昇平てくてく日記
幼児〜小学校低学年編
行進の練習とリンコさん
◎9月4日の記録
リタリン 1回目 8:00 2回目 12:00頃
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保育園では、10月の運動会の練習が本格的に始まった。
園庭にラインが引かれ、今日はそこを使って行進の練習をしたらしい。
昇平は、やはり、全然練習にならなかったらしい。
初めての体験だし、全園児が出ていて、ざわざわしているし、しかも、予定外に急に練習が入ったものだから、事前予告もできなかったし・・・で、行進のイメージがつかめなくて、ウロウロしては、まき子先生に時々連れ戻されていたようだ。
ところが、帰りの車の中で昇平に「今日、みんな外で行進の練習したの?」と聞くと「行進した」と答えるし、「昇平くんも行進した?」と尋ねると、「したよ」とお返事。
体はウロウロしてしまっても、気持ちはちゃんと行進に参加していたのだ。
お迎えのとき、行進の練習の様子を話しながら、みお先生が「これからは、今日のように予定外に練習が入ることが多くなりますので、お母さんの方からも昇平くんにお話ししておいてもらえますか?」と言ってきた。
私が言い聞かせると昇平が納得することが多いものだから、最近では、こんなふうに「お母さんからも話しておいて・・・」と頼まれることが多い。
でも、「予定外のことが起こる予定がある」なんて概念は、昇平には難しすぎるよな〜、と思わず苦笑いしてしまった。
それに、このことに関しては、私が話して聞かせただけで解決するとは、正直思えなかった。
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今なら星空掲示板で読むことが出来るが、アスペルガー(自閉症の一種。言葉に遅れがなく、知能が高い。)ご本人のリンコさんが、9月2日付けのてくてく日記に書いた昇平の様子について、コメントして下さった。
リンコさんは、ご自分が幼い頃から自閉のボーダー上にあって、成人するまで診断されることもなく、健常な世界の中でとても苦労しながら今のご自分を確立してきた方なので、自閉の子どもたちの理解のために、とても力を入れて下さっている。
自閉や自閉傾向のある子たちの内面世界は私たちには分かりにくいので、リンコさんが解説して下さると、「ああ、そう言うことだったのか!」と理解できることが多くて、いつも目から鱗が落ちる思いがする。
今日、自閉症の研究が進んできたのも、リンコさんたちのような成人した自閉患者が、自ら自分たちの体験を語りだしたことによるものが大きいのだ。
(注:昇平はADHDだが、自閉症のような特徴も持っている。)
リンコさんによれば、昇平は、物事を正視していると不安や恥ずかしさ、緊張などが高まってくるタイプなので、それを調節しながら情報を取り入れていくために、遊んだり、しらんふりをしたりしながら、ひそかに観察しているのだろう、という。
確かに、昇平はとても過敏なところがあって、テレビや本の怖い場面や泣いている人などにかなり強い拒否反応を示したりする。根本的な性格も、慎重な部分が多い。
「遊びながら」「しらんふりをしながら」というのは、昇平にとって、精神的なついたて(ガード)になっているのだろう、と言うのだ。
ついたての陰から、そっと皆のやっていることをうかがって、ああ、こうするんだな、と納得できてくると、ついたての後ろからそろそろと出てきて、自分も一緒にやり始める。
そう言うことなんだろう、と思う。
リンコさんのこの話を聞いたとき、先日Y先生に言われた「しらんふりをしていても、ちゃんと観察しているなら心配ありませんよ」という言葉の意味が、本当に実感を持って理解が出来たのだった。
昇平は、これからもきっと、練習にはなかなか参加しないだろう。
でも、きっと、回を重ねるごとに少しずつ、ステップを踏みながら、皆と同じようなことをやり始めるのだろう、と思う。
気を長く持ちながら、見守っていきたいと思っている。
最後に・・・・・・リンコさん、どうもありがとう!
[00/09/05(火) 06:04]