昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

三学期開始 〜成長の要〜

三学期が始まった。
初日から吹雪に見舞われて、子どもたちは登校が大変そうだったけれど。
うちでも、自転車通学のお兄ちゃんが、自転車をあきらめて、昇平の登校の車に乗っていった。

さて、お兄ちゃんが一緒に乗っていくと、いつもより早く家を出るから、学校に着くのも早くなる。
昇平は教室に一番乗りだった。
でも、先生方もいつもより早出だったようで、どの教室にも灯りがこうこうとつき、ストーブが焚かれて、子どもたちを迎える準備が万端整えられていた。
新学期にドキドキしている子たちは、どんなにかほっとするだろうなぁ、と、ふと子どもたちの気持ちになった。
昇平も、森村先生の笑顔にあって、ニコニコしながら元気にごあいさつ。「おはようございます!」そして、先生から新年の挨拶をされて「あけましておめでとうございます!」。
教室の前では、すれ違った教頭先生にも「あけましておめでとう!」と挨拶していた。
とても張り切っている。

その後、昇平はいつものように教室の前に行くと、黒板に書かれたその日のスケジュールを確かめていた。
時間割は・・・協力学級への移動は・・・掃除は・・・帰りの時間は・・・
「今日は何曜日?」
昇平が振り向いてたずねてきた。
「木曜日だよ」
黒板の上の方には、補助員の稲月先生の出勤してくる曜日も書かれている。今週は「木」「金」と来て下さるらしい。
稲月先生がいらっしゃると分かって、昇平は嬉しそうににっこり。昇平は稲月先生が大好きなのだ。

初日だけあって、掃除の時間帯ややりかたがいつもと違ったり、とスケジュールは少し不規則だったけれど、その部分をきちんと理解すると、昇平は本当に安心した顔になって、突然ぐっと両手を握りしめた。
「よーし、がんばるぞ!」
今学期も学校でがんばるぞ、と言っているように、母には聞こえた。

   ☆★☆★☆☆★☆

そういえば、昇平は見通しが立つことで、初めて安心してがんばることができる子どもだなぁ、と思った。
と言うと、誰でもそれは同じなのかもしれないけれど、昇平の場合は「見通しが立つこと」の大事さが特に大きいような気がするのだ。
これまでの子育てが、その連続だった。
これから何をするのかを知らせること。今、何が起こっているのか、これから何が起こるのかを具体的に知らせておくこと。昇平と関わっている人がどんな気持ちでいるかを教えること。
それを、本人に分かるように、絵を描いたり、ことばを選んだり、以前の経験と引き合わせて説明したり、昇平自身の気持ちと照らし合わせて考えさせたりして、伝えること・・・。
とにかく、「情報」を本人に分かる形で提供することがなによりも大事だった。

もちろん、情報を提供したからと言って、なんでもできるようになるわけではない。
できないことはやっぱりできないし、やり方を丁寧に教えなくちゃいけないこともある。
でも・・・なんと言ったらよいのだろう・・・自分で「これならできる」と思ったことに対しては、昇平は本当に実力を充分に発揮してくれるのだ。
たとえば、保育園の年長さんになったとき、爆発的にできることが増えたのはそのせいだった。
運動会、鼓笛パレード、発表会・・・行事のたびに母は驚きの連続だった。
それは、昇平が一年目に体験した保育園の生活や行事を覚えていて、それを基礎に安心して行動できるようになったから。
小学1年生より2年生になった今年のほうが成長著しいのも、同じ理由だろう。

ひっくり返して見れば、つまりそれは、昇平がいかに普段の生活の中から情報を取り出すのがうまくないか、という証拠でもある。
ただ普通に聞いていては意味が分からないことが多い。普通に見ていては、何が起こっているのか、これから何をするのか、が分からないことが多い。まして、未体験のことだと、全然予想がつかなくて、不安で不安でしかたなくなる。
そうすると、昇平は自分の実力を発揮できなくなってしまう・・・。

これからも、昇平の子育てはこの路線で行くんだろうな、と思った。
分かりやすい情報の提供と、さまざまな体験活動。これが、昇平の成長の要なんだろう。
そうするうちに、やがて、自分自身でも「見通しの立たない状況に対応するための力」を身につけていくんだろう。きっと・・・いや、絶対に。

   ☆★☆★☆☆★☆

そんなことを母が思いめぐらしているとも知らず、昇平は教室で元気いっぱい張り切っていた。
慣れた様子で連絡袋を先生の机の上に出し、ランドセルの中身を机に入れ、ランドセルや運動着袋をロッカーにしまう。
ちょっと外に出ていた森村先生が戻ってくると、なにやら自分から話しかけていった。
教室に他のお友だちも登校してくる。
昇平はニコニコと笑顔。嬉しくて楽しくて、母などもう眼中にないくらい。
そんな様子が、母にはほんの少し寂しくて、とてもたくさん嬉しかった。

「今年もどうぞよろしくお願いします」
森村先生にそう挨拶をすると、教室を後にした母だった。

[04/01/10(土) 08:07] 学校

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