昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

家庭相談員さん

◎9月25日の記録 

 リタリン  1回目 8:15  2回目 12:30頃
 
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今日の午前中、地域の社会福祉事務所の家庭相談員という方が家庭訪問に来てくれた。
家庭相談員・・・事実上は、児童相談所の相談員さん。
この地域には独自の児相がないので、社会福祉事務所というところで総括して担当しているらしい。
11月にそこで行われる相談会に予約を入れたので、相談時の書類作成のために聞き取りに来てくれたのだった。

相談員さんは、四十代くらいの女性。親身になって話を聞いてくれる方で、とても話しやすかった。
初め、「相談会では何を相談なさいたいですか?」と聞かれて、「再来年の就学を見越して、今のうちから相談にのってもらいたいと思って」と正直に答えたら、困惑したような顔で「でも、就学は再来年でしょう? まだちょっと早いですから・・・普段の養育の仕方とか、そういう話をした方が・・・」と言われてしまった。(^_^;)

いや、養育や療育の具体的指導を聞けるならば、それに越したことはないのだ。
でも、おそらく、今私がやっていること以上に詳しい指導は受けられないだろう、という予想はあった。
とにかく、昇平くんのこれまでの経歴や今困っていることなどを聞かせて下さい、と言われて、生まれてからこれまでの出来事を聞かれるまま、順に思い出していった。

早期破水に医者も私も気がつかず、自然分娩したものの、感染症を起こしていて、生まれた次の日には新生児肺炎を起こして小児病棟へ入院してしまったこと。その影響で、生後一年は気管支がとても弱く、しょっちゅう気管支炎を起こしては夜中に喘息のような発作を起こしていたこと。ミルクの飲み方がとても下手で、ついには哺乳びんが大嫌いになってしまい、私の母乳だけしか受付なくなってしまったこと。それが私の体の負担になって、ついには病気になって入院してしまったこと。

初めて立ったのは、いつ? はいはいしたのは? 歩いたのは? そういう運動面での成長は、だいたい人並みだった。
言葉に関しては? 生後1年1カ月で、「ぶーぶー」とか「(おかあさんが)アッチイッチャッター」とか
「ワンワン」とか言っていたので、これは上の子より早く話し出すよ、と話していたら、その後いつまで立っても言葉が増えなかった。何を要求しているのか分からない、それが通じないとかんしゃくを起こして体をのけぞらせて泣いて怒る。こちらはどうしてよいのか分からない。そんな時期を経て、やがて、クレーン現象が始まった。何か欲しいものがあったり、名前を知りたいものがあったりすると、こちらの腕をつかんで対象物を取らせたり、知りたいものを示したりする。自閉児の代表的な症状なのだが、私たちは、それでも嬉しかった。昇平が何を求めているか、分かるようになったから。クレーン現象なんて言葉も知らなかったから、コミュニケーション能力が発達していく上での一過程なのだろう、と捉えて、それに対応していた。やがて、3才くらいから言葉が増え始め、だんだん、いろいろなことを話せるようになり、それに反比例するようにクレーン現象は減っていった。今は、使える単語数には限りがあるし、てにおは(助詞)の使い方もまだおかしいが、言いたいことはほぼ言葉で表現できるようになり、クレーンはまったく見られなくなってしまった。

生活面では? 困っていること・・・まぁ、ありますけれど。排泄面とか。食事の時、まだスプーンフォームも満足に使えない、とか。ごほうびシール作戦とか、手づかみ食べをしていたら、「それはおサルさんの食べ方だよ〜。昇平くんはおサルさん?」と注意したり、とか、とにかく、当面の対策はとっているところ。少しずつだけれど、効果は出ているみたいだし。
着替えは出来ますか? あ、それはほぼ出来ます。ただ、ADHDの特長として、集中して着替えが出来ないので、今は「よし、お母さんが布団をたたむのと、昇平くんが着替えるのと、どっちが早いか競争ね」なんて言いながらやっています。けっこう早く着替えて、(私もわざと布団を1枚くらい残しておいたりするのだけれど)「やったー!」なんて言いながら、ピョンピョン躍り上がって来ます。

