昇平てくてく日記
幼児〜小学校低学年編
素語り
◎6月12日の記録
リタリン 1回目 8:30 2回目 12:00
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私は毎晩、寝る前に昇平に素語り(絵本などを見ずにことばだけで物語を聞かせること)をしている。
もうかれこれ1年近く続いているだろうか。
そもそも、素語りをするようになったのは、主治医のアドバイスがあったからだった。
3歳半で初めて発達相談会に行き、ことばや発達が送れていることを相談したとき、「ことばの発達を促すには、どんなことをしていったらいいでしょうか?」と尋ねたら、「物語を聞かせるといいですよ。それも、目で見るよりも耳で聞かせるような形で。昔話や童話のテープなんかがあるといいですね」と言われたのだ。
けれども、当時の昇平はまだ耳で聞くだけでの物語にはまるで反応せず、主治医のアドバイスはそのまま1年あまり放置されることになってしまった。
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ところが、保育園に入り、5才が近づいてきた頃から、だんだん昇平が物語に興味を示すようになってきた。
けれども、絵本を見せて読み聞かせようとすると、視覚からの刺激が強すぎて、絵に夢中になってしまい、肝心の物語を聞かなくなるような感じ。部屋が明るいと、それだけ他の物にも目移りしてしまって、物語に集中しないし。
かといって、物語のテープなどは高価で、なかなか買い揃えることもできない。
というわけで、寝る前に部屋を暗くして、母が記憶を頼りに素語りをする、というスタイルが定着したのだった。
ところが、ところが。
昇平はことばや経験が少ないために、ことばで物語を聞かされても、それがどんな場面であるか想像することがうまくできない!
「桃太郎」や「浦島太郎」などの有名どころの物語をしても、なかなか興味を持ってくれないのだ。
そこで、主人公をぐっと昇平の身近なものに持ってきて、勝手に物語を作ってしまうことにした。
当時、昇平は「ポケモン」や「とっとこハム太郎」に夢中。
そこで、主人公はピカチュウにして、お弁当を持ってハイキングに行ったとか、海に海水浴に行ったとか、ごく短くて簡単なストーリィで聞かせることにした。
そういう形だと昇平も興味を持って聞いてきて、もっと友だちはいないのか、と言いだしたので、登場人物もピカチュウの他に、ピチュー、ハム太郎、トラハムちゃん、リボンちゃん、最後にはカービィまで登場して、とても賑やかなご一行さまになってしまった。
彼らのすることもさまざま。山にキャンプに出かけたり、お料理を作ったりと、だんだん話が複雑になってくる。(つまり、そういう内容を要求されるようになってきた、ということ。)
その頃、一番受けたのは、「お化け屋敷に入ったお話」。
保育園の夏祭りでお化け屋敷を体験したあとで作って聞かせた物語なのだが、昇平はことに気に入って、その後もなんどもリクエストされたのだった。
こんなお話。
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ある日、ピカチュウとピチュウとハム太郎とリボンちゃんととらハムちゃんが、お祭りに行って、お化け屋敷に入りました。
一番初めはピカチュウが入りました。中は真っ暗で、冷たい風がすーっと足元を吹き抜けていきます。
暗闇の中から「こんばんは〜」とお化けが声をかけました。
ピカチュウはとてもビックリしたけれど、怖いのをぐっと我慢して、「こんばんは」と言うと、頑張って出口まで歩いて、お化け屋敷を出ました。
次に、ピチューが入りました。ピチューは怖かったので、しっかり目をつぶって、出口まで一気にダダダダと走り抜けました。途中でお化けが「こんばんは〜」と声をかけましたが、ピチューは全然気がつきませんでした。(笑)
次はハム太郎の番です。中にはいると、お化けがまた「こんばんは〜」と声をかけました。
ハム太郎は、「お化けめ、やっつけてやる」と言ってお化けをキックしたりパンチしたりかみついたりしました。お化けは悲鳴を上げて「こらこら。お化け屋敷のお化けはね、人を脅かすのが仕事なんだから、パンチしたりキックしたりかみついたりしてはダメなんだよ」とハム太郎を叱りました。
最後はリボンちゃんとトラハムちゃんです。ふたりはとても怖かったので、一緒に手をつないで入りました。
すると、またお化けが「こんばんは〜」と声をかけました。リボンちゃんとトラハムちゃんは大声で泣き出してしまいました。
すると、外にいたピカチュウとピチューとハム太郎が、それを聞いて急いで助けに飛び込んでいきました。
リボンちゃんたちのそばにいたお化けに、パンチして、キックして、かみついて、ひっかいて、電撃くらわして、やっつけてしまいました。
あちこち怪我をしたお化けは、泣きながらピカチュウたちに言いました。
「お化け屋敷のお化けはね、人を脅かすのが仕事なんだよ。だから、パンチしたり、キックしたり、かみついたり、ひっかいたり、電撃くらわしたりしてはダメなんだよ」
ピカチュウたちは、お化けに「ごめんなさい」と謝りました。
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・・・とまぁ、こんな物語だったのだが。(^_^A
当時、昇平は人に乱暴することがあったので、それに対する注意も一緒に物語に折り込んであったりした。
(でも、あんまり効果なかったかも・・・苦笑)
その後、このメンバーでの創作話のネタが尽きた頃には、昇平も普通の物語が楽しめるくらいに理解力が上がっていたので、今度は普通の昔話を聞かせた。
「桃太郎」「浦島太郎」「赤ずきん」「白雪姫」「七匹の子ヤギ」「ブレーメンの音楽隊」「さるかに合戦」「花咲か爺さん」「海の水はなぜしょっぱいか」「頭に柿の木が生えた男の人の話」etc.etc.
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こんなふうに書くと、なんて熱心なお母さんだろう、と思われるんだろうな。(^^A
でも、実際には違う。
子どもに話して聞かせながら、実は、一番楽しんでいるのは私自身なのだ。
私はお話が大好きだし、うろ覚えのところでも適当に演出して話して聞かせることができてしまう。それは、やっぱり私が物書きだからなんだと思う。
そうやって、私が話した物語に子どもが夢中で聞き入ってくれる。そのことが楽しくて、嬉しくて、それでいつの間にか一年も続いてきたことなのだ。
昇平の聞き取りの力が伸びてきたのは、嬉しいおまけのようなもの・・・と言ったら、主治医に怒られちゃうかな? (^_^;)
最近では、「西遊記」つまり孫悟空の話を聞かせている。
この物語はゲームの世界に共通するものが多いから、昇平も喜んで聞いている。
初めの日は、孫悟空誕生編、次の日は三蔵法師にあって弟子になる話、三晩目の昨夜は旅をして猪八戒や沙悟浄を仲間にする話。
さて、今夜からはついに各地の化け物を退治していく話になるのだけれど、いかんせん、母は金閣銀閣の話くらいしか、よく知らない。
さすがにこの物語は適当にアレンジすることも難しいから、いよいよあんちょこを手に入れないとダメかなぁ、と考えていたりする。
今日、町に出かけたら、本屋に回ってみようっと。(笑)
[01/06/13(水) 08:37]