「光(ひかり)とともに・・・」
昨夜、ふと思いたって、漫画「光とともに・・・」(戸部けいこ/秋田書店)の1,2巻を旦那に読ませた。
自閉症の男の子をその両親が受け入れて、いろいろな苦労を重ねながらも、地域と共に生きていこうとする物語・・・
自閉症というと、他人に対して心を閉ざしている心の病気、親の育て方が悪かったためになるもの、という誤解がいまだに根強いのだけれど、この本は、正しい自閉症の理解や、自閉児とともに生きる生き様を伝えるものとして、一般の人たちはもちろん、自閉児を持つ親たちからも絶大な人気がある。
現在は3巻まで出ているらしいのだが、1,2巻を友人が私に貸してくれたので、私自身はだいぶ前に読んでいた。
そろそろ返さなくちゃいけないな、と本を紙袋に入れていたとき、ふと、そうだ、旦那にも読んでもらおう、と思いついた。
旦那は、障害に差別の目は持たない人だけれど、自閉症がどういうものであるかについては、今ひとつ理解していない。本を読んでもらっても、なんとなく、ぴんときていない感じ。でも、旦那は漫画の大好きな人だから、この本ならきっと分かりやすいし、興味を持って読むだろうと思ったのだ。
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昇平を寝かしつけて部屋に戻ってくると、旦那はちょうど2巻目を読み終わるところだった。
思った通り、とても熱心に読んでいた。
そのまま黙って待っていたら、旦那は最後のページを読み終えてから本を閉じ、私を見て言った。
「確かに昇平に似ているところがけっこうあったな」
そう、そのとおり。
主人公の光くんと幼い頃の昇平には、とても共通する行動や特徴が多いのだ。
耳は聞こえているはずのに、呼んでも聞こえていないようだった。
自分のペースで自分の興味のあることばかりしていて、こちらが誘う遊びには乗ろうとしなかった。
ことばがとても遅くて、母を呼ぶこともなかった。
好きなことにはいつまでも熱中して遊んでいた。
排水溝のブロックの穴に小石を落とすのに熱中するエピソードは、もう2歳代の昇平そのもの。
赤ちゃんの泣き声が嫌い、というのも、とてもよく似ている。
今まで、昇平には自閉症にとてもよく似た特徴があるんだよ、と繰り返し話し続けてきたのに、旦那にはどうしても分かってもらえなかった。それが、この漫画を通して、やっと納得してもらえた。
私自身も、他の人たち、特にホームページを通じて昇平の様子を読んだ人たちが「昇平くんもきっと自閉症ですよ」と言ってくるわけが、この本を読んでやっと理解できたのだ。
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旦那が続けて、私に言った。
「今まですごく辛かったかい?」」
あらまぁ。(笑)
光くんのお父さんは初め、ものすごい会社人間だった。
もちろん、家族は愛していたのだけれど、仕事仕事で子育ては奥さんに任せきり。そんな姿が、自分自身とだぶったらしい。(現に日曜日の今日も、残った仕事を片づけるために旦那は出勤していった。笑)
旦那に問われて、改めてこれまでの道のりを思い出してみた。
大変でなかったといえば、それは絶対嘘になる。肉体的にへとへとになって、メニエル発作を頻発した時期もあった。でも、精神的なことを思うと、光くんのお母さんほど深刻に辛かったという感じもしない。
どこがどう違うのかな、と考えてみた。
確かに、昇平は行動的には光くんと似たことをするし、似たエピソードもたくさん出てくる。
でも、どこかで決定的に違っているのも事実。
本を読み返してみて、どこが違っていたのかを探してみた。
違いはこの部分だった。
光くんのお母さんが泣きながら言う、このセリフ。
「自分の子どもなのに光のことが分からないんです。
かわいいって思いたいのに思えない。」
そして、そんな辛い時代を思い出しながら言うセリフ。
「どれだけむなしい日々をすごしただろう。
与えても与えても何も返ってこず」
昇平は確かに呼びかけても他人を無視しているようなところがあったけれど、しっかり注意を引いて話しかければ、反応を返してくれた。
彼の考えていることも、表情や行動、視線に注目していれば、ほぼ100%私に理解できた。
ことばは遅いし、人との関わりの発達もとても遅れている。
感覚的な部分にも、自閉児並の偏りがあって、よく混乱したりパニックになったりはする。
でも、昇平はその中に、私たちと同じ思考や判断のパターンの基礎を持っていた。私は、共通の土台の上に立って昇平を育てることができた。
これが、「大変だったけれど、それほど辛くはなかった。」と私が感じた理由だった。
もちろん、ADHD児には、自閉症とはまた違った困難がある。
それぞれの子にそれぞれに困難な部分があって、毎日本当に大変だけど、それでも、親はわが子を愛している。
すべては、そこに帰結し、そこからまた始まるのかもしれない。
「光とともに・・・」を読み返しながら、そんなことを考えていた。
ちなみに・・・
この漫画を読んでから、なんとなく旦那の態度が変わりました。
なにげに私をいたわるような・・・(爆)
これがいつまで続くやら、と思っているのですが。(笑)
[03/04/06(日) 08:54]