こだわりはありますか? ・・・う〜ん、こだわりですか。いえ、あるにはあるんですけれど・・・「こだわり」ってそれを周囲が問題視しているときに出てくる言葉でしょう? 確かに、こだわっているようなことはあるんですけれど、こちらがあまり問題視していないものだから・・・う〜ん、何かあったかなぁ。
保育園で担任に聞いてみて下さい。集団生活の中では、多分、困ったこだわりを見せているかもしれませんから。(^_^;)

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そんな具合に生活面や指導の仕方をチェックしていくと、結局、養育面で聞きたいことはとりあえず何もないことが分かり、相談員さんも「これじゃ、相談することが何もないみたいですね〜」と苦笑いをした。
そこで、こちらとしては、こうやってやっている自分の養育法(療育法)が正しいかどうか、第三者にチェックしてもらいたいと思っていることと、そして何より、今から昇平に最適な学校(学級)はどこか、情報を集めて考えていきたいこと、を話し、それでようやくこちらの意図を分かってもらうことができた。
ここまで、延々1時間以上話をした。(苦笑)
とはいえ、とても熱心に話を聞いて下さる方だったし、こちらの話を聞くうちに、自分も息子さんがミルクを飲まなくて苦労した話など思い出したみたいで、そんなこんなで話が盛り上がり、けっこう楽しい時を過ごせたのだけれど。(笑)

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そうそう。この話し合いの中で、昇平は自閉的特長のあるADHDと言う診断を受けていること。
そして、実際には、自閉傾向とADHDの両方を持っている、と見て対処したほうが良いだろう、ということは、相談員さんと確認し合った。
Y先生は自閉を狭義で捉える方だから、自閉傾向という名称は出てこないのだが、現実問題、昇平が見せている行動は自閉傾向だし、行動がある以上は、自閉と同じような対処をしなくてはならない場面も多いのだ。ADHDと言われているから、自閉対策をしなくて良い、と言うことではない。
それで、11月の相談会では、自閉に詳しい心理士の先生を昇平の担当に回してくれること、その人に現在の養育法をチェックしてもらうこと、それと、就学に関して幅広く話を出きるようにすること。そんなことを相談会の目的にした。
こちらの要望がほぼ通った形で、一安心だった。(^_^A

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最後に相談員さんと別れるとき、こんな話になった。

この地域、病名の診断はしてもらえても、その後の精神的なフォローや具体的な療育指導をしてくれる人や場が、まったく、ない。本当に、どこにもない。
私(朝倉)はインターネットを通じて、同じような子どもを持つお母さんたちと連絡を取り合えるようになり、困ったとき、行き詰まったとき、すぐにアドバイスや元気をもらえたから、だから、ひとりでもここまでやってくることが出来た。
でも、大部分のお母さんたちは、インターネットなんか使えない。
ぜひ、お母さんたちをサポートしてくれる施設が欲しい。

相談員さんもそれは分かっていて、何とかしたいんですけどね〜、と言いながら、事務所に帰って行かれた。
彼女に言ったところで、何が変わるわけでもないかもしれない。
でも、こうして要求し続けるのは、きっと大事なことだろう、とも思っている。
いつかは、もしかしたらきっと、この地域にもそんなサポートセンターが出来るかもしれないから・・・。

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10月に入って運動会が終わったら、相談員さんは保育園にも昇平の観察に行ってくれるそうだ。
お母さんたちの了承を得られれば、その際、担任の保母さんにも相談会に一緒に出席されるように進めてみますが、と言われて、「ぜひ、お願いします」と答えた私。
できる限り総合的に。
できる限り、関わってくれている人たちみんなで。

そんな相談会になれば、と願っている。

[00/09/26(火) 06:03]

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