昇平てくてく日記
幼児〜小学校低学年編
花火大会で
◎8月18日の記録
リタリン 1回目 7:45 2回目 11:30
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15日に、初めて町の花火大会に出かけて、間近で花火を見てきた。
昇平は屋台を次々にのぞき込んでは、そこで売っているものを買いたがったり、ゲームをやりたがったり。
テンションがものすごく上がっていて、突っ走らないように押さえるのは大変だったけれど、とても楽しそうで微笑ましかった。
ADHDの子どもはすごく子どもらしい子どもだと言われるけれど、本当に思う。
お兄ちゃんは小さい頃からそういう人混みが苦手だったし、並ぶ屋台にもすごく慎重で、品定めをして買ったり見たりということがなかなかできなかった。祭りに出かけても「早く帰ろう」とか「疲れた」とばかり言っていたし。
この日も、人混みや昇平のチョロチョロした様子にたちまち機嫌が悪くなって、全然祭りを楽しめない。「損な性分だねぇ」と思わず母はつぶやいてしまった。
でも、目の前で見る花火は、本当に綺麗だった。
昇平は今までも花火が好きだったけれど、空いっぱいに広がる大きな花火には本当に大喜び。
「おお〜!」とか「きゃ〜!」とかいいながら眺めていた。
花火会場で見る花火は音とのタイムラグもなく、光と音が同時に起こる。
♪ドンとなった花火がきれいだな♪ という歌のイメージが、昇平の頭の中にもかなり鮮明に浮かぶようになったんじゃないかな。
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ところが、花火からの帰り道。
昇平が落とし物を拾おうとかがんだところに、女の人がつまづいてしまった。
雑踏の中で小さな昇平が見えなかったのだ。
その拍子に、昇平が手に持っていたかき氷のカップが道路に落ちて、中身がほとんどこぼれてしまった。
女の人は「ごめん、ごめんね」と謝ってくれたけれど、大事に食べていたかき氷を無くしてしまったものだから、昇平はすごく怒って「やっつけてやる!!」と息巻く。あわててその場から引き離したが、「おうちに帰ったらかき氷器で新しいのを作って上げるからね」などと言い聞かせても怒りはおさまらず、ずっと興奮していた。
と、昇平が「手を離して」と言った。(迷子を避けて、ずっと手をつかんでいたのだ)
混雑の少ない場所まで来ていたので、ここなら大丈夫だろう、と思って手を離すと、昇平はたたたと走り出して、3メートルほど先を歩いていた、別の女の人の後ろ姿にいきなりキックをした。
かき氷をこぼされた怒りを、見知らぬ女の人に対して発散したのだ。
幸い、実際には寸止めだったのか、当たってもごく軽かったのか、女の人は振り向きもしなかったのだが、私は許さなかった。
「そんなことしていいの!?」と叱りつけて、頭をごつんと2発叩いた。
・・・意外に思うかもしれないけれど、私だって叱るときに手を出すことはある。
ただ、滅多にやらないだけ。
子どもが本当に悪いことをしたときには、問答無用でごつんとやる。それは絶対にやってはいけないことだというメッセージを伝えたいから。それから、ことばで言い聞かせる。
たいていは、人に危害を加えたとき(加えようとしたとき)だが、たぶん、他人様のものを盗んだりしてもやっぱり手を出して叱ると思う。幸運なことに、これまでそういう機会はなかったけれど。
でも、これに関しては賛否両論だろうな。(苦笑)
とにかく、頭を叩かれて昇平は「痛いよ〜」とべそをかく。
「何もしていない人にキックするのは良いこと? 悪いこと?」と尋ねると、「わるい」と答える。ちゃんと物事の善悪は分かっているのだ。
「そう、悪いことだよ。だから、何もしていない人にキックしたりしちゃダメなんだよ」
と言い聞かせると、昇平は「わかった」と答えたものの、気分は安定しない。足どりも遅れがち。
おんぶしてやったら、それで機嫌が直って、私の背中にぺたんと頬を押しつけて静かになった。
うん。キミが疲れていたのは分かっていたのよ。大事なかき氷をこぼされて悔しかった気持ちもね。
でも、それでもやっぱり、まるで関係のない人に八つ当たりで攻撃するというのは、絶対にしてはいけないことなの。だから、ごつんとやったんだよ。分かってね。
心の中で昇平に話しかけながら、車を停めた駐車場まで歩き続けた。
空には色とりどりの花火が賑やかに打ち上げられていた。
花火大会の終わりの合図だ。
良いことも悪いことも一緒にたくさん体験して、そうやって子どもたちは成長していくんだろうな。
静かになった空を見ながら、そんなことを考えていた。
[01/08/19(日) 07:14]