昇平てくてく日記
幼児〜小学校低学年編
初めての床屋さん
行ってまいりました。昇平の初床屋!
無事、スッキリした頭になってきました!
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昇平の髪は、生まれてからずっと、母が家庭で切っていたのだが、小学生になると、さすがに母の手に余るようになってきた。
そこで、外に良い床屋さんを探していた。
近所に父の行きつけがあるのだが、そこは、大人はともかく子どもの扱いは今ひとつ・・・。(気の短い人に昇平の髪が切れるとは思えない。)
どこか評判の良い床屋はないかと探し続け、情報を集めた。
子どもの散髪客の多い店。子どもに評判の良い店・・・
町中に中学生も良く利用する店があると聞いて、まず、お兄ちゃんを送り込んだ。
視察、その一。(笑)
初めて行ったその店で、お兄ちゃんはコーヒーを出してもらい、大人扱いされて上機嫌で戻ってきた。髪の切り方も丁寧だったらしい。
それから約2ヵ月後。
お兄ちゃんの髪がまた伸びてきたので、ちょうど散髪の時期になっていた旦那と一緒に送り込んだ。
視察団、その二。(笑)
二人ともスッキリした頭になって戻ってきたが、旦那の見てきた店の印象も悪くなかったらしい。
それでは、と、いよいよ今日、昇平を連れて実際に行ってみることにした。
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昇平は、初めての床屋にものすごく不安でいた。
なにをするのかイメージが湧かないでいるので、まず、インターネットで検索して、店内をカメラで撮影している理髪店のホームページを探し出し、それを見せた。10分ごとに撮影されていたので、うまい具合に、一人の人が椅子に座ってから髪を刈り終わるまでの様子を見ることができた。これで、完全ではないものの、大まかなイメージは把握できた。
次に、メモ用紙に鉛筆の走り書きで、椅子に座って髪を切ってもらっている昇平の絵を描いた。
後ろから見た図、前から見た図、シャンプーする図(服を着たままシャンプーをして濡れないのか、と心配していたので)。
手順は文字で書いた。
1.かみを切る 2.ひげそり 3.シャンプー 4.ドライヤーでかわかす
図を見てほっとした顔をしていた昇平が、「ひげそり?」と不思議そうな顔をした。
「カミソリでひげを剃るんだよ」とカミソリの絵を描き、「動かなければ大丈夫」と書いた。
でも、これが失敗だったかもしれない。
「動いたらどうなるの?」と昇平が聞いてきた。
「動くと切れて血が出るよ」
「えーーっ、やだやだ! ぼく、怖いよー!!」
・・・結局、店に入ってからも昇平はカミソリ怖い、と言い続けていた。
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店内には席が3つあり、どの席も客が散髪中だった。一人は常連らしいおばあちゃん。順番待ちしている人も一人いた。
太った明るいおばちゃんと、その息子さんと奥さんらしき人の3人が、一人ずつ客に付いている。
あとから、おばちゃんの旦那様らしい年配の男性も出てきて髪を切り始めたので、どうやら家族4人でやっている店のようだった。
昇平が店に入るなり「ひげそらないよ!」「そらないでください!」「こわいよ!」と騒ぎ出したので、お店の人達が目を丸くした。
「ぼく、どうしたのかなー?」
おばちゃんが笑いながら声をかけてくれる。
「すみません。この子、床屋が生まれて初めてなものですからー」
と答えると、おやまぁ、というように、みんなが笑った。
結局、席が空くまでに1時間近く待たされたのだが、その間、昇平は他の客の様子を観察したりできたので、それなりに良かったかもしれない。・・・とはいえ、最後には飽きてしまっていたけれど。
その間に、店の人も昇平の観察をしていたのだと思う。
言動が見た目より幼いこと、なかなかじっとしていないこと・・・間違いなく見抜いていた。
その後の店の人達の扱いの上手だったこと!
怖いよー、と昇平が言うたびに、「怖くないよー」と安心させてくれ、可能な限り、これから使う道具を見せてくれたり、やることを説明してくれたりしていた。
しかも、髪の切り方が早い!
担当は息子さんだったのだが、先の客の切り方と比べると、格段にスピードを上げている。
それでも昇平が騒ぎ出しそうだと見るや、おばちゃんが駄菓子の入った袋を昇平の席の前に置いて見せた。
「お利口にがんばるとご褒美にこのお菓子がもらえるんだけどね、泣くと、一つずつこのお菓子が減っちゃうんだよ。隣のおばちゃんたちに上げちゃうからねー」
にこにこと明るい口調でそう言って
「泣いていいからねー。お菓子、全部もらっちゃうから、遠慮なく泣いてねー」
・・・う、うまい。
昇平は、こういうふうに言われると、絶対に泣かなくなるのだ。
「泣かない!」「全部もらう!!」
と言って、持って行った本(ゲームの攻略本)を読み始めた。
この店は、小さな子どもの散髪にも本当に慣れていたのだと思う。
昇平から名前を聞き出して、名前で呼びかけてくれ、これからすることを具体的に分かるように説明してくれ、剃ったひげの泡を目の前に見せてくれたり、上手にリードしてくれていた。
昇平は最後までひげそりに怖い怖いと言い続けていたが、その合間にはいろいろ質問したり話したり。その一言一句は店にいた全員に大受けで、母は笑っていいのやら、冷や汗をかいていいのやら・・・。(苦笑)
時間はもう正午近く。リタリンの効果も切れかけて、多動が出始めていたが、それでも昇平はがんばって椅子に座り続け、洗髪、ドライヤー、仕上げに耐えていた。一カ所に座り続けるのが難しい子が、小一時間も本当によくがんばったと思う。
最後にシッカロールを首筋にはたいてもらったときに「これなに?」と聞いていたが、「切った髪の毛のかすでちくちくしないためのお薬だよ」と教えられて、「ふーん」と言っていた。
最後の最後まで、説明の上手な床屋さんだった。
会計をすませて店を出るとき、母は店の人全員に心から「お世話になりました。ありがとうございます」と言ってしまった。
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初めての床屋さんをやり遂げた昇平は、にこにこと得意そうな顔をしていた。
「よくがんばったね。かっこよくなったよ」と声をかけると、またにっこり笑った。
「髪が伸びたら、またここに来ようね」と言うとと、「うん」と言った。
ああ、よかった。
床屋さんの初体験、大成功!
[03/07/30(水) 17:22]