昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

ADHDとスケジュール

昇平は、毎朝ゆめがおか学級に入ると、まず森村先生に「おはようございます」を言ってから、必ず黒板の左端を見る。
そこに今日のスケジュールが書いてあるからだ。
上から順に、1校時 国語、2校時 算数(この2つの順番は毎日変わらない)、3校時や4校時目には、その日によって、行事が入ってきたり、音楽や体育、生活科の内容が入ってきたりする。

ところどころ、子どもの名前を書いたマグネットシートが貼ってあるところもある。
例えば「3校時 音楽」と書いてあるわきに、「昇平」のマグネットシートが貼ってあって、さらに「たいいく」と色の違うチョークで書かれていたりする。これは、3校時目、昇平はゆめがおか学級ではなく、協力学級の1年3組に行って、そこで一緒に体育の授業を受ける、という意味。
ゆめがおか学級は1年生から5年生までの複式学級だから、下校時刻も子どもによって違うのだが、それも名前のマグネットシートを使って時刻が書き込んである。

子どもたちは毎朝登校すると、この黒板のスケジュールコーナーを見て、自分の今日の時間割を確認する。
「え〜、音楽あるのぉ?」なんて昇平が不満そうに言うこともあるけれど、そう言いながら自分でお道具箱からカスタネットを出したりしているのだから、時間割を見ることがその日の授業の心構えを作っているのは間違いない。

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もしも、こういう配慮がなかったらどうなるかな、と考えた。

朝、登校する。机の中にランドセルの中身を移す。教室の前には時間割が貼ってある。昇平はそれを見て、今日は国語、音楽、体育、図工の順番だな、と考える。
すると、朝の会で担任の先生が「今日は3校時目に歯医者さんが来て歯の検査をしますので、2校時目の音楽が体育に変わります。今日は音楽はありません」と言う。
他の子どもたちは「ああ、そうか。時間割が変わって2校時目に体育、3校時目に歯の検査があるんだ」と考える。
ところが昇平はADHD。話を集中して聞くというのがとても苦手。
先生が大事な朝の連絡をしているとき、窓から見える校庭のボールが気になっていて、先生の話を全然聞いていなかった。

1校時目が終わって昇平がカスタネットを出していたら、お友だちが親切に教えてくれた。「昇ちゃん、音楽じゃないよ。2校時目は体育なんだよ」
え、どうして? と昇平はびっくりする。だって、体育は3校時目のはずなのに・・・。
だけど、まわりではどんどんお友だちが体育の準備に取りかかっている。やっぱり体育なのかな。だけど、時間割は音楽のはずなのに。いつのまに変わっちゃったんだろう・・・・・・。
お友だちが心配して、「昇ちゃん、はやく運動着に着替えなよー」とか声をかけてくれる。先生もやってきて「昇平くん、2校時目は体育になったのよ。早く準備してね」と言ってくれる。
昇平はやっと納得して着替えを始めるけれど、ずっとドキドキして不安だったものだから、それが尾を引いていて、なんだかずっと落ちつかない気分。
やっと体育が終わったら、今度はそのまま保健室に行って、歯の検査をするように、と言われた。またまたびっくり。みんなと一緒に移動するけれど、どうしてそういうことになったのか、自分ではさっぱりわけが分からない。混乱。混乱。わけわかんないよー。歯医者さんの検査も怖いよー。
4校時目は時間割どおり、図工。
でも、みんなが図工の準備をしていても、昇平はなんだか心配で準備ができない。
時間割には図工ってあるけれど、本当に図工を準備していいんだろうか。また「間違いだよ」って言われるんじゃないかな・・・。本当に図工でいいんだと分かっても、授業の間中、なんだかずっと心配で、さっぱり課題に集中できない。大好きな工作だったけれど、なんだか全然気分がのらなかった。

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これは私が勝手に想像した場面だけれど、昇平にあらかじめスケジュールをしっかり教えておかないと、こういうことが起きるのは目に見えている。変更を理解するのに時間がかかって、準備がもたつくだけでなく、その日の授業の理解や課題達成にまで影響を及ぼしてしまうのだ。

ADHDの子どもたちは、聞いているように見えて、実は「聞こえていない」ことがとても多い。
ゆめがおか学級のように黒板にスケジュール表とまでいかなくても、せめて、全体に口頭で予定変更を教えた後、個別にもういちど予定を伝えたり、変更が頭に入っているかどうか確認したりしてもらえたら、きっととても助かる子どもたちがたくさんいるだろうと思う。

・・・ということで、プラスアルファの小さな配慮をよろしくお願いいたしますね。全国の先生方。(^_^)

[02/05/24(金) 13:18]

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