関わり

昇平の発達課題のひとつに、「他人との関わり」の問題がある。
「関わり」。つまり、誰かと一緒に遊んだり会話したり、相手を理解したり理解してもらったり、協力しあったり思いやったり・・・といった社会的行動のこと。

人と関われないわけではない。関わりのしかたが不自然、というわけでもない。
ただ、関わりの面での発達が立ち後れていて、人に対する関心より本やモノに対する興味の方が強く、何かに夢中になれば話しかけられても返事もしなくなるし（実際は、夢中になるあまり話しかけられているのに気がつかないだけなのだが）、誰かと一緒に遊んでいても、すぐに自分にとって興味のあるモノに関心が移ってしまって、なかなか遊びが長続きしないのだ。
他人と一緒に遊ぶという観点から見ると、彼の発達段階は３歳児くらいのレベルではないかと思う。

人との関わりの遅れは、彼のことばが遅れていることにも原因がある。つまり、一緒に遊ぼうと思っても昇平の言っていることばが通じないし、相手の言っている内容もなかなか昇平には理解できないので、遊びが続かなくて、関わりが深まらないのだ。
もっとも、人との関わりが遅れているために、ことばがなかなか発達していかないとも考えられるので、どちらが原因でどちらが結果かは、判断が難しいところだけれど。
ＡＤＨＤっ子は集中力が短いので、一緒に遊んでいても長続きしなくて関わりが深まらない、ということもある。
関わりが遅れている原因はひとつだけではないのかもしれない。

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この夏休み、私は日記に、昇平が買い物ごっこをできるようになったとレポートした。
それは、これまで昇平がその手の社会遊びがまともにできていなかったから。
小学校に入って、今までよりまた一段と社会性が伸びてきたな、とは感じていたのだけれど、遊びという面でその証拠を見たのは初めてだったのだ。

学校が休みなので、お友だちや先生といった「外の人たち」との関わりは減ってしまったのだが、代わりに家族と関わる回数は増えた。
お兄ちゃんと遊びたくて「一緒に遊ぼう」と誘いかけたり、一緒にケラケラ笑いながら遊んだり。
お父さんが早く帰ってくると大喜びして飛びついて行くし、今度の日曜日は仕事が休みだと聞くと（盆前は忙しくて日曜日にも出勤していた）、何日も前からその日を楽しみにしていたり。
母と遊ぶうちに、にらめっこもできるようになった。
お兄ちゃんが大声を出すと、怯えて母に飛びついてくる代わりに、兄の表情をおっかなびっくりのぞき込むようになった。『機嫌が悪いのかな？　それとも、ただ大声を出しているだけかな？』と確認するように。
おじーちゃんやおばーちゃんに話しかけられたときの反応もよくなった。ただ、おじーちゃんは耳が遠いので、せっかく昇平が返事していてもそれが聞こえなくて、昇平の成長ぶりがわからないのが残念なのだけれど。（苦笑）

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人と交渉することもうまくなってきた。
何か欲しいとき、禁止されないようにあらかじめ「○○するから△△をちょうだい」と自分から条件を出して言ってきたり、なかなかＯＫがもらえないと「××してください。お願いします」と丁寧な言い方に変えてきたり。
「ぼく〜、□□が欲しいなぁ〜」なんて甘え口調もすっかりうまくなった。

最近では妙に賢くなってきて、母にダメと言われそうなお菓子をおばーちゃんからもらったときなどは、母に見つからないように２階にさっさと上がり、隠れてそれを食べてしまって、知らん顔していることもある。・・・お菓子の包装紙を残しておくものだから、母が２階に上がると一発でばれるけれど。（笑）

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犬のぬいぐるみや、体を押すとしゃべるハムスターの人形をかわいがっていることは、以前に日記に書いたけれど、これも人との関わりが発達してくる前兆だと思う。
餌を食べさせたり、優しくなでたり、話しかけたり。人形を擬人化してかわいがることを通して、人と関わる気持ちの基礎が育っていくのが見えるのだ。
この気持ちは、やがて対人間との関わりに発展していくだろう、と思っている。

まわりの同年齢の子たちから比べたら、とても立ち後れていて、とても対等な関係は結べないけれど、それでも、面倒見のよい女の子たちと一緒に遊んだり、ゲームをしたり。他の男の子たちがやっている対戦まざりたくて、自分のベイブ○ードを児童館に持っていってみたり。
ずっと後ろの方にはいるけれど、確実に発達の道を前進している昇平。

これで良いんだろう、と思う。
歩むペースはゆっくりでも、自分なりの速さ、自分なりの成長で、しっかりと発達を遂げているから。
たとえラストの走者になったとしても、きっといつか、ちゃんとゴールにたどり着けるはずだと思うから。

[02/08/18(日) 13:58]