昇平てくてく日記
幼児〜小学校低学年編
「ドアを閉めろ!」
◎6月27日の記録
リタリン 1回目 8:30 2回目 12:30
☆★☆★☆
「ドアを閉めろ!」「ドアを閉めろったら!!」
お兄ちゃんのヒステリックな声が2階から聞こえてくる。続いて、バタン! と乱暴にドアを閉める音。
実はこれ、2階でクーラーをつけると必ず起こる出来事。
我が家の小6のお兄ちゃんは、暑さ寒さが嫌い。特に暑さは大の苦手で、蒸し暑いとそれだけで不快指数が急上昇して機嫌悪くなってしまう。
そこで、寝室にクーラーをかけて、そこでテレビを見たり宿題したりしているのだが、そこに昇平が出入りする。
昇平だって涼しいのは大好き。でも、なにぶん、じっとしていられない性分だから、頻繁に部屋を出たり入ったりする。そのたびにドアを開けっ放しにするので、お兄ちゃんから「涼しいのが逃げるから閉めろ!」と言われてしまう。ところが、昇平はドアを閉めようとしない。そこで、冒頭のようにお兄ちゃんがヒステリーを起こし、怒りながら自分でドアを閉めに来る・・・ということが起こるのだった。
何度言われてもダメ。私がお兄ちゃんの言っていることを繰り返してやっても、やっぱり昇平はドアを閉め忘れる。
そこで、部屋を出てきたところをつかまえて(もちろん、例によってドアは開けっ放し。お兄ちゃんがかんしゃく起こしながら閉めていった。)聞いてみた。
「昇平くん、どうしてドアを閉めなくちゃいけないか、分かる?」
「逃げるから」と昇平。あ、一応分かっているんだ。
「何が逃げるの?」と重ねて聞いてみる。
「お兄ちゃん」
思わずずっこけました。(笑)
なるほど、考えてみたら、部屋の中に「見える」もので逃げそうなものといったら、お兄ちゃんしかいません。でも、そのお兄ちゃんは、部屋の真ん中に陣取ってテレビを見ていて、とても逃げ出しそうにない。だから、ドアを閉めなかった・・・ということだったらしい。(^_^;)
そこで、こんなふうに聞いてみた。
「このドアを開けると、中から何が出てくる?」
「涼しい風」
「涼しい風が出て行っちゃうと、どうなるの?」
よく分かっていない雰囲気。
「部屋の中は暖かい? 涼しい?」
質問の意図が分からなくて混乱してきているのか、暖かい、なんてつぶやく昇平。そこで、昇平を部屋の中に連れていった。
「どう? 暖かい? 涼しい?」
「涼しい」
「そう、涼しいよね。このお部屋の中には、涼しい空気がいっぱい入っているの。でも、この部屋のドアを開けたら、この涼しい空気はどうなると思う?」
「逃げちゃう」
「うん、逃げちゃうね。部屋の涼しいのがぜ〜んぶ逃げちゃったら、部屋はどうなると思う?」
「暑くなっちゃう」
「その通り! 昇平くんは、暑いのと涼しいのと、どっちが好き?」
「涼しいほう」
「じゃあ、涼しい空気が逃げ出していかないように、ドアはちゃんと閉めようね」
「はーい」
「部屋を出入りするときも、涼しい空気ができるだけ逃げていかないように、急いで出入りしようね」
「はーい」
とても良いお返事が返ってきた。
そして、その後からは、部屋を出入りするたびにきちんとドアを閉めるようになった。
まぁ、ADHDっ子らしく、行き先に夢中になって閉めるのを忘れることは時々あるけれど、閉め忘れの回数はぐんと減ったのだった。
☆★☆★☆
「涼しい空気が逃げるから閉めろ」と言われても、何のことか分からない子は、他にもけっこういるのかもしれない。
ただ、閉めろ、と言われるから閉めるようになる。
ところが、昇平は閉める必要を感じなかったものだから、「閉めなくちゃいけない」ことは分かっていても、ついついそれを忘れてしまって兄から怒られていたのだ。
そんな彼だって、手順を踏んで、彼に分かることばと論理を使って説明すれば、ちゃんと理解できるようになるし、理解すればそのことをきちんと実行できるようになる。
「これくらい分かって当然だろう」などと考えないで、一度スタートに戻って、分かっているかどうか確認することも大事なんだなぁ、なんてことを考えてしまった。
ちなみに、「閉めろ!」と怒鳴っていた兄も、こんな私達のやりとりを見て、昇平という子どもを改めて理解したような雰囲気だった。それまでのとげとげした険悪な表情が消えていたから。(笑)
この次、同じような問題が起こったときには、兄自身が自分のことばで昇平に説明できるようになるかもしれない。・・・甘いかな?(笑)
[01/06/28(木) 05:48]