昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

生活科が増える

昇平は三学期になって協力学級での教科学習が増えた。
今までは音楽と体育だけだったのだが、そこに生活科が加わったのだ。

教科を増やすに当たっては、生活科と算数のどちらにするかを担任と話し合ってきた。
3年生になってから教科を増やすための準備でもあるので、どの教科にするかを、親も担任もずいぶん考えた。
生活科は3年生で理科と社会に分かれるから、理科、社会、算数の中のどの教科にするか、の選択でもあったのだ。

一度は本人の得意な算数にしようか、という話も出た。だが、3年生になるとひねりの入った文章問題が増えてくること(昇平がもっとも苦手とするもののひとつ)、個別指導のほうが格段に理解がよくなることなどを考え合わせると、特殊学級での指導のほうが適当だろうという結論になった。となると、理科か社会科かの選択になるのだが、これはあっさり理科に決まってしまった。昇平は動物や植物が好きだし、進化や原子なんてものに最近関心を持っていたくらいだから、これはぴったりだろう。

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さて、そんなわけで、生活科が始まった。
2年生の三学期のテーマは「自分の成長アルバム作り」。
これはタイムリーな良い教材だな、と即座に感じた。
というのも、昇平は最近、自分が成長したんだ、ということをとても意識していたからだ。
去年、お兄ちゃんが親の身長を追い越して、それをしょっちゅうアピールしているのを見ていたこともあるだろう。(「ぼくだって大きくなっているぞ」という心理。)七五三の写真で着ていたで服が小さくて入らなかった、という体験も、つい最近あった。(「やっぱりぼくは大きくなっているんだ!」という発見。)家庭や学校でできることが増えてきて、そこからも自分の成長を感じているようだった。
案の定、一番最初の生活科の授業に出た日、昇平は「アルバムみたいな自分の文集を作るんだよ」と嬉しそうに報告してくれた。
興味を持って楽しく取り組める内容ならば心配はない。きっと、良い学習ができるだろう。

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この週末、生活科の宿題が出た。
自分が赤ちゃんだった頃のことや自分の名前の由来を家族にインタビューして、自分の赤ちゃんの頃の写真を探してくる、というもの。

赤ちゃんだった頃の昇平!
それはそれは手のかかる赤ちゃんでねぇ、生まれた翌日には新生児肺炎で小児科病棟に入院してしまって、しょっちゅう風邪をこじらせては気管支炎を起こしたし、夜泣きはひどかったし、ミルクはすぐに吐いてしまって飲まなくなってしまったし。近所から借りた歩行器で動けるようになると、家中猛烈なスピードで移動していたわねぇ。お母さんはそんな君のことを、こっそり「暴走小僧」って呼んでいたよ。手先が器用になると、引き出しの中身をかたっぱしから出すようになって、家中足の踏み場もなくなったっけねぇ・・・
とは、まさか話せないので(笑)、生まれた次の日に肺炎になったことと、歩行器で家中走り回る元気な赤ちゃんだったことだけを教えた。

名前の由来を昇平に教えたのも、今回が初めてのことだった。
「しょうへい」という音はお兄ちゃんが決めたもの。お兄ちゃんが幼稚園のお友だちの名前からもらってつけたんだよ。
そこに「昇平」という漢字を当てたのはお父さん。辞書を調べて、一番いい意味の文字を選んだんだって。「昇平」というのは、世の中が穏やかで平和な様子のこと。つまり、優しくて誰とでも仲良くいられる、っていう意味だね。

赤ちゃんの頃の写真を探してアルバムを開くと、また大騒ぎ。
普段、昇平はほとんど写真に興味を示さないのだが、さすがに今回はしっかり眺めていて「ぼく、どこ?」「どこにいるの?」と聞いてくる。
「ほら、ここにいるよ。この赤ちゃんだよ」と教えると、「ちいせぇーーー!!」と叫ぶ。
一緒に写っているお兄ちゃんを見つけると「・・・ぼくとそっくり!」。
ははは。自分でも気がついたんだね。その通り。君たちは年が違っているから違って見えるだけで、同じ年頃のときには本当によく似ていたんだよ。
ちなみに、お兄ちゃんも脇からアルバムをのぞいていて「俺の写真を昇平のだって言って持って行っても、ばれないんじゃねーの?」などと言っていた。
うん、母もそう思うわ。(笑)

出産した病院からもらったアルバムには、昇平の足形も残っていた。
それを発見して、昇平はまたまた大興奮。「比べてみる!」とさっそく靴下を脱いで足を並べていた。
そこで、今の足の大きさに合わせて紙に足の形を写してやったら、それと赤ちゃんの頃の足形を並べて「大きいー! 大人だ!!(まるで大人のように大きい、の意味)」。
目で見て成長を比べられるものがあるのはいいなぁ、とつくづく思った。
自分も初めは小さな小さな赤ちゃんだったこと、それが成長して、今のこの自分があることを、肌で感じているのだろうから。

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昇平が生まれてから8年4ヵ月。
その間に、それはそれはいろんなことがあった。
苦しいことも悲しいことも辛いことも嬉しいことも・・・どっさり、山ほど、いろいろあった。
それを踏み越えて、今、私たちはここにいる。
そして、あんなに手がかかる赤ちゃんだった君が、今はこんなふうに自分の生い立ちを振り返り、自分の成長に感動できるようになっている。
ものすごいことだな、と心から思う。
人生ってさ、本当に、まんざら捨てたものじゃないんだよ。きっと。

生活科の「自分のアルバム作り」。
私たち家族全員にとっても、良い振り返りの機会になっているようだ。

[04/01/17(土) 14:45]

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