昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

授業参観・2

さて、授業は今日の一番のテーマ「大好きなもので長さをはかろう」の学習に入った。動きを取り入れた学習活動だ。

ADHDのある子どもたちは、基本的に、体を動かすのが大好きなので、前の日に作ったという「大好きなものカード」を先生から受け取って、うきうきと嬉しそうな顔をしている。
カードはそれぞれに違っていて、たとえばベイブレー○カードとか、ウルトラマン○スモスカードとか、ハムスターカードとか。昇平は自分の大好物のチョコレートカードを選んでいた。(笑)
どれも、実物をカラーコピーして、厚紙に貼り付けたもの。それを6枚ずつくらい持っていた。

「ものさしや定規を使わなくても、何か基準になるものがあれば、ものの長さははかることができるんだよ」と森村先生が言いながら、OHPをビデオにつないだもので、実際にカードで教科書をはかって見せた。
まず、正しいはかり方。
それから、カードの並べ方に統一性のない、間違ったはかり方。
「これはどこが間違っているか、わかるかな?」
クラスの中で一番積極的なKH君が、すかさず手を挙げて前に出てきた。
その間、昇平は先生の説明になかなか興味が持てなくて、絵カードをいじりまわして先生にお預かりされたり(笑)、「昇平くーん、こっち見てねー」なんて声かけばかりされていたのだが、上級生のお兄さんが前に説明に出ていったとたん、集中してそちらを見るようになった。
うーん、上級生パワーはすごい。

さて、いよいよ席を離れて、教室の中のいろいろなものの測定開始。
机、テーブル、畳、お母さんたちのスリッパ・・・目についたものを自分のカードで何枚分の長さかはかっていく。
昇平、最初は動いて良いのかどうかわからなかったようだが、先生に促されて、なんと私の足の長さをはかりに来た。膝のところまでチョコレートカード4枚分。こら、並べ方にすきまがあるじゃないの! お母さんの足はもっと長いぞ!(苦笑)

そのあと、昇平は電子ピアノに目を付けて、その長さをはかっていた。ところが、子どもたちの長さの報告が集中していて、なかなか先生に「何枚分の長さだったか」を黒板に板書してもらえない。
どうするのかな、と思いながら昇平を見ていると、先生に言いに行っては、「ちょっと待ってね」と言われて教室内をあちこち動き回り、でも、また思い出しては先生のところへ報告に行っていた。
ふぅん。ちゃんと当初の目的を忘れないで活動できるようになったんだ。やっぱり成長したねぇ。

   ☆★☆★☆

15分間の活動時間はたちまち過ぎて、授業終了のチャイムが鳴ったが、まとめが残っていたので、席に戻って5分間だけ授業延長。
それぞれ、いろいろなものの長さをはかった表を眺め、その中でも同じものをはかった人の結果に注目して、単位となるカードが違っていると、同じものでも測定した数が違うことを確認した。

「起立、礼、着席」の合図で授業を終わる子どもたち。とうとう最後まで、きちんと授業に参加できていた。
1年生から5年生までの複式、ほとんどの子どもがADHD、しかも、後ろで親たちが見ている、という興奮しやすい状況だったのに。
本当にみんなよくがんばっていたね。
偉かったね。

   ☆★☆★☆

ところで、今回見ていてよく分かったのが、ADHDの特性に合わせた授業構成。
ひとつひとつの学習活動のスパンが15分間単位。ADHDの子の集中の限界をよく把握している。
ただ、興味がのれば時間を忘れて集中するのもADHDの特性なので、子どもたちが夢中になったときには、授業時間を超えて学習することもあるのだそうだ。

視覚に訴える教材を活用しているのも目立った。
ADHDの子どもは基本的にうっかり屋さんなのだが、目で見て理解する能力には優れていることが多いのだ。
九九用ボード、時計カード、ビデオ、長さをはかるためのカード・・・。
どれも具体的で分かりやすい。

興味がそれてきたときに、すかさず声かけをするのも有効だった。
叱るのでもなく、注意するのでもなく、ただ興味を惹きつけるために名前を呼ぶ。
昇平のように、何か手元にあるものに興味が集中してしまって、説明に気持ちが向かなくなっているときには、さりげなくそれを取り上げ、活動の時間になったらそれを返す。
ちょっとした対応で、子どもたちの集中度はぐんと変わってくる。

これは、なにも情緒障害児学級だけでしかできないことではないだろう。
普通学級でも、十分にできる対応だし、それほど難しいことでもない。
クラスにADHD児を抱えている担任の先生には、ぜひ、ADHD児の特性を踏まえた授業を行って欲しいな、と思う。
ADHD児に合わせた授業は、他の非ADHDのクラスメートたちにも、きっと分かりやすいから、クラスの全体が恩恵を受けられるはず。

[02/06/25(火) 13:36]

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