昇平てくてく日記
幼児〜小学校低学年編
成長が強めるADHD
学校が終わった後、昇平を連れてM病院へ診察に行った。
間に盆休みが入ったりしたので、昇平が主治医のY先生と会ったのは1ヶ月半ぶりのこと。
おかげで、昇平とY先生のやりとりを見ていて、その間の昇平の変化がはっきりと分かった。
まず、話しかけられたことに対して反応がよくなり、会話がとてもスムーズになっていた。
昇平としては、先生の机の上にある検査器具が気になって、先生と母が話しているにも関わらず、「これは何に使うの?」としきりに口を挟み、先生が使い方を説明してくれると、自分でもそれをやってみようとしていた。
以前は、先生がいくら話しかけても質問してもまったく関心を示さず、自分の興味のあることばかり、勝手にやっていたのに。
今は、何にでも興味津々で、確かめてみないではいられない、という感じだけれど、先生に話しかけられたことはちゃんと聞こえていて、質問されれば答えるし、言われたことも理解できている。
・・・それが実行できるかどうかは、また別問題だけれど。(笑)
わきから見ていて、やりとりがすごく自然になったなぁ、と密かに感動していた母だった。
それに比例するように、行動も活発になっていた。
というと、聞こえがよいけれど、要するに「とても落ちつきがなかった」ということ。
興味があるから落ちつかない。診察室が珍しいから落ちつかない。普段あまり話したことのないY先生と話しているから落ちつかない。
くるくる回転する椅子が面白いから回してみたい。懐中電灯があったから、それでヒーターの通風口を照らしてみたい。音叉(おんさ)なんて恰好のおもちゃ。自分で音を出して確かめて、次に母に、それから先生に「聞こえる?」と音を鳴らしてみせる。
あっちこっち、ひっきりなしに動き回るけれど、以前の多動と違うのは、行動に目的が出てきているというところ。
ただ体が落ちつかなくてウロウロするのではなく、興味を引かれるから、落ちつきなく動き回っている。
同じ多動でも、意味合いが以前とは違っているな、と感じられた。
「回りのことが分かるようになってきたので、興味がわいて、確かめずにはいられないでいる感じですね」とY先生がおっしゃった。
これは成長の現れなんですよ、と言うように。
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以前より物事がよく分かるようになったために、逆に落ちつかなくなったり、不安を感じたりするようになっているようだ、というのは、担任の森村先生と私の間でも話し合っていたことだった。
外から見ていると、以前はある程度落ちついていたのに、2学期になったら落ちつきなく動き回る場面が増えたわけだから、夏休みの間にADHDが悪化したように見えるかもしれない。
でも、実際には、成長してまわりがよく見えるようになってきたために、逆にADHD特有の行動が強く出てきている、ということなのだ。
不注意が強い子どもの場合に特に言えることなのかもしれないけれど、成長したために、逆に一時的にADHDの特徴が強まる、ということはありえると思う。でも、この段階を経ることで、本当の意味でADHDを克服していくことができるのだろう、と私は考えている。
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昇平は今まで、お友だちとトラブルを起こすことはほとんどなかった。
でも、他人への関心が強まってくれば、お友だちと積極的に関わろうという動きも強くなるから、きっと、お友だちとのトラブルも増えてくるのだろう。
そのときには、昇平が友だちとのつきあい方を学び始めたのだと考えることにしよう。
新たなトラブルは、成長してひとつ上の段階に入った現れなんだと。
昇平へのADHD児としての対応は、これからが本番になるのかもしれない。
[02/09/06(金) 05:31]