昇平てくてく日記
幼児〜小学校低学年編
保育参観
◎6月10日の記録
リタリン 1回目 8:00 2回目 13:30
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今日は保育園の参観日だった。
園での子どもたちの様子を眺め、その後、各家庭から集めた品物でバザーが行われる。
いつもとまったく違うスケジュールになるので、これはきっと昇平がパニックを起こすだろう、と考え、あらかじめ「お絵かき」で今日の予定を教えておいた。
お集まりをしている子どもたちを眺めるお母さんたちの絵を書いて、「きょうはさんかんび」と書き、次に、おもちゃ・衣類などの絵を描いて「バザー、おかいもの」さらに「おひるねなし」の文字、それから、パンをもらって母と帰る絵を描きながら、これは口頭で「今日はお給食はなしだからね。かわりにパンがお土産にもらえるってよ」
すると、昇平「きょうは、え〜と、さんかんび! おひるねしない? おきゅうしょくたべない? おかあさん、ほいくえん、いっしょ?」と確認を始めた。スケジュールが理解できたのだ。
ただ、理解できても今ひとつそれに自信がないらしく、保育園に向かう車の中で何度も確認してきたし、園につくと、出迎えてくれたまき子先生に、真っ先に「きょうはおひるねしない!? おきゅうしょく、たべない!?」と確かめていた。(^_^;)
そうやって繰り返し言っていないと、自分に納得させられないのか、今まで、他人の言ったことがきちんと理解できなかった経験が多すぎるために、自分の聞き取った内容に自信が持てないでいるのか?
・・・そういえば、先日、ものの絵を見てその名前を答える、という問題をいっしょにやったとき、どの名前もすらすらと言えたくせに、私がちょっとふざけて「え〜? ホントに○○? 本当にそうかなぁ?」なんて確かめてみたら、とたんに自信なさそうになって、分かっているはずのものの名前を「ちがった。え〜と、え〜と・・・なに?・・・」なんて心配そうに言ってきたっけ。
その時にはすぐに「○○でいいんだよ。当たりだよ」と言ってやったが、確かに、自分の判断、自分の理解に自信を持てずにいる部分があるようだな。
4歳半にして、すでに、そのあたりには自信喪失気味でいるわけだ。(-_-)
・・・あ、ちょっと脱線。
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さて、本題の保育参観。
お絵かきスケジュールで予定を教えておいたおかげか、教室にお母さん、お父さんたちが入ってきても、昇平は落ち着いて席に座っていた。
そう、ちゃんと座っていたのだ!
他の子どもたちは先生のオルガンに合わせて、元気に歌っていたけれど、昇平は持っていた紙を丸めて遊んでいて、歌には全然無関心。でも、ちゃんと座っていた!!
ちなみに、後で分かったのだが、彼がいじっていたのは、今日のスケジュールをお絵かきした紙だった。落ち着いて座ってはいたが、やはり、彼なりに緊張して、スケジュールの紙をよりどころにしていたのかもしれない。
他の子どもたちは、親が来たので、もう興奮気味。
歌う声も元気いっぱいだし、時々、お母さんのところに飛んでいってしまう子、入ってきた親に「あっ、おとうさ〜ん!」なんて大声で呼びかける子、「うちのお母さん、まだこないよ!」なんって訴える子と、さまざま。
私は幼稚園に講師に行っていたことがあるので、彼らくらいの年代の子どもが大好きなのだけれど、そんな様子が、もう微笑ましくて、ついニコニコしてしまった。(*^_^*)
で、肝心の我が子は、と言うと(笑)、初めのうちは私に気づかなかったが、そのうち、顔を上げてお母さんたちを眺めはじめ、私に気がつくと、あっ、と言う表情になって駆け寄ってきた。(予想通り! だから、わざと目につきにくいところに立っていたのだが。(^_^;) )
でも、「今はお集まりだから、席に座っているんだよ」と言いきかせると、すぐに自分の席に戻っていった。
その後は、やっぱり母が気になるようで、そわそわと立ち上がったり、席を離れてしまったり、また私のところに来てしまったり、としばらく落ち着かない状態になったが、先生に言われれば、すぐにまた戻れるし、立ち上がったときに他のお友だちに引っ張られると、ちゃんとまた席に座っていた。
参観に来た母のそばから離れなくなってしまうのではないか、と心配していたのだが、そんなことは起こらなかった。
入園式の日に、絶対に母から離れられなかったことを思い出して、これだけでも、大した成長ぶりだよなぁ、と感動してしまった。
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歌の後は、制作。
紙コップと色紙と輪ゴム、粘土を使って、動くカタツムリのおもちゃを作ろう、というもの。
カタツムリの本体はすでに前の日に作ってあったし、色紙などの材料もイチゴのパックにひとり分ずつ分けてあって、名前を書いた小さな旗まで入っている気配りぶり。う〜ん、準備がいいなぁ。(^^)
粘土をつけるのは難しいので、親も一緒に手伝っての制作。最近の参観には、この親子協力型のものが多いような気がする。先日のお兄ちゃんの参観日もそうだったし・・・。
準備も段取りもしっかりしていたので、制作作業もスムーズそのもの。
完成したカタツムリは、グループごとに競争させて、順位ごとにメダルをもらっていた。1等賞は金、2等賞は銀、それ以外は緑のメダルで、かわいいピカチュウの絵がついている。全員がメダルをもらえると分かって、「やったぁ〜!」とがぜん張り切る子どもも。(^^)
昇平も、1等や2等になろう、という意気込みはなかったけれど、緑のメダルをもらって嬉しそう。家に帰ってからもずっと首に下げていた。
そうそう。「早くて手際がよい」という噂の(笑)昇平の制作作業だが、確かに、早かった!
