昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

SSTの実践

SSTで「お話の極意」を教わってきた昇平だが、さっそく、あちこちの場面でそれを実践している。
おはようの挨拶をするとき、いってきますやただいまの挨拶をするとき、おやすみなさいの挨拶をするとき・・・。
声をかけられないと忘れていることも多いけれど、でも、以前より挨拶のしかたがとても上手になってきたのは間違いがない。耳が遠いおじーちゃんも、昇平が自分に聞こえる声で挨拶してくれることが増えたものだから、とても喜んでいる。

火曜日、昇平は学校に行って、さっそく森村先生にも「おはようございます!」とおじぎつきで挨拶をしていた。
さすがは森村先生、まだSSTのこともお教えしていなかったのに、「あれー、昇平くん、今日はなんだかご挨拶が上手だね。ちゃんとおめめを見て言ってくれたね」と誉めてくださった。
連絡帳で、SSTを活用している場面があったら誉めてやってください、とお願いしていたのだけれど、そんな必要はなかったかもしれないなぁ。

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ところで、昨日の夜の話。
昇平がいつまでもネットゲームをしていて、なかなか宿題に取りかからなかったので、「もうゲームはおしまいだよ」と言い渡したら、昇平が怒り出した。母の足を蹴って「お母さんのバカ! あっち行け!」と言う。
それで母も怒った声になって「ゲームはもう終わりです!」と言った。仕事帰りで疲れていたこともあるけれど、私としては、不愉快な思いをさせられたときには、できるだけ声に出してそれを伝えるようにしているのだ。そうしないと、自分の言っていることが相手を怒らせていることに気がつかないから。
・・・ちなみに、これはお兄ちゃんも同じだった。兄弟揃って、このあたりはけっこう似ている。

すると、昇平、たちまち母が怒っていると気がついて、「お母さん怒らないで。怒るな、この野郎!」 <おい。(苦笑)
そこで、昇平が怒って母の足を蹴ったから母が怒ったこと、怒りの気持ちは他人を巻き込むことを教えた。
「怒る気持ちは人にうつって、その人まで怒りたくするんだよ」
・・・ほんとうに、このセリフ、小学生だった頃のお兄ちゃんに何度言い聞かせたことだろう。お兄ちゃんも感情のアップダウンが激しい子だったからなぁ。

それを聞いた昇平が言った。「マスク!」
怒りの気持ちがうつらないようにマスクをしてくれ、という意味だ。
「マスクでは防げないよ。風邪とは違うんだから。心から心にうつっていくんだよ」と言いながら、ちょっと昇平がかわいそうになってきて、こう付け足した。
「でもね、にこにこ優しい顔をしてもらうと、それもうつって、他の人をにこにこの優しい気持ちにするんだよ」
とたんに、昇平、「目を合わせるの術!」と言いながら、ばちっと母と目を合わせ、にっこり笑って見せてから「ごめんなさい」と頭を下げてきた。
そのタイミングがあまりに絶妙だったので、私はもうそれ以上怒ることができなくなって、思わず笑って「はい」と言ってしまった。
目を合わせるの術には思っていた以上に威力がある。昇平の場合は今まで目を合わせることが少ない子どもだっただけに、なおさらかもしれないけれど。

昇平は、母が許してくれたので、ほっとした笑顔になり、「すぐにやればいい」とつぶやいた。
誰かを怒らせてしまったときには、お話の極意を使ってすぐに謝れば許してもらえるんだ、と自分で気がついたのだ。
そして続けて、「森村先生にもね」とつぶやく。

はっとした。
先学期の末あたりから、昇平は時々「もしも、森村先生に怒られて、ずっと許してもらえなかったらどうしよう」と心配していたのだ。学校では森村先生が昇平にとってかけがえのない羅針盤だから、森村先生を怒らせて見放されることは、なによりも不安だったのだろう。(実際に昇平が先生を怒らせるようなことはめったになかったのだけれど)
でも、お話の極意がそういう場面に有効だと実感して、自分なりに不安に対する解決策を見つけたようだった。

まだ、たった1回のSST。でも、昇平にはちょうど良い時期に合っていたのだろう。こちらが期待していた以上に、そこから得ているものは多いような気がする。
次回のSSTがますます楽しみだ。

[03/11/27(木) 00:24] 療育

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