昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

即興童話『昇平くんとボス』

明日がラジオ体操の最終日だというのに、なかなか寝ようとしない昇平。
強制的に部屋の電気を消したら「お話ししてよ〜」と言い出した。
昔話という感じでもなかったので、例によって、また即興で創作話をすることにした。

   ☆★☆★☆

あるところに、昇平という名前の男の子がいました。
(「え〜、そんな話やだ〜」<昇平の声)
ある日、昇平くんの家では犬を飼うことになりました。ペットショップに行くと、たくさんの仔犬が売られていました。その中でも一番かわいい仔犬を買って、家に連れて帰りました。そして、仔犬に名前をつけました。なんて名前にする?
(「ボスがいい!」)
仔犬はボスという名前になりました。そして、家のすぐ近くの庭に犬小屋を作りました。
(「え〜ダメだよ〜。家の中がいい」)
家の中で犬を飼いたいの? それじゃ、家の中にボスの犬小屋を作りました。
(「ちがうの。段ボールの箱がボスの家なんだよ」<どうやら『こいぬがうまれるよ』の絵本の影響らしい)
はいはい。じゃ、段ボールの箱をボスの家にしたのね。

餌を入れるお皿と水を入れるお皿とトイレも準備しました。
ボスはたくさん餌を食べて水を飲んで、トイレでウンチやおしっこをしました。
(「おしっこはしないの!」
 「どうして? 犬はおしっこもするよ」
 「おしっこはしないよ」
 「おしっこしなかったら犬は病気になっちゃうよ」
 「・・・(少し考え込んでから)おしっこもしていいよ」
どうやら、彼のイメージの中で、犬はウンチはしてもおしっこをしないものだったらしい。イメージの修正をしているのが感じられた。)

ボスを散歩の連れていくのは昇平くんの役目です。
ボスにひもをつけて玄関から外に出ると、車にひかれないように気をつけながら、道路の端を歩いて散歩をしました。ず〜っと歩いて、公園まで行くと、そこから家にもどってきました。
散歩から帰ってくると、ボスはたくさん水を飲みました。
それから、おうちの中で、ボスと昇平くんはいっぱい遊びました。
おいかけっこをしたり、じゃれあったりして遊びました。遊び疲れると、昇平くんとボスはクッションの上で一緒にくっついて眠りました。

ある日、昇平くんたちはキャンプに行くことになりました。あ、いや、えーっと、海に行くことにしました。
ボスをどうしようか、という話になりました。家にお留守番させようか、と話しました。
(「ダメダメ! お留守番させちゃダメ! 一緒に連れていくよ!」)
すると、ボスが、ぼくも一緒に連れてって、と言うように、ワンワンと鳴きました。
そこで、車にボスも乗せて、一緒に海に連れていくことになりました。

海につくと、ボスはとても大喜びしました。
砂浜を走って、波と遊んで、初めて見るカニや魚にびっくりしていました。
ところが、いつのまにかボスがいなくなってしまいました。
昇平くんもお兄ちゃんも、お父さんもお母さんも、みんなで一生懸命さがしましたが見つかりません。
どうしたのかなー、海に入っておぼれちゃったのかなー。みんな、心配になってきました。
するとそこに、キャンキャンと鳴き声が聞こえてきました。見ると、ボスが向こうのほうから走ってくるところでした。迷子になってしまっていたのです。
(「違うよ。おしゃべりしていたんだよ」
 「他の犬とおしゃべりしていたわけ?」
 「そう!」)
ボスは他の犬とおしゃべりするのに夢中になっていたのでした。
ボスがもどってきたので、みんな大喜びしました。
そして、また一緒に車に乗って、家に帰っていきました。

そんなふうにして、ボスと昇平くんたちは、ずっといつまでも楽しく暮らしましたとさ。
おしまい。

   ☆★☆★☆

遊びに行く先をキャンプから海に変えたのは、昇平にとってイメージが湧きやすいと思ったから。
この春、海には行ってきたけれど、キャンプのほうはまだ未体験だったので。

聞き終わってから、昇平がひとこと。「あー、おもしろかった!」

それで、即興童話作家の母はとても満足したのだった。(笑)

[02/07/27(土) 00:04]

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