他の子は、カタツムリの殻に色紙を張るのに、まず紙をちぎり、それにのりを付けて張るのだが、昇平はまず殻にのりを付け、そこにちぎった色紙を貼り付けていった。だから、たちまち完成。
母がカタツムリに粘土をつけて動くように苦心している間(これがけっこう難しいのだ。)、することもなく、退屈からあちこち放浪の旅にでてしまった昇平だが、それでも、教室を抜け出すようなことはなかった。
退屈からの多動は、ADHDの特長としての多動とは、ちょっと質的に違っているな、と改めて思ったりもした。
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その後、楽しみにしていたバザーに子どもは行けないのだと知って、「しょへくんも、バザーいく!」とごね、特別に母と一緒にバザー会場に行かせてもらったり、バザーでおもちゃが売っていなかったものだから、「べつのバザーいく!」と訴えたり、とまぁ、まだいろいろとあったが、全体としては、落ち着いて園生活を送っている昇平の様子が見られて、とても良い参観日となった。
ちなみに、バザーで買い物は出来なかったが、帰りに近くの100円ショップで好きなおもちゃをひとつ買ってもらい、自動販売機のポップコーンを買ってもらえたら、昇平の機嫌はたちまち直ったのだった。(^^)
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ところで、歌を歌う場面で気がついたことがひとつ。
他の子どもたちが朝の歌やいろいろな歌を、振りもつけて元気に歌う中、昇平はただ紙をいじっているだけで、まるで関心無しだったわけだが、「カエルの合唱」を「ちいさな声で歌おうね」と先生に言われて、歌声が低く優しくなったとたん、昇平が顔を上げて、あたりを見回したのだ。そして、『あっ、みんな歌を歌っていたんだ!』と初めて気づいたような表情をした。
歌う声としては、それまでの方がずっと大きく、圧倒的だったのだが、それは彼にとっては、単なる「うるさい雑音」としか聞こえていなかったらしい。
その次には「今度は大きなカエルさんだよ。大きな声で歌おうね」と言われて、子どもたちがまた大声で歌い出したのだが、昇平は家に帰ってからそっと「カエルの合唱」を口ずさみ、「大きなカエルさんだよ」と思い出したように母に教えていた。
その、歌声が低くなった瞬間に、意識のチャンネルが切り替わって、周囲に関心が向くようになったわけだ。
大学時代、音楽教材研究の講義で、「大声で元気に歌わせるだけが良い歌ではない。むしろ、大声の歌は、歌本来の良さを味わわせるのに妨げになることがある。静かな歌い方もきちんと子どもに体験させることが必要だ」と習ったことがある。
少なくとも、昇平は、大声の歌より静かな歌い方の方が歌として綺麗だと感じるらしい。
その後の様子を見ていても、「雨降りくまの子」や「カタツムリ」など、穏やかな歌になると、ニコニコと歌を楽しむ様子が見られていた。
つい、反応が鈍い子どもには、大きな声や強い刺激で反応を引き出そうとしてしまいがちになるが、時には、こんなふうに静かなアプローチもしてみて、反応を確かめるのも必要なのだな、と考えてしまった。
なかには、静かなもの、穏やかなものの方が好きな子供たちもいるわけだから。
[00/06/11(日) 09:59]