歯医者・６

◎１月７日の記録

　リタリン　　１回目　8:00　　２回目　12:00
　デパケン　　１回目　8:00　　２回目　19:00

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先の治療から１日間をおいて、また歯医者があった。
歯の神経を麻痺させる薬を交換する関係で、間隔が近かったのだ。

折り紙をし、ポケモンのアニメを見ながら待っていた昇平、呼ばれるとちょっと不安そうな様子をしながら治療室に入っていった。
そして、椅子に座る前から先生に「虫歯、５匹やっつける？　ぼく、５匹全部やっつけるよ」と言う。
そう。前回の治療の後で描いた絵のことを言っているのだ。
治療の内容を説明するのに、「少し削って虫歯ばい菌が２匹とれたけれど、まだ５匹残っているよ。ボスも残っているよ。だから、また削ってもらって残りの虫歯ばい菌をやっつけようね」という話をしたのだった。

もちろん、先生には「虫歯５匹」がどういう意味かは分からないので、こういうわけで、と私が説明する。
つまり、昇平は今日残りの治療を全部済ませたい、と言いだしたのだ。
椅子に座ると、説明の絵を描いたメモ帳がほしい、と言うので渡すと、それを眺めながら、口を大きく開く。ものすごく素直で積極的な態度で、母も先生もちょっと驚く。

だが、いざ先生が何かを始めようとすると、やっぱり手元が気になってそちらを見てしまう。そこで、「先生が何をするのか、お母さんが教えてあげるからね」と言って、実況中継をすることにした。
これは、療育掲示板で恭子さんからいただいたアイディア。ありがとう、役に立ちました！
「先生がドリルを手に取ったよ」「歯を削るよ」「削っているよ。わ〜、お利口だね！」「虫歯がとれているよ」
私が実況中継すると、昇平もちゃんと前を向いて、おとなしく治療を受けていた。
先生は、今日も少しだけ削って「慣らし」をするつもりだったらしいが、昇平があまりちゃんとした態度でいるので「大丈夫だ。これなら虫歯に勝てるぞ〜」と話しかけながら、本格的に削っていた。
そのうち、神経を麻痺させる薬のあまり効いていない場所にふれたのだろう。昇平が一瞬顔をしかめたのが見えたが、それでも騒ぎもせず、素直に治療を受け続けていた。

信じられな〜い！！

母はもうびっくり。先生もすっかり感心していた。
「うん、大丈夫だ。虫歯に勝てるぞ。昇平くんだって、虫歯が痛いのはイヤだもんなぁ」と先生が話しかけると、「うん」と返事までする。わ〜っ、これは本当にどうしたこと〜！？？（笑）
とうとう、昇平はその日できる限りのところまで虫歯を削ってもらい、また、神経を麻痺させる薬を詰めてから、歯の穴をふさいでもらったのだが、最後の最後まで、全く騒ぐこともなく治療を受けることができたのだった。

治療室を出るときには、台の上にのっている薬や道具を珍しそうに眺めたり、テーブルの上の歯形に興味を示したりと、余裕たっぷり。
きっと、自分からきちんと治療を受けられた、というのが自信になっていたんだろう。

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待合室に戻ってから、先のメモ帳の絵に、もう２匹虫歯ばい菌をやっつけた絵を描き加えた。
残りの虫歯は、子分が３匹、ボスが１匹。
ラスボスを倒すには時間がかかると相場が決まっているのだから、これでもう数回分の治療は確保できたことになる。（笑）

夜、歯磨きの仕上げをしながら「右の虫歯を全部やっつけたら、左の虫歯もやっつけようね」と話しかけると「うん！」と張り切って返事をした昇平。そして、こんなことを言った。「右にいるのは、虫歯の王様。左は虫歯の女王さまだよ」
う〜む、なるほどね。

その日の夜は、母が中学校の役員選出の集まりに出かけたし（この地区では、今からもう中学校の役員を決めるのだ）、兄はバレーの練習だったので、１時間あまり、昇平は２階にひとりきりになったのだが、おばーちゃんが様子をのぞきに行くと、昇平はゲームをしながら「おばあちゃん、ぼく一人で遊ぶから下に行ってていいよ」と言ったらしい。
歯医者さんでの出来事が、よっぽど自信につながったのだろう。
部屋を散らかすこともほとんどなく、最後の最後までほんとにお利口さんな夜だった。

[02/01/10(木) 05:52]