昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

お詫び

最近ADHDの特徴を強めてきている昇平は、落ちつきがないだけでなく、ちょっとしたことにも怒りっぽくなっている。

昨日のこと。
夕方、階段の下から私は昇平に「おしっこをしなさい」と呼びかけた。
遊びに夢中になると尿意に気がつかなかったり、気がついても我慢したりするうちに、もらしてしまうことが多いので、学校でも家庭でも、できるだけ時間で声をかけるようにしているのだ。
ところが、リタリンが切れる夕方以降になると、昇平はトイレに行くのを極端に嫌がるようになる。たぶん、遊びを中断してトイレに行く、という気持ちの切り替えが、なかなかうまくできなくなるのだろう。
昨日も、そういうわけで、声をかけたとたん昇平が怒りだした。「え〜っ、おしっこ出ないよ!」と階段の上から怒鳴り返してくる。
「でも、前にトイレに行ってからずいぶん時間がたったよ。行っておいたほうがいいよ」と言うと「お母さんのバカッ!」・・・やおら部屋から直径50センチの大きなカービィ人形を持ち出してきて、それを階段の上から投げつけてきた。

私は軽い気持ちでそれを受け止めようとしたのだが、受け止め損ねて、右の人差し指をしたたかに打ってしまった。(人形はふわふわのぬいぐるみだったのだが、足の部分だけ合皮が使ってあって堅かったのだ。)
「いたーーーい!!」私が悲鳴を上げると、昇平がびっくりして降りてきて、「ごめんね、ごめんね」とすがりついてきた。
でも、けっこう痛かったので、私は指をさすりながら「痛い、痛い」と言い続けた。
「ごめんなさい」ともう一度言う昇平。でも、その口調が決まりことば風で、本当に謝っている感じがしないのが気になった。「ごめんなさいって言われても、指が痛いから『いいよ』って言う気持ちになれない」と怒ったように言い返してみせた。
とたんに昇平オロオロして、「ごめんなさい。怒らないー。ゆるせー。ゆるしやがれー!(オイオイ)」、あわててトイレに行っておしっこもしたが、それでも母が何も言わないものだから「なんで何も言わないんだよー」。
「まだ痛いから、お話しする気持ちになれないの」と言うと、昇平はあわてて逃げていった。

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大人げないなぁ、と笑われるだろうか?
実は、私としてはわざとこういう反応をしていたりするのだが。

昇平は自分のした行動がどういう結果を引き起こすのか予想することが難しい。そして、相手がその行動をどう感じているのかを読みとることも苦手なのだ。
もちろん、人形がぶつかったくらいでそんなに痛いわけではないのだが、これが母でなく子どもだったら、かなり痛がるかもしれない。場合によっては泣き出してしまうかもしれない。
「そんなことをしたら、相手は痛いんだよ。怒るんだよ」ということを昇平に分からせたくて、わざと大げさに痛がって怒って見せたのだった。
同年代の子どもと関わる機会の少ない昇平には、どうしても、大人が相手になって模擬体験をさせてやらないといけないような気がしている。・・・一種のSST(ソーシャルスキルトレーニング)のつもりなのだけれど・・・。

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昇平が逃げていったので、私は苦笑いしながら2階に上がり、昇平が欲しがっていたお絵かき用の紙をテーブルに出してから、また階下の台所に戻った。
昇平は階下の茶の間にもいなかった。玄関から外まで逃げていったらしい。そんなに怖かったのかなー、とまた苦笑いしながら夕食の支度に戻ると、昇平が家の中に入ってきて、2階に駆け上がっていく足音がした。
と思ったら、また降りてきて、台所に入ってきた。手にカービィ人形と数本の花を持っていて、その花を私に向かって振りながら「お母さん、やさしくなーれ、やさしくなーれ!」と言う。
お詫びのしるしに、庭から花を摘んできたのだった。

こんなことを昇平がしたのは、始めてのこと。
思わず笑って「もう怒ってないよ。2階にお絵かきの紙を出してあげたからね」と言うと、昇平はパッと顔を輝かせ、「やった!」と言いながら母に花束を手渡すと、急いで階段を駆け上がっていった。

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というわけで、台所の流し台には今、昇平が摘んできたピンクの花が飾ってある。
それを見るたびに、思わずニッコリしてしまう母だった。
・・・母も、相当単純かも。(笑)

[02/09/10(火) 06:44]

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