昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

花火

日曜日の夜、庭で花火をした。

数日前、近所の人から大きな花火セットをもらったので「日曜日にお父さんと花火をしようね」と言ったら、本当に楽しみにその日を待っていた昇平。日中、スーパーから手持ち花火のセットを買い足して、うきうきと暗くなるのを待っていた。
折しも台風 号が接近中。今にも雨が降り出すのではないかと心配だったのだが、なんとか夜まで天気は持ちこたえていた。

そんな中で発見したことの一つ目。
昇平は「約束の時間まで待つ」ことができるようになっていた。
ちゃんとお父さんが休みになる日曜日まで待つことができた。夜暗くなるまで待つことができた。「7時になったら」という約束の時刻まで騒ぐことなく待つことができた。
少し前までは、いくら約束しても、待ちきれなくて大騒ぎしていたものなのに。
時間の観念がだんだん発達してきたのだろう。「見通しをたてて待つ」ことができるようになったらしい。

お父さんと一緒に庭に出て、まず点火された吹き出し花火に歓声を上げる。「ワァ〜! キャァ〜!! ウヒャ〜!!!」と叫びながら、躍り上がる。全身で喜びながら花火を眺めている。
二つ目の吹き出し花火に点火すると、また大騒ぎ。「おかあさーん! おにちゃーん! 見て見て、きれいだよーー!!」と家の中に呼びかける。

発見したことの二つ目。
昇平は「自分の感動を誰かと分かち合いたい気持ち」が強くなってきている。

その後、手持ち花火を始めると、一つの花火が終わるまでふざけることもなく持ち続け、終わるとすぐにまた新しい花火を取りに飛んできて、ろうそくから火をつけていた。
時々大きな吹き出し花火や打ち上げ花火を手にとって、「今度はこれやって」と父に手渡したりもした。
私も一緒に花火をしながら、そんな昇平の様子に、なにか今までと違うな、と感じていた。
なんだろう? なにが違うんだろう?
手持ち花火は去年もやっていたし、そのときもそれなりに楽しんでいたのだけれど。

観察を続けるうちに、気がついた。
昇平が花火にずっと集中しているのだ。
去年も確かに花火は楽しんでいたけれど、時々花火から関心がそれて庭を駆け回ったり、夜の道路の方をのぞきに行ったりしては、「花火やらないの?」と我々に声をかけられていた。花火がつまらなくなったわけではないけれど、ADHD特有の集中の弱さから、集中がとぎれてしまっていたのだ。
それが、今年は声をかけられたりしなくても、ずっと花火に集中していることができた。その様子がとても「普通」に見えて、それが少し意外に感じられたのだ。

「昇平の集中力は増してきている」。その夜発見したことの三つ目だった。

お兄ちゃんがテレビを見終わって花火に参加してきたので、昇平はとてもご機嫌。
音の出る打ち上げ花火も、耳をふさぎながらも喜んで眺めていた。
こういう花火はやっぱりお父さんの出番なんだよねぇ。お父さんの休みの日まで待っていた甲斐があったね。

   ☆★☆★☆

その夜、昇平に夏休みの絵日記をかかせたら、こんなことを書いていた。

「8月18日 日ようび 天気くもり

 はなびをやりました。
 にいちゃんと とうさんと かあさん(と)です。
 おもしろかったのです。」


☆花火の絵日記の本文と絵はこちら。↓

http://village.infoweb.ne.jp/~asakura/bijutsu/enikki.htm

[02/08/24(土) 07:04]

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