昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

打開策 〜リタリンの使い方〜

◎9月6日の記録 

 リタリン  1回目 8:20  2回目 12:30頃
 
   ☆★☆★☆

上の「リタリン」という欄に毎日書いているように、保育園では昼食直後の12時頃に薬を飲むことが多い。・・・と、私はずっと、思っていた。以前、まき子先生に服用時間を尋ねたら、そういう話だったから。
たまに忘れて遅くなることはあったが、それはよくあることだから、気にしなかった。

ところが今日、お迎えに言ったら、みお先生からこんなふうに報告された。
「今日はお昼ご飯の後、ガードの練習をする前にお薬を飲ませてみたんです。そしたら、終わりの頃になってけっこう一緒に練習に参加できて。お薬も関係あった感じですね」
それを聞いて、私は目が点になっていた。
ガードの練習をする前にお薬を飲ませてみた? ってことは・・・これまで、昼の薬を飲ませずにガードの練習をさせていたわけぇ!?

さすがに、そんな言い方をしたら先生に失礼なので、笑顔で(ちょっと引きつっていたかも)確認してみた。
「あの・・・それじゃ、今まではいつお薬を飲ませていたんでしょうか?」
「ガードの練習が終わってからだったので、1時半くらいです。それを今日は、練習が始まる前の12時半くらいに飲ませたんです。昇平くん、初めはやっぱりホールの積み木で遊んだりして練習に全然参加しなかったんですけど、全部で5回練習したうちの4回目あたりになったら、まき子先生と一緒に練習に混ざれるようになって・・・旗を動かす演技とかはまだ出来ませんでしたけど、とにかく、一緒になってやっていたんです」

はぁ。(^_^;)

リタリンの効果は、普通3〜4時間と言われる。
昇平を観察していると、効き目はもう少し長いようで、4時間半くらい落ち着いた行動が続くことが多い。
その間にリタリンはどんどん体内で分解されていき、尿の中に排出されていく。
リタリンそのものは、子どもになんの療育効果も与えないのだ。
ただ、多動を抑え、集中力を伸ばすだけ。
その間は、普通の子どもと同じように、言われたことが良く聞き取れるようになるし、まわりで起こっている出来事も見て理解しやすくなる。そうして体験したことが、記憶の中に残って、その子を成長させていく。
それが、リタリンの力なのだ。

昇平が朝のリタリンを飲むのが8時から8時半の間。
もしも、ガードの練習を優先にするのなら、練習が始まる12時半は、朝のリタリンから4時間が経過していることになる。当然、ほとんど効果が切れかかった状態だったわけだ。
それでは、友達が練習している内容もよく見えなかったし、先生の指示もよく聞き取れなかったことだろう。
しかも、ホールの中は、いつもとは違ったざわめいた雰囲気。
興奮と混乱をなんとか自分で抑えながら、皆のしていることを観察するためには、リンコさんの言っていたとおり、「関係ない遊び」というついたてを立てながら、その後ろからちらちら見ているしかなかったのだ。

帰りの車に乗りながら、昇平に聞いてみた。
「今日は、ガードの練習、ちゃんとやったんだって?」
すると、昇平、満面の笑顔で「やった!!」と元気に答えた。
今日はみんなと一緒に出来た! という手応えが自分でも感じられて、嬉しかったのだろう。
家に帰ってからも、ここ数日の多動が嘘のように落ち着いて、以前と変わらないレベルに戻っていた。
自信がつく、ということは、こんなにも行動に影響を与えるんだろうか、と驚いてしまった。
実際にリタリンを飲んだ時刻は、昨日より今日の方が早かったわけだから、それだけ早く効果も切れてしまっているはずなのに。


保育園に入園するとき、先生方には一応、リタリンの効果などについて説明したつもりだった。
でも、入園してすでに4ヶ月が過ぎ、いつのまにか、それを改めて思い出すこともなくなっていたのだろう。
あるいは、私の説明が不足していたのかもしれない。
そう言えば、入園当時は、むしろ薬の副作用である「食欲減退」と「睡眠障害」の方を重視していたような気がする。
それで、連絡帳に改めてリタリンの効果について詳しく説明を書いたのだった。

   ☆★☆★☆

リタリンをまるでADHDの特効薬のように思っている人も多いという。
それを飲ませさせすれば、ADHDの多動や集中困難などの症状が、ぴたりと治ると思っているという。
でも、実際にはそんな劇的な効果は持っていないから、「リタリンを飲ませたのに、ちっとも効かないじゃないか!」と文句を言うことになる。

あるいは、リタリンを飲ませてさえおけば、それでもう大丈夫、と勘違いされることもある。
劇的な効き目はないにしても、それで少しずつADHDが治って行くんだろう、と。
でも、実際にはリタリンに独自の療育効果はない。ただ、一時的に症状を抑えるだけ。
そのあいだに、どれだけのことを本人に学ばせ、考えさせ、感じさせられるか。どれだけの体験を、自分のものとして身につけさせることが出来るか。
それが大事なポイントなのだ。
そうでなければ、「ずっとリタリンを飲ませているのに、あんまり効果がないみたい」ということになってしまう。
もちろん、同じようにリタリンを飲んでも、症状に対してどの程度効くか、本人がどのくらい外界の情報を受け取る能力を持っているか、という違いで、効果にも個人差は出てくるだろうけれど。

ずっと以前、ここに書いたことがあるけれど、改めてまた、感じてしまった。
「リタリンはただ、症状を抑えるだけのもの。生活の仕方が、何よりも大事なのだ」と。

[00/09/07(木) 06:00]

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