昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

本紹介「学習障害(LD)及びその周辺の子どもたち」

◎6月13日の記録

 リタリン  1回目 8:00  2回目 12:00頃

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先日、調べもののために古い新聞を見ていて、本の紹介記事に気がついた。
「学習障害(LD)及びその周辺の子どもたち」というタイトルで、LDやADHD、軽度の自閉症などの子どもに対する対処法が載った本だという。長崎県教育センターで実際に相談に当たっている職員が、そういった子どもたちの理解とよりよい指導のために、教師向けに作ったもので、初めは自費出版だったものが、反響がとても大きかったので出版社から出版されることになったのだそうだ。
現場に即した指導の本だ、と言うところに興味を引かれて、さっそく出版社に問い合わせ、一般の書店で買える、ないときには取り寄せられる、と聞き、行きつけの本屋に注文を出した。ここ梁川町は小さいので、そんな専門の本は、どこの本屋でも置いているはずがないのだ。(^_^;)

その本が、月曜日に入荷したので、さっそく取りに行った。
絵が多い! 
初めにLDとは何か、と言う説明と、その周辺の症状としての学業不振、軽度の知的障害、軽度の自閉症、ADHDの解説が分かりやすいように載っており、その後ろに、年代別の行動チェックシートがある。
「就学前幼児」「小学校低学年」「小学校高学年」の3つに別れていて、それぞれにチェックすべき行動と、その対処法のページ番号が書いてある。

例えば、「就学前幼児」のところに「特定の遊びを長時間繰り返す。特定のおもちゃのみこだわる。同じものを触ったり、咬んだり、もてあそんだりする。」というチェック項目があり、当てはまるときには58ページを見るようになっている
で、そこを見に行くと、そのページには「こだわり」と見出しが付いており、その行動の理由と、対処法のヒントが載っているのだ。
ちなみに、こだわりの理由としては、こんなことが書かれている。

『こだわり行動は、自分の情緒の安定を図ろうとする行動です。静止すると情緒不安定に陥ることが多いので、個性や特性として受容します。こだわりを一挙に除去しようとするのではなく、こだわりが存在しても適応的な行動がとれるように支援することがを考えるのが大切です。こだわりは、「趣味」や「好み」といったレベルまで改善させることが目標となります。・・・』

指導の方向としては
『同じ動作を繰り返すときは、指導者がその動作を真似ながら、少しずつ動きに変化を持たせていく。子どもが、その指導者の動きの変化に合わせるように導く。』
『こだわることは認めるが、場所や時間を決めて、その中でおこなってよい時とおこなってはいけない時とを区別することを学習させる。』
と、それぞれ囲みの中に要領よくまとめられており、指導のヒントがイラストと短い解説でいくつか紹介されている。
くまのぬいぐるみを抱いている男の子に「教室だけね。体育館には連れていきません。」とか「休み時間になったら抱っこしていいよ」と先生が話しかけている場面。
くまのぬいぐるみを、くまの顔がアップリケされたバッグに変えていく絵のわきには、「類似した他の物に置き換えていく」。
「徐々に対象物を消滅させる」と言うところには、ある特定の布製品を持ち歩く場合なら、子どもの実態に合わせて、「少しずつその布を切って小さくしていき、いずれは糸くずにまでしてしまう。」と書かれている。これなどは、なるほどなぁ、と思わせられた。「子どもの実態に合わせて」「徐々に徐々に小さく」と書かれている配慮に、好感が持てた。
先生の方にも、「こだわりの問題ばかりにのめり込んでいると、子どもが見えなくなってしまう。『こだわりにこだわる先生』にはならないように!」と書いてある。そのわきには、こだわりの物を手放さない少年の隣に座って、笑顔で少年の方に手をかけている先生の絵・・・。

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引用がとても長くなってしまったが、これで本の内容や雰囲気が少し伝わっただろうか?
とにかく、現場の教師の役に立つように、使いやすいように、分かりやすいように、と考えて作られた本なのがよく分かる。
目には見えにくい、理解されにくい障害を持つ子どもたちを、なんとか正しく理解してもらおう、という基本姿勢があふれているし、そういう子どもたちへの深い愛情や配慮も感じられる。

巻末には、文部省のLD等の障害がある子どもたちの協力者会議の中間報告(←これ、正確なタイトルではありません。やたらと長いタイトルなので、正確に覚えていないのです。)も載っていて、うんうん、学校がこの方向で進んでいってくれたらなぁ、と、読みながらうなずいてしまった。

目について注文した本だったが、これはなかなか当たりだった、と思っている。
現場の教師向けに書かれているので、家庭の親とはちょっと立場が違っているところもあるが、彼らに対処するときに押さえるべき大事な点は、教師も親も変わりがないので、この問題に興味のある人には、ぜひ読んでみてもらいたい。もちろん、本に書かれている対処法が統べてではなく、それをヒントに、子どもに合わせた工夫をしていくことはとても大事だけれど・・・。

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保育園のお迎えの時、この本をさっそく持っていって、担任のみお先生にお貸しした。
「参考になることがあったら・・・」と。
先生が見て、実際に使うにはちょっと、と思われるようだったら、無理に勧めるつもりはなかったけれど、先生の方でも、これは役に立つかもしれない、と思ったようで、喜んで借りて下さった。

現場の先生は、とても忙しい。
いくらよいことが書いてある本でも、長時間かけないと読み切れないような分厚い指導書では、ちょっと手が出ないことが多いのだ。
その点、簡潔な言葉とイラストで読みやすく、分かりやすく書かれたこの本は、評価する価値があるのだと思う。
現場で彼らのような子どもたちに対応している、幼稚園、保育園、小学校などの先生たちに、そして、そういういう先生たちにアドバイスする立場にある人たちに、ぜひ読んでもらいたい一冊である。

この本のタイトル、及び発行元は以下の通り。


 「学習障害(LD)及びその周辺の子どもたち 〜特性に対する対応を考える〜」
    尾崎洋一郎、草野和子、中村敦、池田英俊 共著/ 同成社
    価格 900円(税別)
    2000年4月30日発行

[00/06/14(水) 07:21]

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