昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

小児科で

◎10月10日の記録

 リタリン  1回目 8:30  2回目 12:30
 デパケン  1回目 8:30  2回目 19:30

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10月10日は晴れの特異日だと言うけれど、今年は朝から本格的な雨降り。
10日が体育の日でなくなったから、今年は雨が降ったんだろうか・・・まさか。(笑)

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さて、急に寒くなったためか、まわりでは風邪ひきさんが急増。扁桃腺が弱い昇平も、火曜日の朝から風邪気味になってしまった。
熱はないのだけれど、鼻水が出て、咳が少し。そしてなにより、がらがらのしわがれ声。
ここで無理をさせると熱が出て3日は下がらなくなってしまうので、大事をとって保育園を休ませ、病院へ連れていった。

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昇平のかかりつけは、私の母くらいの年齢の女医さんがやっている、小さな古い病院。
病気を治すのは本人の持つ免疫力だ、というのが持論で、薬にはできる限り頼らない主義の先生。
そんなだからか、患者の数はあまり多くはないけれど、薬を大量に出す病院で長い時間待って、診察はわずか1分という経験を、お兄ちゃんのときにしているので、私としてはこっちの病院の方が安心していられる。落ち着きのない昇平には、待ち時間が少なくてすむのもありがたいし。(^_^;)

この先生には昇平がADHDであることを教えてあるのだけれど、初めてその話をしたときに、逆に驚かれてしまった。「私は昇平ちゃんがそんな(障害のある)お子さんだとは思っていませんでした。むしろ、とても子どもらしい子どもさんだと思って見ていたんです」と。
こう言われたとき、私は、その先生を「無知だ」とは思えなかった。むしろ、これまでの日本でADHDの子どもたちがどんなふうに受けとめられていたか、それを見せられたような気がした。
子どもは元気がよくて落ち着きがなくて飽きっぽいのが当然と思われ、人一倍落ち着きのない子どもだって「そのうち大人になれば落ちつくだろう」とのんびり受けとめられ、周囲の大人や子どもたちから適切な導きを受けることができ、勉強以外にも自分を発揮できる場面がたくさんあった時代。
自然がたっぷりあって、時間もたっぷりあって、有り余るエネルギーを、太陽が沈んで真っ暗になるまで思う存分発散することができた時代。
そんな時代には、ADHDなんて障害名も必要なかったのかもしれない。
だって、誰もそれを「困ったことだ」とは思っていなかったのだから。誰も困っていなければ、それは「障害」にはならないのだもの。

もちろん、今は昔とは時代が違うから、彼らもその特性を「子どもらしい」と見逃してもらえることが少なくなってしまった。だからこそ、今日ではADHDが問題視されるようになったのだろう。
時代の流れをどうこう言っても、それはどうしようもないし、私たちは今に生きるしかないのだから、今のこの時代の中で「どうやって生きていくか」を考えるしかないのだけれど。
でも、昔は良かったんだなぁ、とふと思う瞬間がある。

今回、診察に行っても、やっぱりそう思った。
昇平は風邪気味なだけなので、元気があって、診察中もじっとなんてしていない。
私と先生が話している間、診察室をあちこち見て回り、閉め切ってあるドアの向こう側はどうなっているんだ、と大声で問いかけ、母の気を惹こうとして、診察台と壁の間の隙間に入り込んで「出られないよ! お母さん、助けてちょうだい!」とくり返し呼び続ける。
でも、先生は平気の平左。「待っててちょうだい。お話が終わったら、お母さんの代わりに先生が助けに行くからね」と話しかける。
昇平「はーい」とお返事。・・・そう、この先生のことばは、昇平に届いている。
でも、いざ先生が「さあ、先生が助けに行くからねー!」と立ち上がったら、昇平は、はまっていた場所から大あわてて飛び出してきた。先生も看護婦さんも私も、それを見て大笑い。
しかも、先生が「あら、先生が助けてあげようと思ったのに、自分で出て来ちゃったの?」と言うと、また急いで診察台の後ろに戻っていく昇平。・・・いや、笑った笑った。
「やっぱりお母さんが一番なのよね。お母さん、お母さんって呼ばれている時代が一番いいのよ」
先生が笑いながら、しみじみと言う。
昇平は、先生に手をつかんでもらって引っぱり出してもらうと、その後はすっかりおとなしくなって、診察室を後にした。

診察室で騒いでも叱られない病院。昇平の心に届く声で話しかけてくれる先生。
当たり前の子どもを診るように当たり前に診察をされることが、大丈夫、お子さんはちゃんと成長して、いつか必ず一人前の大人になっていけますよ、と言われているみたいで、癒される思いのする場所。
「ゆっくり大人になっていっていいんだよ」と子どもたちにもその親にも言ってくれるような、こういう場所が、これからもあり続けて欲しい。できれば、もっと増えていって欲しい。
そんなことを考えてしまった、今回の診察だった。

I先生、まだまだお元気で診察を続けて下さいね。

[01/10/11(木) 05:35]

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