昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

入園式

◎4月2日の記録

 リタリン  1回目 8:40  2回目 13:00
 
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昇平の入園式があった。
保育園は1年ごとの契約なので、新学年になるたびに入園式が行われるのだ。
昇平もいよいよ年長さん。
「昇平くんは今度は何組さん?」と聞くと「さくら組さん!」と張りきって答える。
ニコニコと満面の笑顔で、年長に進級するのが嬉しくてたまらないのが、全身から伝わってきた。

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さて、園につくと、玄関の前に『ごにゅうえん おめでとう』と書かれたアーチが立てられ、その奥で受付をしていた。
子どもたちはそこで新しい担任と顔を合わせ、新しい教室の名札をつけてもらうのだ。
さくら組さんは・・・と見ると、あら? みお先生?
「今年もまたよろしくお願いいたしますね」と、にこやかに笑いながら、みお先生がおっしゃった。
そうか〜! みお先生は持ち上がりだったんだ〜!!

とは言え、実は、私もこれを半分くらい予想していた。
副担任で、昇平をいつも面倒みていてくれたまき子先生は、最後の日、とてもとても名残惜しそうに昇平を見送ってくれた。
「きっと、担任が代わっても、昇ちゃんの方はパッと切り替えられるんですよ。ダメなのは(こっちの方で)・・・」なんて言いながら。
でも、みお先生はとても落ち着いて進級する子たちを見送っていたので、もしかしたら? とは感じていたのだ。
変わったのは、副担任の先生だけ。
まき子先生は、今度は0,1歳児の担任になった。
まき子先生と別れるのは、母もすごく淋しいのだが、それでも、昇平をよく知っている先生が1人残ってくれたことで、一番良い進級の形になったと思っている。
昇平はこれから、自分の力でやり遂げていくことを覚えていかなくてはならないから、そのためにも、今まで母親代わりに面倒を見てくれていた先生を、わざと別のクラスに移したのかな、などと考えたりもした。
ちなみに、他のクラスでも、担任の半分は持ち上がりだった。

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入園式が始まるまで、新しい教室でビデオを見ながら待った。
新しい教室。新しいロッカー。新しいカバンかけ。
壁にはかわいい海の絵が貼ってあって、子どもたちの誕生日が書き込まれている。
昇平は、新しい教室が珍しくて、ウロウロ、チョロチョロ・・・・・・するかと思ったら、まったくそんなことはなかった。(^_^;)
もちろん、パニックも起こさなかった。

新しい教室を、しばらく珍しそうに眺め回してはいたが、母に言われると、自分の名前のフックにカバンをかけ、あとは、他のお友だちと一緒に座っておとなしくビデオを見ていた。
新教室は元の教室の隣だったから、以前から時々入ったことがあったのかもしれない。
でも、それにしても・・・。
周囲には子どもたちのお母さん、お父さんたちが立っている。
新しく入ってきた子どもも少しいるので、その子たちが親から離れられないのはしかたないとしても、持ち上がりの子たちの中にも、新しい雰囲気に不安を感じて親にべったりでいる子や、甘えてそばから離れられない子がけっこういたのだ。
昇平は、時たま、立っている私の方を見て、視線が合うと、それでもう安心して、またビデオを見ていた。

時間が来て、「入園式が始まります。教室のお友だちは、お遊戯室に集まりましょう」というアナウンスが流れると、昇平はぱっと立ち上がり、私の手を引いて「行こう」と言った。
これには、本当にビックリ!
話し手が見えなくても、話しかけた声をちゃんと聞き分けるようになっていたのには気がついていたが、スピーカーから流れる放送まで、ちゃんと聞き取れて、行動できるようになっていたとは思わなかったのだ。
私の手を引いてお遊戯室に連れていく様子も、「ぼくが連れていって上げるからね」というような調子だった・・・と感じたのは、親の欲目だろうか?(笑)

