昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

日常の風景・3 〜下校〜

下校時間はその日の時間割によって違うが、とにかく、時間になると私は車で昇平の迎えに行く。
先生にさようならを言って、教室を出る。

昇平はまだ、私と手をつないで歩いてくれる。いつまでこうしてつないでくれるかなぁ。
でも、彼がまだ多動バリバリだった3才の頃までは、こんなふうに手をつないで歩くこと自体が、とても難しいことだったんだよね。
道路を歩くとき、店の中を歩くとき、危険だから手をつなぐのだけれど、昇平はすぐに手を振りきって、勝手に走り出してしまう。そうでなければ、立ち止まってしゃがみ込み、足下の小石やら床の模様やら側溝の穴の奥やらを観察し始めてしまう。突然立ち止まられるので、私が止まれなくて、昇平を引き倒してしまったこともたびたび。そのたび、「私って母親失格だろうか」と悲しく思ったっけ。
たった100m先の目標地点に到達するのに、5分も10分もかかることも、しばしばだった。

ADHD治療薬のリタリンを飲み始めて、真っ先に現れた変化のひとつが、「手をつないで歩けるようになった」ということだった。
母と手をつないで、相手の歩調に合わせて一緒に目標地点まで歩く。「車が来るから危ないよ」と言えば、立ち止まる。時々は足下の小石に興味を引かれて立ち止まるけれど、「早く行こう」と声をかけると、また立ち上がって歩き出す。昇平と一緒に手をつないで歩くのが、こんなにスムーズになるなんて、と感動したっけなぁ。

小学一年生の3学期にもなって、毎日学校の廊下を母と手をつないで歩くのは、なんとも幼いとしか言いようがないのだけれど、それでも、私は昇平と一緒に歩けるのが嬉しい。今では、学校であったことやこれからの予定を昇平と話しながら歩くことだってできる。この幸せ、続けられるだけ続けていたいな。
いつかは、お兄ちゃんのように、昇平も母と手をつながなくなってしまうのだもの。

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学校から帰るとき、たいてい昇平はあまり表情がない。
学校で精一杯がんばっているので、疲れているのだ。
車の中でゲームをしたり、本を読んだり、自分の好きなことをしながらリラックスをしている。

途中、たいていスーパーに夕食の買い物に回るのだが、最近昇平は自分のおやつだけ選ぶと、さっさと車の中に戻っているようになった。
ゲームや本の続きに戻りたい気持ちもあるんだろうし、店内に小さな子がいて、いつ泣き出すか分からないのが怖い、というのもあるらしい。
泣き声は相変わらず苦手で、泣き出しそうにぐずっている子がいたりすると、両耳をふさいでものすごく気にしている。
大泣きの声と同じくらい苦手なのが、駄々をこねて大騒ぎしている子どもの声。声の持つ、怒りや混乱の響きが苦手らしい。
いずれは平気になっていくだろう、と病院でも言われているのだけれど、それまでは、無理させないで、少しずつ慣れていってもらうしかないようだ。今は、本人がさっさと車に避難して、なんとか乗り切っているのだけれど、そうもいかない時のために、耳栓は携帯するようにしようかなぁ。

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家に帰ると、着替えをして、買ってきたおやつを食べながら、本を読んだりゲームをしたりする。
私は昇平のカバンの中身をチェックして、宿題を確認し、連絡帳を読む。
連絡帳を見ながら、前日やその日にやったことを昇平に確認したりもする。
よほど本人の印象に残った出来事でないと、昇平は学校でのことを教えてくれないので、連絡帳はとても大切な情報源になっている。

そうこうするうちに、昇平もだんだん元気になってきて、私にいろいろ話しかけてくるようになる。
ここで宿題までやらせられたら、完璧かな?(笑)
でも、私としては、まず昇平にリラックスをさせたいので、宿題は夕食のあとでやることにしている。

宿題や家庭学習に関しては、また次回。

[03/02/17(月) 13:32]

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