昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

情緒障害児学級を見学する

◎12月17日の記録

 リタリン  1回目 8:30  2回目 12:30
 デパケン  1回目 8:30  2回目 19:00

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昇平が入級を勧められている情緒障害児学級を見学に行った。
その前の晩、昇平が突然「虫歯が痛い」と大泣きし、当日の朝にはお兄ちゃんが38℃を超える熱を出し、歯医者と病院をかけ持ちしながらの見学だったので、なかなかハードだったけれど「女は愛嬌、女は根性!」。元気を出して回ってきた。(笑)

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我が町では情緒障害児学級は1つの小学校にしかない。しかも、まだできて2年目。けれども、担任は自ら希望して情緒障害児の担当を買って出た先生だというし、教頭先生もLD児の教育などにとても熱心に取り組んでいる方と聞いていたので、ひそかに期待していた。

9時半の約束が、病院に行ってきた関係で10時すぎになり、ちょうど2校時目の終わりから見ることができた。
子どもの数は3人。今のところ全員がADHDらしいが、そこに非ADHDの子も一人二人混ざることもあるという。障害の種類や診断のあるなしにかかわらず、スペシャルニーズを持つ子どもたちを受け入れられる場所であるらしい。なんか良いなぁ、とまず思った。

教室自体は・・・古い。(笑)
学校全体がわりと古い建物なので、これはしかたがない。
1階の廊下のちょうど真ん中あたりに、いわゆる知恵遅れの子どもたちの特殊教室と並ぶ形で配置されている。その両側は普通教室。孤立感や閉鎖性はまるでない。これはグッド。
教室の中を見回すと、色紙で作った鎖やステンシル風のクリスマス飾りが窓や鴨居を飾っていて賑やか。これは先日クリスマス会を開いたばかりで、その飾りを残してあるからだそうだ。普段は、あまり余計な飾りはしないようにしているという。

前の黒板に、今日の授業(国語と算数)の流れが板書してある。その左わきのほうには、一日のスケジュールの流れが書いてある。複式学級なので、子どもの学年によってスケジュールが変わる部分があるのだが、そこには生徒の名前のマグネットシートが活用してあった。
黒板の右わきには、普通よりずっと大きくてはっきりした時間割表。
子どもに一日の流れが読みとれる工夫が随所にされている。うん、いいな。
特徴的だったのは、校庭に面したガラス戸に常にカーテンが引かれていたこと。
ADHDの子どもをお持ちの方にはピンと来るだろう。彼らは視覚聴覚的な刺激に過敏に反応する。窓の外の音や光景に心奪われて、授業に集中できなくならないよう、カーテンを引いているのだ。

教室の後ろには、畳を敷いたプレイコーナー。ブロックやぬいぐるみ、水で書けるらくがきシートなどのおもちゃがある。本もたくさんある。休み時間には子どもたちはここで遊ぶことができる。
教材ソフトの入ったパソコンもあった。早く課題をやり終えた子どもが、先生からCD-ROMをもらってやっていたが、それはその子への「ご褒美」のように見えた。
大きな姿見も置いてある。そこには、自分の姿を朝、昼、帰りに3回チェックするように書かれた紙が貼ってある。チェックするポイントもちゃんと書かれている。髪の毛、制服、シャツのすそがちゃんと入っているか、口のまわりは汚れていないか、など・・・。

そして、子どもたちの机は、先生の机を中心に取り囲むように、半円形に置かれていた。
先生から子どもたちへの距離は、皆同じ。すぐ目の前。
担任は男の先生だが、子どもたちのことばに良く耳を傾け、その子ひとりひとりの必要に応じて、適切な指示や指導を与えている。
後ろで見学している「よそのおばちゃん」が気になってしかたのない子には、静かな声で、しかしはっきりと「お話をよく聞いてね」と呼びかけて注意を向けさせる。
用事があって他の先生にお願いをしに行かなくてはならない子には、まず担任の前で言うべきことばを練習させ、それができてから、実際にお願いにいかせる。子どもの方でも、『なんて言って頼んだらよいのかな』という不安顔が、自信に満ちた顔つきになって、元気良く教室を飛び出していく。
焦ってしまうのか、それとも昇平のように話し言葉がなかなか出ないタイプなのか、話し言葉が不明瞭な子もいたが、その子の話も先生はていねいに聞いて、ちゃんとしたことばにまとめてフィードバックしていた。自分の話をきちんと受けとめてもらえて、その子も嬉しそうな顔。

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授業そのものも、実際に体を動かして行うものと、プリントワークを組み合わせて、適度に動きを出しながら組み立ててあるし、デジカメとテレビを繋いだ視覚的授業を行っていた。プリントも、個人の能力に応じた内容と分量になっていた。
・・・が、もうこれ以上書く必要もないだろう。
とにかく、ありとあらゆる部分で、ADHDをもつ子どもたちのニーズに合わせた教育を目指した教室なのだ。
担任は、もともとは普通学級の先生だったのだが、特殊教育について熱心に勉強しているのは、教室の中を見まわしたただけでよく分かる。
勉強したことを、即子どもたちのために生かそうと努力している先生なのだ。

私が見学していた時間は1時間半程度だったけれど、もうそれで十分だった。
昇平には、この学級が合っている。
この学級ならば、間違いなく、昇平に合わせた指導をしていってくれる。
学習だけでなく、今の彼になにより必要なソーシャルスキル・トレーニング(社会性の訓練)までフォローしてもらえるに違いない。
子どもたちが皆明るい表情をしているのも嬉しかった。
きっと、昇平も来春から同じような明るい顔で毎朝学校に通えることだろう。

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教室を出て廊下を歩いていると、各教室の前には給食が届いていて、良い匂いが廊下中に漂っていた。
時刻はちょうど12時。どんな子どもでも一番気持ちが落ちつかない時間帯。
低学年の子どもたちはもう待ちきれないでいるのだろう。ざわついた教室から、女の先生のちょっとヒステリックな声が聞こえてくる。
「静かにしなさい!!」

これが昇平だったら、いくら叱られたって、どなられたって、きっと効果はないな、と思った。
たとえ、その声で騒ぐのをやめたとしても、何故叱られたのかが理解できていないから、また同じような行動をとるのに違いない。
静かな声で良いから、どうして今静かにしていなくてはならないのか、きちんと説明して注意しなくては、彼には納得できないのだ。
昇平がそういう子だと理解してもらえれば、普通学級でもそういう対応はできる。
だけど、現実問題として、それを普通学級で行うのは、まず不可能だ。
私が通りかかった学級のほうが、ごく普通の教室の光景なのだから。
だとしたら。
今現在の昇平が必要としているものを、最大限に与えてくれそうな教室を、私たちは選んでやるべきなのだろう。

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「来年の春から、よろしくお願いいたします」
玄関に見送りに出てくださった教頭先生に、私は頭を下げたのだった。

[01/12/19(水) 14:34]

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