。

そう、うちの昇平のように、幼いうちから「明らかにおかしいぞ」と思えるADHD児は、むしろ少ないのだ。言葉が遅れ、自閉症的な様子を見せていたために、昇平は3才5ヶ月の時に発達相談会に行き、専門家の診断を受けることが出来たし、1年後の4才5ヶ月の時点からリタリンをスタートすることも出来た。

多くのADHD児は、言葉に遅れは生じない。(ただし、一部の子どもたちは言葉が遅れる。)むしろ、ひっきりなしに何かを喋り続けているような、おしゃべりなことが多かったりする。
これも実は、多動の一症状なわけだが、言葉の遅れる子どもたちには早くから心配しても、喋れる子どもたちにはそういった心配をすることは少ないから、どうしても発見が遅れがちになる。
それに、普通に喋れて、こちらの言うことも理解できるものだから、つい周囲の方でも「これだけ分かっているのに、どうしてそれが出来ないの!?」という感じで、本人を怒ってしまいがちになる。
本当は、「分かっていても、どうしても出来ない」「わかっていても、つい体が動いてしまう」という障害だというのに、その子のわがままのせいだとか、しつけがなっていないのだとかいう形で叱られてしまうのだ。
いくら叱られても、本人にはなかなか直せない。どうしても、言われたことが出来ない。守れない。自分はダメな人間なんだと思いこむようになっていく。・・・そして、思春期を迎えたとき、不登校、家庭内暴力、非行、鬱病、引きこもりetc.と言った2次障害を起こしてくる・・・。

昇平は言葉が遅れている分、確かに、障害としては重かったと言える。
でも、そのおかげで、昇平はずっと実年齢より幼く扱われてきた。
どうやら、人は言葉の発達レベルでその子を扱って行くところがあるらしい。
現在の昇平の会話力は3歳児程度なので、周囲の対応も、3歳児並のところがあるのだ。
何か言って出来なくても、「ああ、まだ中身が幼いんだから、しょうがないわね」と言う形で、目こぼししてもらえてしまう。だから、普通のADHD児より、受けてきた精神的ダメージは少ないような気がしている。
不思議なものだ。言葉の遅れという障害が、むしろ本人を守っているところがあるのだから。

とはいえ、社会性が発達していくためには、言葉の遅れはかなりのハンデになってしまうので、今、昇平の言葉が伸び始めていることはとても嬉しい限りなのだけれど。

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このビデオの内容と注文方法は、昨日の「てくてく日記」をご覧下さい。
ADHD児の親と教師に、ぜひ見てもらいたいと思います。

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【余談】
昨夜は学校のPTAの役員会議があったので、昇平を留守番させてみた。
説明したら、しばらくは、一緒に行くとごねたが、最後にはちゃんと納得して、お父さんやお兄ちゃん、おばあちゃんたちと留守番して待っていられた。全然泣くこともなかった。
う〜ん、成長したね、昇平! (^^)

[00/04/27(木) 07:23]

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