昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

父の腰痛

月曜日から旦那は腰の調子が悪い。
もともと腰痛持ちではあるのだけれど、日曜日に久しぶりに仕事がなくて寝過ぎたせいか(と自分で言っている)、月曜日から腰が痛み始め、どんどんひどくなっていくので、仕事を抜けては整体や整骨院に通って治療を受けている。
安静に休めたら早く直るのだろうけれど、休むに休めない職場というのが、なんとも・・・。

   ☆★☆★☆☆★☆

この腰痛のせいで、いつもは帰りの遅い旦那が二日続けてとても早く帰宅した。
昇平はまず、大喜び。ハイテンションになって踊り回る。昨日など、夕食前に帰宅したものだから、もう嬉しくて嬉しくて・・・。
ところが、旦那は腰が痛いから、部屋に布団を敷いて寝ているばかり。昇平が「一緒に遊ぼう」「お父さん、○○のゲームやって」と言っても、相手ができない。
そうしたら、昇平の怒ること怒ること。
二階で怒鳴っている声が聞こえたな、と思うと、勢いよく階段を下りてきて「お父さんをお墓に埋める!」「お父さん、死んじゃった! お墓に埋めてあげる!!」と言いだした。

あ〜、また始まった。この夏はこういうかんしゃくがすごく多い。特に夕方に頻発するところを見ると、リタリンの切れ際のリバウンドも関係しているのかもしれない。
こういうのに真っ正面から取り合うと、火に油を注ぐことになるので、ここは一歩引く形でまず受け止める。
昇平を膝にのせて質問してみた。
「お父さん、死んじゃうくらい具合が悪いんだっけ? 死ぬのは、どのくらい具合悪いときなんだっけ?」
「このくらい」ぐーんと手を上に上げてみせる昇平。実はこれは「お父さんが死んじゃう!」と前の日に言い出したときに教えたこと。
「じゃ、お父さんの具合の悪いのは、どのくらい?」
「このくらい」両手で5センチくらいの幅を作って見せる昇平。
「それじゃ、お父さんは死んじゃうかな?」
「死なない」

でも、昇平は気持ちが収まらない。
「お父さんは死んじゃったふりしてるよ! お墓に埋めてあげよう! 地面に埋めちゃおう!」
あ〜の〜ねぇ〜・・・・・・(苦笑)

   ☆★☆★☆☆★☆

昇平は「死ぬ」とか「殺す」とかいうことばが良くないというのは、ちゃんと承知している。
承知しているからこそ、自分の収まらない気持ちをアピールするのに、わざとそういうことばを使っているのだ。
一番刺激的で効果的(と思われる)ことばを瞬時に選んで、躊躇することなく口にするから、大人はそれを聞くとドキッとする。
でも、本当に昇平が言いたいことは・・・

「お父さんと遊びたかったんだね。でも、お父さんは腰が痛くて遊べないんだよね。昇平くんは、どんな気持ち?」
と聞いてみた。
「寂しい。悲しい」
と昇平。
「昇平くんはどうしたいの?」
「お父さんをお片づけしたい」
「(苦笑しつつ)人間は片づけられないよ。どうしたらいい?」
「お父さんをお片づけしたい。見えないようにしたい。見えると寂しくなるから」

なーるほどねぇ。
父がいなければいないで、あきらめもつくのだけれど、なまじ目の前に父がいるので、どうしても「一緒に遊びたい」という気持ちが抑えられないんだろう。

「それじゃ、こうしよう。お父さんはお部屋に寝ていてもらって、ドアを閉めて見えないようにしておこう。そうすると、お父さんも静かに寝られて、腰が早く良くなるからね。そして、代わりにお母さんと一緒に遊ぼう。お母さん、昇平くんと一緒にパックマンやってみたかったんだ。一緒に勝負しよう」
と持ちかけると、昇平、ちょっと考え込んでから
「そうだ! いいこと考えた!」
と声を上げた。
夕闇の庭に出て行って、緑色のモミジの葉を1枚取ると
「これに手紙を書くよ。お父さんにお見舞いだよ」
そして、台所に戻ると、赤いボールペンで葉っぱに手紙を書き始めた。
『おとうさん はやく こし なおってね』
葉っぱの手紙は、国語の教科書に載っていた「手紙を下さい」という教材の影響。
それを父に渡すよう母に託して、自分は母の後ろに隠れていた。

布団で寝ていた旦那に葉っぱの手紙を渡すと、旦那は目を細めていた。
「ありがとう」とひとこと。

その後、昇平は母とパソコンでパックマンで勝負し、その後も落ち着いて母とお風呂に入った。

   ☆★☆★☆☆★☆

昇平が自分の気持ちと折り合いをつけられるようになるまでには、もうしばらくかかるだろう。
それまでは、ものすごく悔しい思いをして、怒ったり泣いたりときにはケンカをしたり・・・するんだろうな。
それが本当の「成長」ってものなんだろう・・・きっと。

ちなみに、この日記を書き始めたのは昨日の朝。
昇平のお見舞いの手紙が効いたのか、旦那の腰は急速に良くなり、昨日の夜には昇平と一緒に念願のゲームをするまでに回復したのだった。

めでたしめでたし。

[03/07/26(土) 13:47]

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