日常の風景・5 〜遊び・入浴・就寝〜
さて、勉強を終えたあと、昇平は好きな遊びを始める。
たいていはゲーム。お絵かきをしたり、本を読んだり、ままごとや細々したおもちゃを広げて遊んでいることもある。
たまにお兄ちゃんが遊びに誘ってくれると、実に楽しそうに一緒に遊んでいるけれど、お兄ちゃんも中学生になって勉強やらなにやら忙しくなってしまったので、あまり遊び相手はしてもらえない。
とにかく、自分の好きな遊びに没頭すること1〜2時間。
ビデオは見るが、テレビはあまり見ない。ビデオも、それ自体の内容を楽しむと言うよりは、音がしない環境がさびしいので、BGMがわりに流している、という感じ。
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問題は、寝る前のお片づけが大変だと言うことと、遊びを切り上げてお風呂に入るのがとても難しい、ということ。
片付けは、おもちゃの数を絞り込んで片付けやすくし、ポイントカードに「寝る前に(部屋)片付けをする」という項目を作って、自分で片づけられるように持っていっているところだけれど、お風呂に入るのだけは、本当に大変。
とにかく、遊びを途中でやめなくちゃいけないのが難しいのだ。
昇平の場合、眠くなったから遊びやめるとか、疲れたから遊ぶのをやめるとか、そういった感覚はない。
眠くなったり、疲れたりすると、逆にテンションが上がってしまって、かえってやめにくくなる。眠いならさっさと寝ればいいのに、と思うのに、その切り替え、その決断ができないのだ。
ほんとにADHDってやつは〜・・・と思ってしまう。(苦笑)
お風呂に入るまでは、声かけして、声かけして、とにかくお風呂にはいるように促す。
自分でゲームをやめられたときには、「えらいねー」と誉める。
どうしてもお風呂に来ようとしないときには、たまに、10(テン)カウントも使う。「1,2,3・・・」と10まで数えるうちに来なければ、お風呂に入れないで置いていく、という約束。
むか〜しむかし、10数えるまでにおもちゃを片づけなければ捨ててしまう、というのを本当に実行したことがあって、それ以来、10まで数えられては大変、と思っているらしい。(笑)
ちなみに、この「お風呂に入りたがらない」という問題は、他のADHDのお子さんでもよく聞くことで、ペアレント・トレーニングの学習会などでは、しょっちゅうこれに関する話題が上がってくる。
お風呂にもごほうびがつくと(上がってからドリンクが飲めるとか、早くあがれたら父と少し遊べるとか)、入浴もてきぱきと進むのだけれど、毎度毎度は難しいしねぇ・・・・・・。(^_^;)
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布団にはいると、スペシャルタイム、「母のお話」の時間になる。
話す内容は、その日によっていろいろ。昔話やおとぎ話、時には落語なんかも話して聞かせる。
ストーリィが明快でオチのある話が好きなようで、ケラケラと笑いながら聞いている。
アクション性のある冒険ものも好きで、「孫悟空」の金角銀角の話などは喜んで聞いていた。
お話は、絵本や本などを使わない「素語り」。
お兄ちゃんが小さかった頃には、もっぱら絵本の読み聞かせをしていたのだけれど、昇平の場合、絵本だとページの中の余計な視覚情報に気を取られてしまって、肝心のストーリィをよく聞き取れなかったのだ。部屋が明るいと、いつまでたっても気持ちが高ぶったままで、眠くならないのも問題だったし。
と言うわけで、かなり早い段階から、私は夜のこの時間には電気を消して素語りすることにしていた。
ネタのほうは、子どもの頃読みあさった童話集や、大学の卒論を書くときに読破した民話全集を思い出して引っぱり出してくる。
当然、物語は記憶を頼りに話すことになるので、時々ストーリィを忘れていたり、細かい部分を忘れていたりする。そこで、そのへんは得意のオリジナリティでカバーしてしまう。
人生、何が役に立ってくるか分からないな〜、とつくづく思っている。(笑)
最近のこの時間の大ヒット作は、今、ホームページでも連載している
「勇者フルートの冒険」シリーズ。
年齢的に昇平に近い男の子を主人公に、昇平が大好きなRPGの世界を冒険をして、敵のボスを倒すまでの物語。お約束通りのとても単純な話なのだけれど、昇平に理解できることばと状況を考えながら作った物語なので、分かりやすくて楽しかったらしい。
母も、こういうオリジナルの作品を語れるのはすごく楽しかった。
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この時間は母子が楽しむための時間だったし、寝る前のお楽しみだけの意味しかなかったのだけれど、長年語って聞かせてきたら、昇平の話を聞き取る力がじりじりと伸びてきたような気がする。
ことばを話すことが苦手だった子が、物語の音読だけは、台詞にも情感をこめて読めるようになってきたし。
楽しい上に、おまけ付き。
おかげで、昇平は「寝ること」だけは嫌がらない。
[03/03/06(木) 09:54]