昇平てくてく日記
幼児〜小学校低学年編
フリー参観・3
フリー参観のレポート、その3。
さて、いよいよ授業が始まった。
1時間目は国語。
まず、先生と子どもたちで選んだ本を森村先生が読み聞かせた。「いっぴきオオカミのソロリ」という絵本。
本当は心の優しいオオカミのソロリ、でも、なぜか面と向かってしまうと乱暴なことをいったりしたりしてしまう。ホントは森のみんなと仲良くしたいと思っているのに・・・。
ADHDの子どもたちは、自己コントロールの力が弱いために、友だちとトラブルを起こすことが多いのだけれど、絵本のソロリはそんな彼らにそっくり。絵本を見ながら、親近感を感じていたかもしれない。皆、とてもよく集中していた。
最後にソロリが森の動物たちに受け入れられたところで、皆、安堵のため息。それから、絵本の感想文をノートに書くのだが、うまく書く内容がまとまらない子は、先生のところに相談に行って、作文メモを作ってもらった。
昇平も先生と話しながら感想をまとめていたが、メモを持って机に戻ると「(ソロリが)木のねっこをたべて『まずい!』といったところがおもしろかったです。」という作文を書いた。
そういえば、ウサギの食べていた木の根をソロリが横取りした場面があったけれど・・・。昇平には、この絵本のラストで動物たちがソロリを許して受け入れていたことが、よく分からなかったのかもしれないなぁ。ちょっと漠然とした終わり方で、少し上級生向けだったからね。
でも、それなりにちゃんと感想をまとめて、自分の力で書いていたのは偉かった。
上級生の中には、いつもはメモを作ってもらうのに、今日はがんばってメモなしで感想を書き上げた子もいて、先生にほめられてとても嬉しそうな顔をしていた。
その後、漢字テスト。
宿題に持ち帰って練習してきた漢字をテスト用紙に書く。
昇平は一発で合格して、新しい漢字のお手本をもらっていた。他の子たちも次々と自分の学年の漢字に挑戦して、合格してはお手本をゲットしている。時間がある子は、新しい漢字の練習をノートにする。
そのうちに、1時間目終了のチャイムが鳴った。
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2時間目は算数。
複式学級の面白さを一番よく見せてくれた授業だった。
最初はくり上がりのある足し算。2つの数を足し合わせて10以上になるときには、2つの数のうち、大きな数に小さいほうから数を持ってきて、合わせて10にすると良い・・・ということで、「どちらの数を10にすると良いだろうか」という問題が出されていた。
これは1年生の問題だが、上級生たちも皆、同じように問題を出されて答えていた。
必要に応じて前の学年にも戻り、何度も何度も繰り返し復習するのが、森村学級の学習の基本だ。
つぎは、かけ算九九ボードを使いながら、2ずつ増える数と5ずつ増える数。
上級生たちには、かけ算九九を使って答えがいくつか考えても良いよ、とヒントが出ていた。
その次は図形。黒板いっぱいにいろいろな三角形や四角形の絵が貼られ、クラスの全員が交代で黒板のところに出ていって、図形に名称の紙を貼っていく・・・というもの。
確か小学3年生の学習内容なのだが、まるでクイズかゲームのような面白さなので、低学年の子どもたちも黙ってはいられない。一緒になって「平行四辺形」だの「長方形」だの「台形」だの「二等辺三角形」だの、黒板に名前を貼っていた。
もちろん、図形大好きっ子の昇平も、張り切って問題に取り組んでいた。図形の名称をかなり覚えていたのだから、これは複式学級ならではの面白さだな、とつくづく思った。
その後は、それぞれの学年の課題をドリルやプリントで解いていく。
昇平は最初教科書の問題をやっていたが、「ドリルがもう終わっちゃったから、新しい問題を作ってきたよ」と先生からドサッと問題の束を渡されたとたん、「やったー!」と大喜びして、さっそく熱心に取り組み始めた。
後で覗いてみたら、A4版のプリントいっぱいに、くり上がりのある足し算の計算問題がびっちり載っている。
これを見て「わーい、やったー」と喜ぶのか・・・と半ば関心、半ば呆れてしまった。
ちなみに、プリントを半分くらいやったところで2時間目は終了になったが、解いた部分は全問正解していたらしい。
知能的には、まったく正常なんだよね・・・。いや、上級生の図形の問題が理解できるくらいだから、部分的には年齢以上の部分もあるのだろう。
だけど、実生活では3,4歳並にしか発達していない部分もある。
つくづくアンバランスな子どもだと、改めて思った。
このアンバランスさに対応するには、やっぱり、情緒障害児学級のような専門の場でなくては難しかったんだろうな、とも思う。
楽しそうに授業を受けている昇平を見て、『ここに来て本当に良かったね』と心の中でつぶやいていた母だった。
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次回は「休み時間と生活」編の予定です。
[02/11/29(金) 13:57]