お祭り

春分の日、近所でお祭りがあった。おばーちゃんからお小遣いをもらった昇平は大喜び。大きな声「おばーちゃん、おこづかい、どうもありがとー！！」とお礼を言った。百点満点のお礼だった。
すると、わきでそれを聞いていたおじーちゃんが「それではおれも」と、昇平に３００円渡してくれた。昇平はまたまた大喜び。「おじーちゃん、ありがとう！　わーい、やったぁ！！」とにこにこ顔。それを見て、おじーちゃんも満足そうな顔。
この子、意外と世渡りがうまいかも・・・。

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さて、おじーちゃんたちからもらった小遣いに、自分自身のお小遣いを合わせて、お財布に入れた昇平。いそいそと母の車に乗り込み、祭りの会場まで出かけていった。
小さなお寺の前の道に、屋台が２０軒くらい並んでいただろうか。規模としてはとても小さい祭りだけれど、この地区に縁日が立つのは年に一度、この日だけなので、この辺の子どもたちはずっと楽しみにしている。

昇平はまず、金魚すくいに興味津々。でも、金魚鉢がないから飼えないよ、と母に言われると、あきらめて今度は「型抜き」へ。
よそのお兄ちゃんのやっているのを見てから、自分もトライ。・・・間もなく、絵が割れてしまって失敗。（当然だけれど）
どうするかな、と思って見ていたら、「これ、食べられる？」と店のおばちゃんに自分から聞いて、「食べられるよ。おいしいよ」と言われると、パクッと割れた型抜きの板を口に入れて、満足そうな顔でそこを離れた。（ちなみに、板は砂糖菓子でできている）
私は、まずお店の人に自分からきちんと質問できたことにビックリ。次に、「もっとやる！」と言い出さなかったことにビックリ。
「今年の昇平は、ひと味違いそうだ」と思いながら、昇平について行った。

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おもちゃの屋台では商品を熱心に吟味。「境内にもおもちゃ屋さんがあるよ」と教えると、さっそく門をくぐって中に入った。
ところが、入るなり昇平が「お参りしよう」と言い出した。
おや〜、とまた思った。
祭りに行く、とは教えたけれど、お参りしなくちゃいけない、とは教えなかったのに。

昇平は自分の財布からお賽銭を取り出した。
「いくら？」と聞くので「ご縁があるように、って五円玉を入れるんだよ」と教えると、言われたとおりに５円玉を取り出して賽銭箱に投げ、手を合わせていた。

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その後は、また買い物。
おもちゃ屋で一番関心をもって眺めていたのは宝石箱。とうとう、自分で店の人に値段を聞いて買ってしまった。１３００円也。た、高い・・・。
なんでこんなものが欲しかったんだろう、と思ったら、実は、その箱についていたきれいな鍵が欲しかったのだ。金色で、ピンクの宝石のような飾りがついている。
別の店でも、昇平は鍵のペンダントを買って、家に帰ってから鎖を外して鍵だけにしていた。
どうやら、魔法の鍵を２つも手に入れたつもりらしい。
相変わらずＲＰＧが大好きなんだねぇ・・・。（笑）

その後も、昇平は縁日の通りを行ったり来たり。
はしゃいで興奮して大喜び。
リタリンなんて、効くもんじゃない。（笑）
でも、はしゃぎすぎて危ないような行動はとらなかったし、他の人に迷惑になるような行動もしなかった。
やっぱり大人になっている。

小さな飴を好きな種類測って買える店では、「ドーナツみたいな輪っかのはないの？」と店のおねーさんに聞いていた。
それではっとした。昇平は去年の縁日をしっかり覚えていたのだ。
去年も同じ店が祭りに立って、小さなドーナツ型の飴を昇平は一番気に入っていたっけ。
店のおねーさんが「あ〜、今年は持ってこなかったなぁ。ごめんね」と言った。
昇平、「それならいいや。買わない」と言ったものの、あとからやっぱり欲しくなったようで、また買いに戻ってきた。
「来年は輪っかの飴も持ってくるからね」とおねーさんが言ってくれた。
もしかしたら、昇平はその約束を来年まで覚えているかもしれないなぁ・・・。

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結局、金魚すくいもした。
「ぼく、金魚のお世話したいよ」「捕ったらまた逃がすから」とまで言われてしまっては、やるしかなかった。
小さな赤い金魚を一匹すくい、大きなのを網にのせたところで、紙が破れてしまった。でも、おじさんにもう一匹サービスしてもらえて、本人は大満足。
結局、祭り帰りにホームセンターに回り、飼育セット付きの金魚鉢を買うはめになった。

でも、昇平の様子は本当に今までとは違う。今日の午前中は、紙を切って金魚を作って「おまつりごっこしよう」と言ってきた。丁寧にウロコや模様を描きこんだ金魚を、青い布の上に並べて、器と、厚紙で作った網も準備して・・・。

昇平にとって、お祭りは最高に素敵な体験のひとつになったらしい。

[03/03/22(土) 14:08]