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入園式は、組ごとに椅子に座り、保護者はその後ろの椅子に座る。
今年から入園する子たちもたくさんいるので、泣いている子、大声を上げる子、さまざまで、もう本当に賑やか!(笑)
昇平は、さくら組の椅子に座ると、きちんと前を向いていた。
泣き声が聞こえても、まるで平気。
30分に渡る式の間、私の方を振り向いたのは、たったの3回。あとは、ずっと前を向いて座り続けていた。もちろん、立ち歩きもまったくしなかった。
むしろ、他の子たちの方が飽きてしまって、あっち向きこっち向き、椅子に足をのせてみたり、手わすら(これって、方言?)したり・・・とお行儀悪い。
以前から、お集まりがきちんとできるようになった、とは聞かされていたが、目の当たりにして、それは本当だったんだ! ともう、ビックリビックリの連続だった。

園児の名前を読み上げるときに返事ができなかったり、全員で歌を歌うところで、ほとんど歌っていなかったり・・・と、よく見ると、まだやっぱり問題は残っていたけれど、それにしても、本当に皆と同じように行動できるようになっていた。
保護者総会のために、親がその場に残って、子どもたちだけ教室で待つときにも、昇平は落ち着いて、他の子たちと一緒にさくら組に戻っていった。
去年の入園式では、大泣きして、先生に抱きかかえられて連れられていったよなぁ、と懐かしく(?)思い出してしまった。(^_^;)

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総会の後、新教室で担任の説明を聞いて、それでこの日の保育は終了した。
私は最後まで残って、みお先生と、新しく担任になったみち子先生にご挨拶した。(今度は、どっちも「み」がつく先生なのだ!)
みお先生からは「お母さんからご配慮いただいたのに、担任のことを黙っていて申し訳ありませんでした」と言われてしまった。謝っていただくようなことではないのだけれど・・・。(^_^;)
みお先生が、さらに言われる。
「でも、今の昇ちゃんなら、当日に新担任を教えても、きっと大丈夫だと思っていたんです。・・・やっぱり、大丈夫でしたね」
先生の笑顔が、なんだか、とてもまぶしかった。

まき子先生の代わりに入ったみち子先生と、昇平を引き合わせた。
「まき子先生は、赤ちゃん組の先生になったんだよ。今度からは、みち子先生が昇平くんの先生になるんだって」
「みち子先生も、とっても優しいよ」とみお先生も口添えする。
「昇平くん、よろしくね」とみち子先生が言うと、昇平、小さな声で「よろしくおねがいします」と言った。
それまで、ほとんど平然としていた昇平が、その時だけ早く帰りたがっていたのが、ちょっと印象的だった。
新しい先生に緊張していたんじゃないかなぁ。(笑)

帰宅してからは、さすがに疲れが出たようで、午後はずっと、部屋でおとなしく遊んでいた。

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とにかく、昇平の成長ぶりには驚きの連続の入園式だった。
正直、ここまで集団生活に慣れているとは思わなかったのだ。
もしも、これがよその子どもで、そのお母さんから「実はうちの子はADHDって言う障害を持っているんですよ」なんて言われても、とても信じられないだろうな、とも思った。

昇平の成長は、本当に嬉しい。
けれども、同時に、私は戸惑っている。
昇平が、最近、あまりにも急速に成長してきているから。
私はそれに驚いているばかりで、これからどうしていったらよいのか、その見通しがよく立てられずにいるのだ。

今までは、昇平が集団行動をとれることが目標だった。
他の子たちと同じように、座るべき時には座り、活動するべき時には同じ活動をし、言われたことを聞き分け、自分の役割を認識することを目指して、やってきた。
基本的生活習慣を身につけることが、もうひとつの大きな目標で、食事、排泄、着替え、お風呂や洗面、歯磨き・・・といったことを、ひとりでできるように、と働きかけてきた。
1つクリアするのに、手間も時間もかかったが、それでも、昇平は1つ1つ山を乗り越えてきた。
そういうペースの子なのだろう、と思っていた。
それが、今になって、急激にペースが上がり、気がついたら、今までの目標はほとんどクリアしてしまっていたのだ。

新たな目標を立てなくてはいけない。
新たな目標・・・あった! お友だちとの関わりを深めること!! ・・・でも、これは主に保育園で実践していくことだ。
それ以外に、家庭で目指すべきことは・・・・・・???
私は、嬉しい反面、心の中では本当にあわててしまっている。

[01/04/03(火) 07:21]

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